第27回 [C-2]|中小企業診断士が語る「迎える経営」ー 支援とは“正解”ではなく関係を設計する仕事【迎える経営論|思想編(支援側視点)】 | ソング中小企業診断士事務所

第27回 [C-2]|中小企業診断士が語る「迎える経営」ー 支援とは“正解”ではなく関係を設計する仕事【迎える経営論|思想編(支援側視点)】

第27回 [C-2]|中小企業診断士が語る「迎える経営」【迎える経営論|思想編(支援側視点)】

評価制度を整え、面談を増やし、研修を導入する。
それでも人が定着しない――。

支援の現場では、こうした状況に数多く出会います。
制度は整っている。数字も管理されている。
それでも、関係だけが変わらない

そのとき私が最初に感じるのは、
「制度が足りない」のではなく、
「関係の前提が設計されていない」という違和感です。

制度より先に必要なものがある

中小企業診断士という立場は、
制度や仕組みを整える支援を担うものと見られがちです。

しかし現場に入るほど、
制度より先に必要なものがあることに気づきます。

それは、企業と支援者のあいだに、

  • どのような姿勢で関わるのか
  • どこまで相手を受け取るのか

という“関係の設計”です。

本記事で扱う問い

本記事では、コンサルティングを
「正解を渡す仕事」と捉えるのではなく、

企業を迎え入れる支援とは何か
そして支援者自身がどのような覚悟を持つべきかを、
現場の実感から問い直します。

迎える経営論マトリクス

テーマ 主題 視点
企業側 働く側 支援側
思想編 「迎える経営」とは何か 採用・関係性の哲学的出発点 A B C
信頼編 信じて差し出す経営 信頼の先行が組織文化を変える D E F
対話編 わかり合う職場をつくる 面談・1on1・心理的安全性 G H I
定着編 続く人、育つ文化 定着率向上とキャリアデザイン J K L
理念編 共感でつながる採用 理念採用・共感ベースの発信 M N O
実装編 「みえるシート」による循環設計 仕組み化・可視化・データ共有 P Q R
成長編 挑戦を迎え、共に学ぶ組織 若手育成・失敗の受容・共進化 S T U
未来編 人を中心にした経営のゆくえ 人的資本経営の次フェーズを描く V W X

左右にスクロールできます。

本コンテンツ「迎える経営論」は、8つの編と3つの視点、あわせて24のグループに記事を分けて展開していきます。

記事No:C-2
① 思想編|「迎える経営」とは何か
主題:採用・関係性の哲学的出発点
支援側視点

この記事を読むことで得られること

  • 評価制度や面談・研修を整えても定着しないとき、問題が「制度」ではなく「関係の前提」にある理由が整理できます
  • 支援とは正解を渡すことではなく、「正解が機能する関係」を共に設計する営みだという視点が得られます
  • 迎える経営を“企業の話”で終わらせず、支援プロセスそのものを信頼が生まれる構造に変えるための考え方がつかめます

まず結論:人が定着しない本当の原因は制度不足ではなく、制度が乗るはずの「関係の土台」が設計されていないことにあります。

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
記事・ツール・コラム・思想─すべては一つの設計思想から生まれています。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

経営相談の窓口から
失敗事例の切り口から
会計数値の糸口から

現場の声を起点に、課題の本質を捉える入口。
今日から動ける“実務の手がかり”を届けます。

時事・構造

診断ノート
経営プログレッション
 

経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

思想・感性

日常発見の窓口から
迎える経営論
響く経営論

見えない価値や関係性の温度に光を当てます。
感性と論理が交差する“気づきの場”です。

実装・仕組み

わかるシート
つなぐシート
みえるシート

現場で“動く形”に落とし込むための仕組み群。
理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

支援の現場で見えてきた「制度では解決しない問題」

支援の現場に入ると、最初に相談されるテーマの多くは制度に関するものです。

  • 評価制度を整えたい
  • 面談の回数を増やしたい
  • 研修体系をつくりたい

どれも組織運営において重要な取り組みであり、制度が必要な場面も確かにあります。
だからこそ私は、制度そのものを否定するつもりはありません。

しかし制度を導入したにもかかわらず、

  • 「思ったように定着率が上がらない」
  • 「面談を増やしたのに本音が出てこない」
  • 「評価制度を整えたのに不満が減らない」

といった声を聞くことも少なくありません。

形式としては整っている。資料も揃っている。運用ルールも決めている。
それでも関係性が変わらない

制度の問題ではなく「関係の前提」が抜け落ちている

こうした現場に何度も立ち会う中で、私はある違和感を持つようになりました。

問題は制度の有無ではないのではないか。
制度の設計の巧拙だけでもないのではないか。

もっと手前のところ――
人と人との関係の前提に、何かが置き去りになっているのではないか。

制度を整えても「関係」が変わらない例

たとえば、面談の回数を増やした会社があります。

  • 月1回 → 月2回に増やす
  • フォーマットを整える
  • 記録を残す運用にする

それでも面談は「報告の場」にとどまり、本音は出てこない。

評価制度を見直した会社もあります。

  • 評価項目を細かくする
  • 点数化する
  • 説明資料を作成する

それでも「評価が納得できない」という声が消えない。

研修を充実させた会社では、参加率は上がったものの、現場の行動は変わらない。

制度が機能しないのは「土台」が整っていないから

ここで見えてくるのは、制度が悪いのではなく、

制度が置かれている関係性の土台が整っていないという現実です。

  • 信頼がない状態で面談を増やしても、回数が増えるだけ
  • 関係が希薄なまま評価項目を細かくしても、納得感は生まれない
  • 迎える姿勢が伝わらないまま研修を行っても、行動には結びつかない

制度は、関係性の上に乗るものです。
関係性をつくる前提がなければ、制度は「管理の仕組み」としてしか機能しません。

支援者として最初にぶつかる違和感

支援者として現場に入るとき、最初にぶつかるのはこの違和感です。

企業は真剣に取り組んでいる。制度も整えようとしている。
それでも変わらない。

このとき必要なのは、制度をさらに追加することではなく、

その制度をどんな関係性の中で運用したいのかを言葉にすること。

迎える経営という視点は、まさにここから生まれました。

  • 制度の前に関係を設計する
  • 仕組みの前に姿勢を整える

この順序が逆転している限り、どれだけ制度を整えても、
関係の質は変わりにくいのです。

問いかけ

制度を入れれば、関係は良くなるのでしょうか。

もし答えに迷いがあるなら、
それは制度の問題ではなく、

関係の前提を見直すタイミングなのかもしれません。

支援とは「正解を渡すこと」ではない

コンサルタントという言葉には、
「答えを出してくれる人」というイメージがつきまといます。

課題を整理し、分析し、解決策を提示する。
それ自体は支援の重要な要素であり、求められる役割でもあります。

しかし現場で長く支援に関わっていると、
「正解を提示すること」が必ずしも組織を変えるわけではないという現実に何度も直面します。

企業ごとに「前提」がまったく違う

同じ業種でも、同じ規模でも、同じような課題に見えても、
企業ごとに前提は大きく異なります。

  • 経営者の価値観
  • これまでの歴史
  • 現場の関係性
  • 地域性
  • 顧客との距離感

これらが違えば、機能する施策も変わります。
つまり、汎用的な正解は存在しないのです。

“正解を渡す支援”が長続きしない理由

にもかかわらず、

  • 「この制度を入れれば定着率が上がります」
  • 「この評価項目にすれば納得感が出ます」

といった“正解”を渡すだけの支援は、
一時的な改善を生んだとしても長続きしません。

なぜなら、そこには
企業自身が考えたプロセスが存在しないからです。

外から与えられた答えは、導入直後は機能しても、
運用の場面で「自分ごと」になりにくい。
結果として制度だけが残り、関係は変わらないままになります。

変化が生まれるのは「一緒に考えたとき」

支援の現場で本当に変化が生まれるのは、
経営者や現場のメンバーと「一緒に考える」時間を持ったときです。

  • なぜこの制度が必要なのか
  • どんな関係性をつくりたいのか
  • どんな組織でありたいのか

この問いを共有しながら設計した仕組みは、
運用の段階でも意味を持ち続けます。

それは“自分たちで選んだ構造”だからです。

ここに信頼が生まれます。
支援者が答えを持っているから信頼されるのではなく、
一緒に考える関係をつくったから信頼が生まれるのです。

オーダーメイドの支援とは何か

このプロセスは、まさにオーダーメイドの支援です。

  • 企業ごとに前提を整理し、
  • 現場の言葉を拾い、
  • 関係性のあり方から設計していく。

既製品の制度を当てはめるのではなく、
その企業のための仕組みを一緒につくる

それは時間も手間もかかりますが、
その過程そのものが「迎える関係」を形づくっていきます。

支援とは何か

支援とは、指導することではなく、
共に設計すること。

正解を渡すことではなく、
正解が機能する関係をつくること。

この視点に立ったとき、コンサルティングは
「解決策の提示」から「関係性の設計」へと変わっていきます。

問いかけ

支援は“指導”でしょうか。
それとも“共創”でしょうか。

この問いに対する答えが、
支援のあり方だけでなく、組織の変わり方そのものを左右していくのだと思います。

支援者自身が“迎える姿勢”を持てているか

支援の現場に立っていると、ふとした瞬間に気づかされることがあります。
自分が無意識のうちに「評価する側」に立ってしまっているという事実です。

財務が整っていない。制度が未整備。採用の設計が弱い。
そうした状況を見たとき、

  • 「ここができていない」
  • 「まずはこれを整えるべきだ」

と指摘すること自体は、支援の一部として必要です。

しかしその姿勢が、
“できていない会社を正す”という前提に立ってしまうと、
関係はどこかで止まります。

企業には必ず「背景」がある

企業には必ず理由があります。

  • なぜ今の状態になっているのか
  • どんな制約の中で意思決定してきたのか
  • どんな歴史を経て現在に至っているのか

そこを受け取らずに「あるべき姿」だけを提示しても、
それは現場にとって“外から持ち込まれた理想”にしか見えません。

迎える支援とは、まず「現実を受け取る」こと

迎える支援とは、まず企業の現実を受け取ることです。

うまくいっていない理由を責めるのではなく、
そこに至るまでの選択を理解しようとする。

制約の中で最善を尽くしてきた経営の痕跡を尊重する。

その姿勢があって初めて、提案は
“押し付け”ではなく“共に設計するための材料”になります。

信頼は「先に差し出す」もの

迎える支援を成立させるうえで重要なのが、
信頼は先に差し出すものという考え方です。

これは支援の進め方そのものにも表れます。

  • 後払いでの対応
  • 修正回数の制限を設けない設計
  • 納得するまで伴走する姿勢

これらは単なるサービス仕様ではなく、
「まずこちらが信じる」という支援者側の覚悟の表現です。

支援者自身が迎える側に立てているか

企業に対して「変わる意思がありますか」と問う前に、
支援者自身が、

「この企業と共に変わっていく意思があります」

と示せているか。

迎える経営を語るのであれば、
支援者自身が迎える側に立てているかが問われます。

支援の関係は対等です。
企業が支援者を選ぶのと同時に、支援者も企業と向き合う覚悟を持つ。

その前提があるとき、課題の指摘は批判ではなく、
未来を一緒に設計するための対話になります。

問いかけ

私は、目の前の企業を迎えているだろうか。

この問いを持ち続けることが、
迎える支援の出発点になるのだと思います。

「迎える経営」は支援の設計思想でもある

迎える経営という言葉を使うと、どうしても
「企業側が人をどう迎えるか」
という文脈で語られがちです。

しかし実際には、これは企業だけの話ではありません。
支援そのものの構造が“迎える設計”になっているかどうかが、企業文化の変化を大きく左右します。

支援プロセスが「評価・指導・チェック」だけだと何が起きるか

支援プロセスが、

  • 評価する
  • 指導する
  • チェックする

という流れだけで構成されていると、企業は常に

  • 「見られている側」
  • 「正される側」

に置かれます。

この状態では、信頼は生まれにくく、本音も出てきません。

支援の入口から「迎えられている」と感じる構造へ

一方で、支援の入口から、

  • 現状を一緒に整理する
  • 背景を聞く
  • 選択肢を共に設計する

という構造を取ると、企業は
“迎えられている”と感じます。

この体験が、そのまま企業が自社の社員を迎える姿勢に転写されていきます。

つまり、支援のあり方そのものが企業文化のプロトタイプになるのです。

関係を可視化する仕組みが文化をつくる

ここで重要になるのが、関係を可視化する仕組みです。

対話だけでも信頼は生まれますが、
それを現場で再現可能な形にしなければ文化にはなりません。

そこで機能するのが、

  • みえるシート
  • つなぐシート

といった、関係性を可視化するツールです。

これらは単なる管理表ではありません。

  • 誰が何を感じているのか
  • どこで認識のズレが生まれているのか
  • 何が共有され、何が共有されていないのか

といった“関係の状態”を見える形にする装置です。

可視化されることで、対話は個人の努力ではなく、
仕組みとして継続されるものになります。

支援を通じて企業が学ぶこと

支援の場でこの仕組みを導入すると、企業は次第に、

「関係は設計できるものだ」

という感覚を持ち始めます。

そしてその感覚が、採用や定着の設計にそのまま応用されていきます。

支援を通じて起きる変化は、制度の導入そのものではありません。
関係の前提が変わることです。

  • 評価される関係 → 共に考える関係へ
  • 指示される構造 → 対話が循環する構造へ

この変化が、企業文化の変化として定着していきます。

問いかけ

支援の仕組みは、信頼を生んでいるでしょうか。

もし支援のプロセス自体が迎える構造になっていれば、
企業は自然と迎える経営へと向かっていきます。

迎える経営を語る責任

迎える経営という言葉を使う以上、
それは単なる概念ではなく、実践として示していく責任があると考えています。

中小企業診断士という立場は、制度や数値を扱う専門職であると同時に、
企業の関係性の設計に関わる仕事でもあります。

制度は「迎える姿勢」の表現である

どのような評価制度を入れるか。
どのような面談を設計するか。
どのような情報を共有するか。

これらはすべて、
企業が人をどう迎えるかという姿勢の表れになります。

だからこそ、迎える経営は理論として語るものではなく、
支援の現場で実装されるべきものです。

支援者自身が迎える姿勢を持てているか

支援者自身が企業を評価する立場に立つのではなく、
企業の背景や制約を受け取り、共に設計していく姿勢を持てているか。

そこが問われます。

支援者もまた、迎える側です。

  • 企業を迎える
  • 現場の声を迎える
  • まだ言葉になっていない違和感を迎える

その姿勢がなければ、
迎える経営を語る資格はないのだと思います。

迎える経営とは「関係を迎える覚悟」

迎える経営とは、人を迎える前に、
関係を迎える覚悟を持つことです。

そしてそれは、企業だけでなく、
支援者自身にも求められる姿勢です。

次回以降の展開

次回以降は、

  • 信頼を先に差し出す設計
  • それを制度と運用にどう落とし込むか

といった具体論へと進んでいきます。

迎えるという思想が、どのように文化へと変わっていくのか。
そのプロセスを現場の視点から掘り下げていきます。

最後の問い

あなたは、どんな姿勢で関わる人を迎えていますか。

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