迎える経営論 | 理念で人を迎え、共感で組織を育てる | ソング中小企業診断士事務所

迎える経営論 | 理念で人を迎え、共感で組織を育てる

迎える経営論 | 理念で人を迎え、共感で組織を育てる

人材が足りない。
それでも「誰でもいい」というわけにはいかない。

─今、多くの経営者がこの難題に向き合っています。

待遇を整え、制度を作っても、なかなか長く続かない。
理念を掲げても、なかなか共感されない。
そんな声を、現場で何度も聞いてきました。

けれど、ほんとうに大切なのは「人を採る」ことではなく、「人を迎える」ことではないでしょうか。

相手の背景や想いを受けとめ、信頼という土台の上に関係を築くこと。
迎える側の姿勢が変わるだけで、組織の空気も、働く人の表情も、まるで違ってきます。

この「迎える経営論」は、
“共感で人を迎える時代”をどう生きるかを考えるシリーズです。
採用難・定着難・人的資本経営──そのどれもが、突き詰めれば「人をどう信じ、どう迎えるか」という問いに行き着きます。

私はこれまで、無形サービスの“届け方”を軸に、数多くの企業の支援や現場改善を行ってきました。
その中で痛感してきたのは、どんなに仕組みや戦略を整えても、最後に動かすのは“人の心”だということです。

ここでは、「迎えること」から始まる経営をテーマに、働く人と経営者、双方にとって幸せな関係を築くための考え方や実践を、現場と思想の両面からお伝えしていきます。

迎える経営論 フレームワークとは

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迎える経営論フレームワーク

迎える経営論は、「人が安心して働ける関係性」をどう設計し、どう現場で実装するかを体系化した独自フレームワークです。
その全体像は、
①パラダイム(世界観の転換)

②4大問い(関係構築の骨格)

③みえるシート(現場で機能する具体ツール)
という三層で構成されています。

最も外側の層では、「何が変わるのか」「どんな世界をつくるのか」という思想の基礎を共有し、
次の層では、人を迎え、関係を築くための4つの問い(関係構造の設計図)を示し、
最も内側の層では、それを日々の職場で“見える形”にするための実装ツール(みえるシート)へとつながります。

これにより、
抽象(原理)

中間(構造)

具体(実装)
が一本の線で結ばれ、組織全体の共通理解と現場運用が自然に統合されていきます。

右側の「想定活用シーン」に示すように、
このフレームワークは、経営層の理解から、オンボーディング、対話設計、現場の日常運用まで幅広く活用できる設計になっています。

迎える経営論は、単なる理念論でも、単なるツール論でもありません。
“関係をどうつくり、どう支え、どう育てるか”を、思想から現場実装まで一貫して導く、日本発のマネジメント体系です。

「迎える」という思想を、経営の確かな実践知へ。

月刊『企業実務』2025年12月号寄稿

「人を採るのではなく、迎える」という私の提言は、単なる精神論ではありません。それは、人手不足や定着難という現代の経営課題を突破するための、論理的な戦略でもあります。

この「迎える経営」に込めた思想と、それを支える具体的なマネジメント手法は、専門メディアへの記事執筆でも活かされています。経営専門誌『企業実務』(日本実業出版社)2025年12月号の巻頭特集では、まさにこの「迎える」視点に立ち、人件費高騰の中でいかに組織の質を高め、持続可能な経営を築くかについて、全国の経営層に向けた提言を執筆いたしました。

個人の原体験から生まれた想いが、全国誌という公の場で「経営の処方箋」として認められたことは、私にとっても大きな支えとなりました。ここに示すフレームワークや連載記事は、その確かな理論的背景に基づいた「明日から動ける」実践の記録です。

「採る」から「迎える」へ─採用観のパラダイム転換

いま多くの企業が「人が足りない」「採用がうまくいかない」と嘆く時代。
でも本当に問われているのは、“採る力”ではなく、“迎える力”ではないでしょうか。
ここでは、その視点の違いを整理した表を示します。

採用難・定着難・人的資本経営──時代の課題を突きつめると、「どう採るか」ではなく
「どう迎えるか」という問いに行き着きます。
本ページは、私が中小企業診断士を志した原点(「働く人の笑顔を増やしたい」)と接続しながら、
“条件で選ぶ採用”から“理念と共感で迎える経営”へシフトするための思想と実践をまとめるハブです。

「迎える経営」パラダイム比較表

従来の採用(“採る” 井村の提案(“迎える” 意味する経営姿勢
概念 人手を満たすための選抜・充足行為 理念を翻訳し居場所を設計して迎え入れる行為 手段的 → 関係創造的
関係性 適性検査・面接中心の選別 相手の背景や想いを受容し対話で確かめる 支配的 → 協調的
時間軸 短期(採用成功まで) 長期(定着・関係の継続・文化化) 戦術的 → 文化的
動機 必要性(人手不足の穴埋め 信頼(成果前から信じて迎える 管理 → 育む

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※ この表は、採用を“結果”ではなく関係のデザインとして捉え直すための原理の基礎です。

この表が示すもの ─ 採用から「関係創造」へ

従来の採用は、欠員を埋めるための選抜と充足に重心がありました。対して「迎える経営」は、まだ成果を出していない段階から相手の背景や想いを受けとめ、信頼を先に差し出す姿勢です。その瞬間、採用は“取引”から“共創”へと変わり、会社は人の力が続く文化を手に入れます。

私が診断士を志した理由─かつて職場で居場所を見失った経験と、独立後に「迎えられる喜び」に救われた体験─その両方が、この視点の源にあります。だからこそ、採用を人を迎える行為として再定義したいのです。

ここまでが「迎える経営」核心の原理です。続いて、同じ原理を現場の言葉と仕組みに落とす信頼構築のための4大フレームワークを示します。

迎える哲学を実装する ─私からの4つの問い

形式的な企業紹介の“箱”から離れ、人と人の関係づくりを起点に情報を設計するための枠組みです。
抽象的なスローガンではなく、課題・覚悟・学び・実装を開示し、共に歩める仲間かどうかを確かめます。

井村の提案:信頼構築の4大問い(骨格)

従来フォーマット 井村の問い 狙いと価値提供
理念・ミッションの掲示(動機の表明) 背景と覚悟
なぜ、今、私たちと「共に苦労する」ことが必要なのか?
【倫理的誠実さ】 抽象ではなく、事業の課題とそれに向き合う覚悟を開示。
“共感”を装うのではなく、本気の共創意志を確かめる。
事業・プロダクトの紹介(会社の説明) 描く未来と役割
この組織で、あなたの「まだ見ぬ力」が発揮できる居場所はどこか?
【個人の物語の受容】 事業説明よりも、あなたの成長と役割に焦点。
迎える側から具体的な期待と受容の姿勢を示す。
進め方・制度・プロセスの説明 歩みと学び
採用や定着の失敗から、何を学び、どう改善してきたか?
【失敗事例の開示】 成功談ではなく、迎える側の反省と成長を可視化。
自己開示による信頼構築を、企業にも要請する。
募集要項・業務内容の列挙 想いを形にする仕組み
理念や想いを、現場でどう「みえるシート」等で共有し、行動に変えるか?
【実装力の証明】 抽象的な未来図ではなく、具体ツールと運用で示す。
「思いでつながる」が幻想でないことを、仕組みで証明。

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※ この表は、採用広報を“広告”から信頼の物語へ転換するための実践の骨格です。第一の表(思想)を前提に、現場での情報設計と運用を具体化します。

本シリーズでは、理念採用・定着・若手育成・対話文化のつくり方などを、思想と現場の両面から掘り下げていきます。
現場の実装としては、スタッフの声や小さな成功を経営に届ける
「みえるシート」(Googleスプレッドシート活用)を核に、信頼の循環が回る仕組みまで落とし込みます。

私はこの「迎える」という言葉に、自身の原点を重ねています。
かつて、働く中で迎えられていないと感じ、居場所を失いかけた経験。そして独立後、信頼で迎え入れられた喜び。
その両方が、この思想の出発点になりました。
こちらのセクションでは、その物語に少しだけ触れております。

現場での実践──“みえるシート”がつなぐ現実

「迎える経営」を本当に機能させるには、理念だけでは足りません。
どれほど素晴らしい言葉を掲げても、現場でそれが共有され、行動に落ちていなければ、人はすぐに迷子になってしまいます。

経営の現場では、日々の業務、数字、感情、出来事が複雑に絡み合っています。
その中で「人の想い」をどう扱うか。
ここにこそ、多くの企業がつまずいている現実があります。

私はその“見えない部分”を経営に届けるために、
Googleスプレッドシートをベースにした「みえるシート」という支援ツールを開発しました。

「数字がわかる」「声をつなぐ」「想いがみえる」から動き出す | 現場の悩みから生まれた、経営改善のExcelツール
現場の声から、生まれたツールです。「月末にならないと、利益が出てるのか赤字なのかわからない…」「人を増やしたいけど、それって本当に今やるべきなの?」「感覚では黒字っぽい。でも銀行に説明するには数字が見えない…」「社内コミュニケーションに苦労...

このシートは、スタッフ一人ひとりの気持ちや行動、顧客との関係性、そして日々の小さな気づきを経営に見える化する仕組みです。

たとえば―

  • スタッフが感じている「やりがい」や「不安」を、定期的な対話を通じて共有する。
  • 顧客との関係を育てているスタッフの姿勢を、数字の奥にあるストーリーとして残す。
  • 現場の小さな成功体験を、組織全体の学びとして共有する。

それは単なる管理シートではなく、「人の想いを迎え入れるための装置」です。

数字を扱うのが経営なら、その数字の裏にある想いを拾い上げるのが“迎える経営”。
みえるシートは、その2つを結ぶ翻訳機のような存在です。

この仕組みを導入した現場では、スタッフの声が経営会議に自然と届くようになり、「どうせ伝わらない」という諦めが、「きっと伝わる」に変わっていきました。

経営に“見える形”で人の声が届くと、そこに初めて「迎える文化」が根づきます。
人の想いを数字に変えるのではなく、数字を通して人の想いを見つめ直す。
それが、私が支援の現場で伝えたい“迎える経営”のあり方です。

なぜ「迎える経営」が必要なのか

少子高齢化が進み、労働人口は年々減少しています。
有効求人倍率は依然として高く、どの業界でも「採用できない」「続かない」という声が後を絶ちません。
人材紹介会社や転職プラットフォームが華やかに広告を打つ一方で、現場では「人がいない」という言葉が日常語になってしまいました。

けれども、これは単なる“数の問題”ではありません。
たとえ採用がうまくいっても、入社後に早期離職してしまう。
働く人のモチベーションが続かず、組織の一体感が育たない。
――こうした「関係の断絶」こそが、より深い課題です。

人が辞める理由の多くは、給与でも待遇でもなく、

「自分の存在が認められなかった」

「ここに居場所がなかった」

という感覚にあります。
つまり、経営において本当に問われているのは、「どう採るか」ではなく「どう迎えるか」。

迎えるとは、相手の背景や想いを受け止め、まだ成果を出していない段階から“信じる”という行為です。
それは、短期的な戦略ではなく、長期的な関係づくりそのもの。
この姿勢の有無が、組織文化を決定づけます。

企業は商品やサービスで選ばれる時代から、
「誰と働くか」で選ばれる時代へと変わりました。
同じ理念に共鳴し、価値観を共有できる人を迎え入れる。
それこそが、これからの経営の競争力になります。

“迎える経営”とは、採用活動を超えた人間関係の再設計です。
待遇や制度を整えることも大切ですが、
その根底に「思いでつながる構造」がなければ、関係は長く続きません。

理念採用の本質──“思いでつながる”時代へ

求人票に書かれた条件や待遇を見て応募する時代は、すでに終わりを迎えつつあります。
いま人が動くのは、「この会社で働きたい」ではなく、

「この人たちと働きたい」

という感情に突き動かされる瞬間です。

待遇で惹きつける採用には、限界があります。
条件が上回る企業が現れれば、関係は簡単に途切れてしまう。
けれども、“思い”で結ばれた関係は、少しの困難では揺らぎません。

理念採用とは、単に会社のミッションやビジョンを掲げることではありません。
それは、経営者自身が「何を大切にしているか」を日々の行動で示し、その背中を通して信頼を生み出すことです。

人は理念の言葉ではなく、理念の“姿勢”に共感します。
経営者がスタッフを信じ、スタッフが顧客を信じ、その循環の中に“迎える文化”が生まれる。
理念採用とは、そうした信頼の連鎖を育てる営みです。

そしてこの時代、採用はもはや「広報活動」ではなく、“共感の発信”そのものになっています。
SNSや口コミ、日常の言葉の端々に、企業の“人に対する姿勢”が透けて見える。
採用動画も、会社説明会も、ホームページの一文も、すべてが「理念の届け方」を映し出す鏡です。

だからこそ、“迎える経営”において重要なのは、理念を語ること以上に、人を信じる行為を重ねること。
共感でつながる関係は、条件や契約ではなく、「この人のもとで働きたい」という自発的な選択の上に築かれます。

これからの発信──“迎える”をテーマにした連載群へ

この「迎える経営論」は、一つの固定観念を問い直すところから始まります。
“採る”ではなく、“迎える”。
その視点をもとに、これから多くのテーマを取り上げていきます。

たとえば―

  • 理念で採用するという選択
  •  条件ではなく「価値観の共鳴」で人が集まる時代。経営者の“信じる力”が採用を変える。

  • 定着とは「関係の継続」である
  •  離職率の数字だけでは測れない、「続く理由」と「戻れる職場」のつくり方。

  • 若手を育てる“余白”の経営
  •  指導ではなく、共感で伸ばす。期待ではなく、信頼で支えるリーダーシップ。

  • 対話がつくる組織文化
  •  会議でも評価制度でもなく、日常の小さな対話が企業文化を形づくる。

  • 理念と数字をつなぐ“みえるシート”の活用実践
  •  人の想いを経営データに翻訳し、人的資本経営を「現場の言葉」で進める方法。

これらの記事は、経営者・スタッフ・支援者、それぞれの立場から“迎える”を考えるシリーズとして展開していきます。

経営者にとっては、
「人を信じる経営」が持つ力と、その実践のヒントを。
働く人にとっては、
「こんな会社で働きたい」と思える価値観との出会いを。
支援者にとっては、
「理念を現場に届ける」ための方法論を。

迎える経営論は、立場を問わず、“人を信じることから経営を変える”という視点を共有する場です。
そして、それを単なる理想論ではなく、現場に落とし込む実践知として発信していきます。

「迎える経営論」連載マトリクス

編タイトル 主題 企業側の視点 働く側の視点 支援側の視点
思想編|「迎える経営」とは何か 採用・関係性の哲学的出発点 A:採用を「選ぶ」から「迎える」へ──経営哲学の転換 B:自分が選ばれる側ではなく「共に創る側」になる覚悟 C:経営理念を現場言語に翻訳し、行動指針へ落とす支援
信頼編|信じて差し出す経営 信頼の先行が組織文化を変える D:ルールよりも信頼を先に差し出す文化設計 E:信頼を受け取る責任と、自律的な行動意識 F:「先に信じる仕組み」を制度と運用で形にする
対話編|わかり合う職場をつくる 面談・1on1・心理的安全性 G:上司・部下の一方通行をやめ、対話を設計する H:自分の言葉で話す練習と、聞く力の育成 I:可視化とリフレクションを支えるファシリテーション
定着編|続く人、育つ文化 定着率向上とキャリアデザイン J:離職を「失敗」ではなく組織学習と捉える K:仕事に意味を見いだし、自分の成長と結びつける L:キャリア循環をデータと感情の両面で支える仕組み化
理念編|共感でつながる採用 理念採用・共感ベースの発信 M:理念を“掲げる”で終わらせず、“体現する”採用広報 N:企業理念と自分の人生理念を照らし合わせる O:理念を見える化し、共感の接点を設計するコンテンツ支援
実装編|「みえるシート」による循環設計 仕組み化・可視化・データ共有 P:現場が理念を日常的に更新できる仕組み設計 Q:可視化されたデータを行動の気づきにつなげる R:「みえるシート」で理念と行動を橋渡しする
成長編|挑戦を迎え、共に学ぶ組織 若手育成・失敗の受容・共進化 S:挑戦を奨励し、失敗を歓迎する文化を整える T:失敗を共有資産として学びに変える勇気 U:「挑戦の見取り図」を描く支援と内省の設計
未来編|人を中心にした経営のゆくえ 人的資本経営の次フェーズを描く V:数値管理を超えた“人間中心経営”へのシフト W:キャリアを組織外にも広げる時代の生き方設計 X:経営と人の未来をつなぐ“届け方設計”の実践知を体系化

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当理論を支える「3つの視点」の構造

「迎える経営論」が、一般的な組織論や人事ノウハウ本と決定的に異なるのは、議論を「企業側」の一方的な視点に留めず、「働く側」「支援側」という3つの視点から多角的に展開している点です。

この三位一体の構造こそが、組織の真の課題を解決し、持続的な定着と成長を可能にするための鍵であり、この3つの視点を盛り込むことで、「迎える経営論」は、理念と実務、感情と論理のバランスがとれた、説得力のある組織変革の標準理論として機能します。

  1. 企業側の視点(経営者が組織の「器」を設計する)
  2. 従来の採用・定着論の中心であり、企業の「ノウハウ」や「戦術」に焦点を当てます。

    役割: 経営理念に基づき、社員を心から迎え入れ、活かすための組織構造(器)や制度をどう設計するか。

    効果: 組織の基盤を築き、採用難・定着難という実務的な課題を解決します。

  3. 働く側の視点(「居場所」を求める人々の本音)
  4. 企業に合わせることを求められた働く人々の本音、キャリア観、組織への期待を、企業側の視点と同レベルで扱います。

    役割: 組織が解決すべき「居場所がない」という感情的かつ普遍的な課題を深く掘り下げ、経営者に言語化しにくい社員のニーズを伝えます。

    効果: 書籍に深い共感性をもたらし、単なるノウハウ書を超えた自己啓発的な価値を生み出し、読者の裾野を広げます。

  5. 支援側の視点(閉鎖的な組織にメスを入れる客観的な介入)
  6. 中小企業診断士やコンサルタントといった第三者的な専門家の視点を加えることで、議論を客観的に裏付け、実践性を高めます。

    役割: 企業内部では見えにくい人間関係の閉鎖性や、言語化できない潜在的な問題に論理的なメスを入れ、客観的な介入プロセスと実行可能なアクションプランを示します。

    効果: 議論の信頼性と専門性を担保し、組織変革という高難度な課題に対する具体的な解決方法を提供します。

記事一覧

序章|迎えられなかった私が、“迎える”を語る理由

第0回|迎えられなかった私が、“迎える”を語る理由─【迎える経営論|序章】
ソング中小企業診断士事務所代表、中小企業診断士の井村淳也です。私は「迎える経営論」を語っていますが、もともと“迎えられる側の人間”ではありませんでした。むしろ逆でした。どこに行っても居心地が悪く、期待されていないように感じ、会社員時代は働く...

① 思想編|「迎える経営」とは何か

第25回 [A-2]|理念を人事に任せない経営 ─ “迎える姿勢”は誰の仕事か【迎える経営論|思想編(企業側視点)】
多くの企業が、「理念は大事だ」と口にします。一定の規模であれば経営理念やミッション・ビジョン・バリューを掲げていない会社の方が、今ではむしろ少数派かもしれません。ところが現場を見ていくと、理念が実際の経営や組織運営の中で、十分に機能している...
第3回 [C-1]|“採用支援”ではなく“迎える支援”を ─ 信頼を構築する経営伴走のかたち【迎える経営論|思想編(支援側視点)】
多くの企業が「採用支援」を求めています。求人票の書き方、SNSの運用、説明会の企画──。けれど、どれほど工夫を重ねても、「人が定着しない」「信頼関係が続かない」という声を、私は現場で何度も耳にしてきました。それはきっと、支援の目的が“採るこ...
第2回 [B-1]|「選ばれる」より「迎えられる」働き方 ─ 人を信じて働く時代へ【迎える経営論|思想編(働く側視点)】
働くことは、どこかで「選ばれる」ことだと感じてしまう─履歴書を整え、面接に挑み、評価される。その一つひとつに、選ばれるための努力を積み重ねてきた方も多いでしょう。けれど、その前提に少しだけ疑問を持ってみると、見える世界が変わります。もし働く...
第1回 [A-1]|採用をやめて「迎える」を始める ─ 信頼でつながる経営へ【迎える経営論|思想編(企業側視点)】
「採用をやめて、迎えるを始める」。少し衝撃的に聞こえるかもしれません。しかしこの一言に、いま多くの中小企業が抱える課題の本質が隠れています。人が足りない、応募が来ない、やっと採っても続かない──。採用にまつわる悩みは、もはや個社の問題ではな...

② 信頼編|信じて差し出す経営

第6回 [F-1]|信頼を先に差し出す支援デザイン―“任せる前に寄り添う”という実装【迎える経営論|信頼編(支援側視点)】
支援は、正しさを届ける営みではありません。組織や個人が自ら動き始めるための「場」を整える営みです。しかし現場では、支援する側が意図せず“正しさの押し付け”に立ってしまうことがあります。その瞬間、相手は守りに入り、支援は形だけになり、行動は止...
第5回 [E-1]|“信じてもらう”経験が人を変える―自律は「受け取った信頼」から始まる【迎える経営論|信頼編(働く側視点)】
人は、「信じてもらった経験」によって変わります。厳しい評価や正確な指示だけでは、人は自律的には動けません。自分がどのように扱われたか──その体験が、働き方や仲間との関わり方に深く影響します。もし「任せられる前提」で迎えられたなら、人は自分を...
第4回 [D-1]|まだ成果を出していない人を信じる勇気―信頼は“結果”ではなく“始まり”である【迎える経営論|信頼編(企業側視点)】
組織の中で「信頼」は、これまでしばしば“成果のあと”に語られてきました。「結果を出した人は信頼できる」「まずは実績を見せてほしい」──そんな前提です。しかし、現場で人が育つとき、順番はむしろ逆です。信頼が先にあるからこそ、人は動き、学び、成...

③ 対話編|わかり合う職場をつくる

第9回 [I-1]|対話が生まれる設計こそ支援の本質 — 「語る支援」から「問いを設計する支援」へ【迎える経営論|対話編】(支援側視点)
支援という言葉には、「導く」「教える」「助ける」といったイメージがつきまといます。けれど、現場で支援を続けていると、それだけでは届かない瞬間に出会います。どれほど正しい提案をしても、相手の中に「納得」や「実感」が生まれなければ、行動は変わら...
第8回 [H-1]|話すことで、居場所が生まれる — 自分を取り戻す対話の始め方【迎える経営論|対話編(働く側視点)】
「話すのが苦手なんです。」そう言う人は少なくありません。迷惑をかけたくない、場を乱したくない、うまく言葉にできない――そんな思いが重なると、人は自然と「黙る」という選択をします。かつての私自身も、会社員時代に同じ悩みに長く苦しんだ一人でもあ...
第7回 [G-1]|上司が「聞く」だけで変わるチーム — 対話が文化になる瞬間【迎える経営論|対話編(企業側視点)】
職場の空気は不思議なもので、「話せる日」と「話せない日」の違いは、主に「聞く側」(上司)の状態によって生まれます。上司が忙しそう、あるいは結論を急ぐなど、「聞く余白」がないと、部下は「本音を言っても意味がない」と感じ、職場から言葉が消えてい...

④ 定着編|続く人、育つ文化

第12回 [L-1]|定着支援は制度ではなく関係設計 ― “続けたい理由”は日常のふるまいでつくられる【迎える経営論|定着編(支援側視点)】
離職を減らしたい、定着率を上げたい——多くの企業がこの課題に向き合うとき、まず思い浮かべるのは「制度を整えること」かもしれません。評価制度、キャリアパス、福利厚生、面談の仕組み…。もちろん、これらは必要な“土台”です。しかし、支援現場に立つ...
第11回 [K-1]|「ここで働きたい」と思える瞬間 ― 働き続ける理由は関係の中で育つ【迎える経営論|定着編(働く側視点)】
「ここで働きたい」と心の底から思える瞬間は、待遇や制度が理由になるとは限りません。むしろ、多くの人にとってその瞬間は、驚くほど“個人的でささやかな出来事”から生まれます。たとえば、忙しい中でもこちらの話を丁寧に聞いてくれた上司の姿。初めて任...
第10回 [J-1]|人が辞める会社に共通する3つの誤解 ― 関係の質が定着を決める【迎える経営論|定着編(企業側視点)】
人が辞めていく理由は、必ずしも「待遇が悪いから」や「能力不足だから」ではありません。むしろ、会社が“当たり前”だと思っている前提と、働く人が感じている現実とのあいだにある 見えないズレ が、静かに積み重なっていくことのほうが多いものです。こ...

⑤ 理念編|共感でつながる採用

第15回 [O-1]|理念を“共感の構造”に落とす─言葉を体験へと翻訳する支援設計【迎える経営論|理念編(支援側視点)】
企業がどれだけ立派な理念を掲げても、それが現場のふるまいに宿らなければ、働く人の心には届きません。支援側が向き合うべき最大の課題は、「理念を説明すること」ではなく、「理念を共感として体験できるように構造化すること」です。共感は、言葉の美しさ...
第14回 [N-1]|共感できる職場をどう見つけるか─面接・初日・違和感が示す本当のサイン【迎える経営論|理念編(働く側視点)】
働く環境を選ぶとき、多くの人が基準にするのは「条件」や「仕事内容」です。しかし実際にその職場で長く働けるかどうかを決めるのは、条件よりも“共感できる空気があるか”という点です。なぜなら、職場との関係は「理解」ではなく「共感」で始まるからです...
第13回 [M-1]|理念は“言葉”ではなく“迎え方”で伝わる ― 共感が生まれる瞬間のつくり方【迎える経営論|理念編(企業側視点)】
理念は、多くの企業で「掲げるもの」「言葉として整えるもの」として扱われがちです。しかし現場に立つと痛感します。人は、言葉よりも“迎えられ方”によって理念を受け取るということを。どれだけ立派な理念を書き連ねても、初日の挨拶、話を聴く姿勢、困っ...

⑥ 実装編|「みえるシート」による循環設計

第18回 [R-1]|みえるシートの思想と設計意図─見える化を設計する支援者の役割【迎える経営論|実装編(支援側視点)】
「みえるシート」は、数字を並べるための表でも、便利なメモ帳でもありません。これは “迎える経営”を実装するために、どうしても必要だった関係設計そのもの です。既製品のコミュニケーションツールでは、どれだけ丁寧に使っても届かない領域があります...
第17回 [Q-1]|見えることで救われた気持ち─“働く人の心”に届く見える化【迎える経営論|実装編(働く側視点)】
見えることで救われた気持ち働いていると、「言えないまま飲み込んだ気持ち」が静かに溜まっていくことがあります。忙しさ、遠慮、空気、迷惑をかけたくない思い──。誰にも伝えられず、理由を抱えたまま、ただ結果だけが自分に返ってくる日もある。そんなと...
第16回 [P-1]|「見える化」は“叱るため”ではない─安心をつくる関係設計【迎える経営論|実装編(企業側視点)】
「見える化」と聞くと、多くの現場でまず思い浮かべるのは “管理” です。数字を並べ、行動を記録し、遅れやミスを可視化する──いわば「叱るための材料」を揃える行為として捉えられがちです。しかし、迎える経営における見える化は、まったく別の思想で...

⑦ 成長編|挑戦を迎え、共に学ぶ組織

第21回 [U-1]|挑戦を迎える支援のデザイン ─ 支援は“助言”ではなく“循環設計”である【迎える経営論|成長編(支援側視点)】
挑戦は個人の勇気ではなく、環境の設計から生まれます。そして、その設計をもっとも繊細に、もっとも近くで担うのが “支援者” の役割です。企業がどれほど挑戦を掲げても、働く人がどれほど前向きでも、実際に挑戦が起きるかどうかは、挑戦が「迎えられる...
第20回 [T-1]|失敗が怖くなくなった日 ─ “迎えられる経験”が働き方を変える【迎える経営論|成長編(働く側視点)】
失敗が怖い──。それは多くの働く人が抱える、ごく自然な感情です。評価、立場、周囲の視線、自分への失望。失敗は、時に仕事以上に心を消耗させます。だからこそ、多くの職場では挑戦が止まります。「やってみたい」の一歩が踏み出せず、「もし間違えたら」...
第19回 [S-1]|失敗を受け入れる会社はなぜ伸びるか ─ 挑戦を迎える文化のつくり方【迎える経営論|成長編(企業側視点)】
どんなに立派な理念を掲げても、どんな制度を整えても、人が挑戦しなければ、組織は変わりません。そして挑戦が起きるのは、「成功が約束されている」場ではなく、“失敗しても大丈夫だ”と思える場です。誰もがもう気づいています。若手が育たないのは、挑戦...

⑧ 未来編|人を中心にした経営のゆくえ

第24回 [X-1]|AI×無形サービスが拓く“迎える支援”─AI時代に人を中心とした関係性を取り戻す【迎える経営論|未来編(支援側視点)】
AIが当たり前に共創パートナーとなった今、無形サービスの価値は大きく二極化し始めています。単なる効率化を売りにする支援は、AIによって急速に代替されていく。一方で、“相手の内側にあるものを受け取り、翻訳し、届け返す”という無形サービスの本質...
第23回 [W-1]|AIと共に働く時代の幸福論 ─ 自分らしさと役割を取り戻す働き方【迎える経営論|未来編(働く側視点)】
AIが当たり前に働き、当たり前に判断し、仕事の至るところに“共にいる存在”となった今、私たちの働き方は静かに、しかし確実に変わりつつあります。「AIに仕事を奪われるのではないか」「人の価値は薄れていくのではないか」そんな不安を抱く声は後を絶...
第22回 [V-1]|AI時代の「人」を中心にした経営 ─ 人とAIが共創する企業文化こそ次の競争力 【迎える経営論|未来編(企業側視点)】
AIが当たり前のように存在し、もはや「AI時代になる」のではなく、私たちはすでに“AI時代のただ中”にいます。経営も、働き方も、支援の形も、AIを抜きに語ることはもはやできません。むしろこれからは、AIをどう迎え入れ、人とAIの関係をどう設...

迎える経営論の主な実践事例

【ケース①】定着難 → 初期オンボーディング改善で定着増

A社:サービス業(従業員18名)

  • 3か月離職率:38% → 16%
  • 面談シート改善、迎え方の統一マニュアル
  • 入社3日以内の「迎え面談」導入

→ 6か月定着率が72%に上昇しました。

本事例の紹介記事

【迎える経営論導入事例-1】サービス業3か月離職率38%→16%へー迎えるオンボーディングで定着率が2倍になった小規模サービス企業
多くの企業は、採用に力を注ぐ一方で、「迎え方」そのものの設計が抜け落ちています。初日の声かけ、配属前の説明、最初の1週間の伴走──。どれかひとつが欠けるだけで、新しく入った人は「自分は必要とされていないのかもしれない」と感じてしまいます。A...

【ケース②】若手が育たない → 対話編 × 成長編

B社:製造業(従業員60名)

  • “指示待ち文化”で若手が辞める
  • 1on1導入、心理的安全性の設計
  • 失敗共有会の定例化

→ “挑戦数”が前年比2.3倍になりました。

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【迎える経営論導入事例-2】製造業で若手の挑戦数が2.3倍に─「育たない」を構造から変えた迎え方設計
多くの企業が口にします。「最近の若手は指示待ちだ」「失敗を怖がって、なかなか挑戦しない」と。確かに、現場を見渡すと、言われたことはきちんとこなす一方で、自分から動こうとしない若手の姿が目につくかもしれません。その様子を見て、「意欲が足りない...

読者へのメッセージ──信じることから始まる経営

「迎える」という言葉には、私自身の原点が重なっています。

私はかつて、組織の中でうまく馴染めず、人間関係に悩み、居場所を見失っていた時期がありました。
理不尽に怒られるのではないか、嫌われているのではないか―そんな不安を抱えながら、常に緊張して働いていました。

誰かが少しでも声をかけてくれたら。
もう少し、自分を信じてくれる人がいたら。
その“迎えてもらえなかった記憶”が、今も心の奥に残っています。

中小企業診断士を志した理由 | 異色の歩みが導いた、支援者としての原点
私がなぜ中小企業診断士になりたいと考えるようになったのか、その理由をお話させてください。動画で見る井村の道のりと未来への思い 自分の人生を変えた問いが、今は誰かの挑戦に寄り添う力になっている。遠回りだったかもしれない。でも、その道のりが、今...

だからこそ、独立して音楽制作事業を始め、そして中小企業診断士として多くの現場に関わるようになった今、私は“迎える側”として関わることを一番大切にしています。

経営者にとっても、スタッフにとっても、最も大きな力になるのは「信じてもらえた」という実感です。
信頼は契約ではなく、態度で築かれる。
理念は掲げるものではなく、日々の迎え方で示される。

働く人を“人材”としてではなく、“物語を持った存在”として迎えること。
その瞬間、組織は単なる労働の場から、「互いを信じ合う共同体」へと変わります。

迎えるとは、相手の中にある“まだ見ぬ力”を信じること。
経営とは、信頼の循環をデザインすること。
そして、その循環のはじまりは、いつだって迎える側の一歩です。

この「迎える経営論」は、私自身のそんな思いを込めて始まりました。
働く人を信じ、共に歩み、笑顔を増やす経営。
それこそが、私が中小企業診断士を志した理由でもあります。

「信じることから始まる経営」
――それが“迎える経営”の本質であり、私のこれからの発信の原点です。