
動画で見る経営プログレッションの記事説明
※この動画は「経営プログレッション」全記事に共通して掲載しています。
この記事を読むことで得られること
- 観光地で「人は増えたのに売上が安定しない」理由を、Instagram依存という“構造”として整理できます
- A地域(失敗)とB地域(成功)の比較から、投稿数ではなく「滞在・回遊・再訪」を生む設計の違いが掴めます
- 来訪を関係性に変換するための観測装置として、つなぐシート(観光導線可視化版)の考え方と使いどころがわかります
まず結論:SNSは集客の“目的”ではなく接点の入口であり、入口の後に「滞在・回遊・記憶」を設計できた地域(企業)だけが、来訪を関係性に変えて経営を強くできます。
近年、多くの観光地でInstagramをきっかけとした来訪が増えています。
写真を見て訪れ、同じ構図で撮影し、投稿する。
この流れ自体は決して悪いものではありません。
実際、来訪者数は伸び、地域は一時的に賑わいます。
「人が増えた」という実感も生まれます。
しかし現場では、別の違和感が広がっています。
- 滞在時間が短い
- 消費が浅い
- 再訪につながらない
人は来ているのに売上が安定しない。
忙しさの割に利益が残らない。
地域内での回遊も起きない。
つまり、数は増えているのに経営が強くなっていないという状態です。
「発信を増やす」だけでは解決しない理由
多くの地域はここで、
- 「もっと発信を増やそう」
- 「さらに映えるスポットを作ろう」
と考えます。
しかし問題はSNSそのものではありません。
Instagramはあくまで入口にすぎません。
本質的な課題は、特定チャネルへの依存構造にあります。
入口だけが強く、
滞在・回遊・関係性への設計がないと、
来訪は単発で終わります。
集客が増えるほど疲弊し、収益は安定しない。
これは構造的な問題です。
地域経営に必要なのは「来てもらうこと」ではない
地域経営に必要なのは、
来訪を関係性に変換する設計です。
入口の強さだけでは地域は持続しません。
滞在し、回遊し、再訪し、関係が深まる仕組みがあって初めて、
地域経営は安定します。
失敗ケース(A地域)|“映えスポット”化した観光地
A地域は、自然景観と個性的なカフェ、手作り雑貨店が点在する地方観光地でした。もともとはゆったりと滞在し、地元の人との会話や回遊を楽しむ「滞在型」の地域でした。
転機は、ある写真がInstagramで拡散されたことです。海沿いのカフェの窓から見える夕景が「映える」と話題になり、週末には行列ができるほどの人気スポットになりました。
来訪者数は急増し、統計上も数字は伸びました。一見すると成功のように見えます。しかし現場では、別の現象が起きていました。
来訪者の行動が「消費」ではなく「撮影」に偏った
- 写真を撮る
- 飲み物を一つ頼む
- 投稿する
- すぐ次の場所へ移動する
滞在時間は短く、客単価は上がらず、周辺店舗への回遊も起きません。
カフェは席の回転を優先せざるを得ず、長時間滞在できる雰囲気は失われていきました。雑貨店には人が流れず、食事をせずに帰る来訪者も増えます。
結果として、「人は増えたのに売上は変わらない」状態が続きました。
来訪者数は波のように増減し、安定しない構造に
やがて他地域でも似た景観が拡散され、A地域の来訪者数は波のように増減するようになります。安定した顧客は育たず、価格を下げて呼び込むしかなくなりました。
週末は混雑し、平日は閑散。オーバーツーリズムによる住民との摩擦も生まれ、地元事業者の疲弊が進みます。
集客には成功したが、関係性を設計できなかった
A地域は、確かに集客には成功しました。しかしそれは、
「地域を消費する行動」であって、
「地域と関係を持つ行動」ではありませんでした。
その結果、収益は不安定なまま、現場の負担だけが増えていきました。
これはSNSの問題ではなく、“映え”を目的化してしまった構造が生んだ結果です。
成功ケース(B地域)|“記録される体験”から“記憶に残る体験”へ
B地域も、自然景観とカフェ、小規模な雑貨店が点在する地方観光地でした。条件や規模はA地域とほぼ同じで、こちらもInstagramで景観写真が拡散し、来訪者数は急増しました。
しかしB地域は、その段階でSNSを「目的」にしませんでした。
位置づけはあくまで入口。
「写真を撮りに来た人が、その後どこへ行くのか」「どれだけ滞在するのか」を設計対象にしたのです。
滞在導線の再設計から始めた
B地域が最初に取り組んだのは、来訪者の滞在導線の再設計でした。
- 写真スポットの近くに、短時間で体験できる小さな飲食メニューを配置
- そのレシートを持参すると、次の店舗で“地域限定の一言ストーリー”が聞ける仕組みを導入
- さらに、そのストーリーに登場する場所へ行くと、別の体験が用意されている
クーポンではなく、物語で回遊を生む設計です。
来訪者の行動は次のように変化しました。
- 写真を撮る
- 次の場所へ行く理由が生まれる
- 会話が発生する
- 滞在時間が伸びる
「投稿後の行動」を設計したことが決定的な違い
A地域では、
撮影 → 投稿 → 離脱
で終わっていました。
一方B地域では、
撮影 → 体験 → 会話 → 記憶 → 投稿
という順序に変わりました。
つまり、写真を撮る理由が滞在する理由に変換されたのです。
結果として地域経営が強くなった
この設計変更により、B地域では明確な成果が生まれました。
- 滞在時間が伸びる
- 客単価が上がる
- 地域内回遊が増える
- 再訪率が改善する
SNS投稿の数自体はA地域と大きく変わりませんでした。しかし投稿内容は、
「景色がきれい」→「この地域で過ごした時間」
へと変化していきました。
“記録される場所”から“記憶に残る場所”へ
B地域は、SNSを活用しながらも依存しない構造を作り、
来訪を関係性へと変換する地域設計に成功しました。
その結果、地域は「記録される場所」から「記憶に残る場所」へと転換したのです。
現場の物語|「写真は撮られるのに売れない」
語り手は、B地域で小さなカフェを営む店主です。海が見える窓際の席が人気で、Instagramでは何度も紹介されていました。週末には行列ができ、店の前には人が絶えません。当初は「これは成功だ」と感じていました。
しかし売上は思ったほど伸びません。多くの来訪者はドリンクを一つ注文し、写真を撮り、短時間で席を立ちます。店内での会話は少なく、追加注文もほとんどありません。雑貨棚を見る人もいない。
「こんなに人がいるのに、なぜ利益が残らないのだろう」
その違和感が積み重なっていきました。
地域全体の「回遊設計」が転機になった
状況が変わったのは、地域全体で回遊設計を導入したときです。
カフェでは、注文時に短い“地域の物語カード”を渡すようになりました。そのカードに登場する場所が、徒歩数分の雑貨店につながっています。
雑貨店では、カードを見せた人にだけ制作背景の話をする。さらにその話が、次の景観ポイントへ続いていく。
すると、店内の様子が明らかに変わりました。
- 来訪者がカードの内容について質問する
- スタッフが説明する
- 会話が生まれる
滞在時間が自然に伸び、追加注文が増えました。雑貨を手に取る人も増え、地域内を歩く人の流れが変わっていきました。
「過ごす場所」へと変わった瞬間
店主が最も印象に残っているのは、ある来訪者の言葉です。
「ここ、ただ写真を撮る場所じゃなくて、過ごす場所なんですね」
それまでカフェは“投稿される場所”でした。しかし設計が変わってからは、“過ごされる場所”へと変わりました。
人の数は大きく変わっていません。変わったのは、来訪者の行動と関係性です。
写真は記録、経営を支えるのは「記憶」
店主はこう語ります。
「SNSの人気があること自体は悪くない。でも、それだけでは経営は成り立たないと気づきました」
写真は記録です。しかし、経営を支えるのは記憶に残る体験です。
現場は、その違いをはっきりと体感していきました。
比較と学び|“投稿数”と“関係性”の違い
A地域とB地域の違いは、SNSを使ったかどうかではありません。
SNSを「何として扱ったか」という設計思想の差でした。
A地域は投稿数を増やすことを目的化しました。
B地域はSNSを接点の入口と捉え、その後の行動を設計しました。
構造比較
| A列 | B列 | C列 | |
|---|---|---|---|
| 観点 | A地域 | B地域 | 補足(意味) |
| SNSの役割 | 集客の目的 | 接点の入口 | 入口に依存するか/入口を起点にするか |
| KPI | 投稿数・来訪数 | 滞在・回遊・再訪 | “接触量”か、“関係性の深さ”か |
| 顧客行動 | 撮影 → 離脱 | 体験 → 共有 → 再訪 | 次の行動理由を持つかどうか |
| 収益構造 | 単発消費 | 関係性消費 | 忙しさが利益に変換されるか |
A地域では「どれだけ投稿されたか」「どれだけ人が来たか」が評価指標でした。
しかしそれは来訪の“数”を測っているだけで、地域との関係性は測れていません。
一方B地域は、来訪後の行動に着目しました。
- どれだけ滞在したか
- どこを回遊したか
- どこで会話が生まれたか
- 何が購入のきっかけになったか
つまり、関係が発生したポイントを観測対象にしたのです。
つなぐシート(観光導線可視化版)とは
この観測を可能にしたのが、つなぐシート(観光導線版)です。
目的は、来訪が関係性に変換された地点を記録すること。
▼ 基本項目
つなぐシート(観光導線可視化版)とは
この観測を可能にしたのが、つなぐシート(観光導線版)です。
目的は、来訪が関係性に変換された地点を記録すること。
▼ シート項目(最小形)
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 | F列 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 項目 | 来訪経路 | 滞在時間 | 回遊先 | 会話発生ポイント | 購入のきっかけ | 次回来訪理由(推定) |
| 入力形式 | 選択(SNS/紹介/再訪) | 選択(〜30分/1h/2h+) | 選択+短文 | 選択+短文 | 選択+短文 | 選択+短文 |
| 意図 | 入口チャネルの把握 | “過ごした”度合いの把握 | 地域内連結(導線)を可視化 | 関係が生まれた地点を特定 | 行動が収益に変わる条件を抽出 | 次の設計(季節・物語)に接続 |
■ 記入の原則
- 評価コメントを書かない
- “良かった/悪かった”を記録しない
- 行動と接点だけを記録する
つまり、“映えたか”ではなく “どこで関係が生まれたか” を蓄積します。
■ 記入の原則
- 評価コメントを書かない
- “良かった/悪かった”を記録しない
- 行動と接点だけを記録する
つまり、
“映えたか”ではなく “どこで関係が生まれたか” を蓄積します。
B地域で見えた変化
このシートを運用すると、投稿数は重要指標ではなくなりました。
代わりに見えてきたのは、
- どの接点で滞在が伸びるか
- どの会話で購入が生まれるか
- どの導線で再訪意向が高まるか
という関係生成ポイントです。
SNSは入口として機能し続けています。
しかし価値を生んでいるのは、入口の後に設計された体験です。
学び|接触ではなく、記憶を設計する
投稿数は接触を示します。
関係性は記憶を示します。
A地域は接触を最大化していました。
B地域は記憶を設計していました。
収益を安定させるのは、来訪の数ではなく、関係の深さです。
つなぐシートは来訪者を管理するためのものではありません。
来訪がどこで関係に変わったかを記録し、次の設計につなげるための装置です。
SNS時代の地域経営に必要なのは、
投稿されることではなく、関係が生まれる構造を持つことなのです。
中堅・大企業への展開視点|SNS依存マーケの限界
この構造は観光地だけの問題ではありません。
企業のマーケティングにも同じ現象が起きています。
- フォロワー数が増える
- 表示回数が伸びる
- リード数が増える
数字は成長しているように見えます。
しかし売上や利益は比例せず、LTVも伸びない。
原因は、接触と関係を同一視していることにあります。
SNS指標は「接触量」であって「関係性」ではない
フォロワー数は接触の量を示すだけで、
選ばれる理由や関係の深さは示しません。
また、リード獲得偏重の運用では、
獲得後の体験設計が弱くなります。
その結果、
- 比較される
- 価格で判断される
- 離脱される
という構造に陥ります。
必要なのは「ブランド体験の設計」
企業が設計すべきなのは、
- どの接点で
- どの記憶が残り
- どの意味で選ばれるのか
というブランド体験の構造です。
これがなければ、接触は単なるノイズになります。
KPIの再設計が不可欠
従来のKPIは、
- 接触数
- クリック数
- リード数
といった「入口の量」を測るものでした。
しかし必要なのは、関係性指標への転換です。
- 滞在時間
- 再接触率
- 指名率
- 紹介発生率
これらは「どれだけ残ったか」を示す指標です。
入口最適化では関係は深まらない
SNSは依然として強力な入口です。
しかし入口だけを最適化すると、関係は浅くなります。
強い企業は、
接触を増やすのではなく、接触を関係に変換する設計を持っています。
つまり評価軸を、
「どれだけ届いたか」から「どれだけ残ったか」へ
切り替えているのです。
まとめ+読者への問い
SNSは強力なツールです。しかしそれはあくまで入口であって、目的ではありません。
“映え”は来訪や接触を生みますが、それだけでは関係性の代替にはならないからです。
記録は残っても、記憶が残らなければ次の選択にはつながりません。
強い地域・強い企業が設計しているもの
強い地域や企業は、投稿数や接触数を追うのではなく、
- 滞在
- 回遊
- 記憶
を設計しています。
来てもらうことより、過ごしてもらうこと。
過ごしてもらうことより、思い出してもらうこと。
そこまで設計されて初めて、接点は関係性に変わります。
問い
あなたの集客は、投稿で終わっていますか?
その接点は、関係性に変換されていますか?

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