
動画で見る診断ノートの記事説明
※この動画は「診断ノート」全記事に共通して掲載しています。
金融大手・三井住友フィナンシャルグループが、今後3年間で「1兆円規模」をデジタル分野へ投資する方針を示しました。
AIを活用した顧客サービスの高度化、アプリを軸にした利便性の強化など、従来の“金利競争”から“体験競争”へと舵を切る姿勢が鮮明になっています。
この動きは、金融業界だけの話ではありません。
金利や価格だけでは顧客を引きつけられない時代に入り、あらゆる業界で
「便利さ・ストレスのなさ・意図の汲み取り」
といった“顧客体験(CX)”そのものが競争力の源泉になってきています。
私自身、支援現場で「AIペルソナ壁打ち」を活用し、
店舗型サービスからBtoB企業まで、
顧客の悩み・離脱理由・ロイヤル化の構造を“見える化”する取り組みを行っていますが、
今回のニュースは、大企業で起きている変化が中小企業にも確実に波及することを示す象徴的な出来事だと感じます。
デジタル投資の額の大小ではなく、
「顧客をどう理解し、どのように届けるかを設計する力」
こそが、これからの事業の明暗を分けます。
ニュースの本質と、中小企業がいま取るべき視点を整理していきます。
この記事を読むことで得られること
- SMFGの「1兆円デジタル投資」が示す、金利・価格ではなく“顧客体験(CX)”で選ばれる時代の構造が整理できます
- 大企業がAIやアプリに投資する本当の目的──「顧客の意図を読み取り、ストレスをなくす設計」の重要性が理解できます
- 中小企業でも実装できる「AIペルソナ壁打ち」を含む顧客理解の設計手順がイメージでき、自社にどう応用するかのヒントが得られます
まず結論:これからの差別化は、どれだけデジタル投資をするかではなく、「顧客の意図を深く理解し、その体験をどう設計して届けるか」を先に描けるかどうかで決まります。
SMFGが示す「金利競争では勝てない時代」とCXへの転換
今回のSMFG(三井住友フィナンシャルグループ)の発表で特に象徴的だったのは、中島社長の
「金利で取った預金は、金利で逃げていく」
という一言です。これは金融業界の本質を突く発言であると同時に、サービス業全般に共通する構造を表しています。
多くの企業は「安くするとお客が来る」と考えがちですが、現実には
“値段で来たお客様は、値段で離れていく”
という宿命を抱えています。現在の金融機関は金利上昇により預金獲得競争が激化し、どこがより高い金利をつけるかという「数値の争い」に見える状況です。しかしこの構造は長続きしません。金利が下がれば預金は別の銀行へ流れ、顧客ロイヤル化にもつながらないからです。
SMFGが示した「便利さを追求する金融サービス」
中島社長は「便利さを追求して選ばれる金融サービスへ」と明言しました。これは価格競争から体験競争へのシフトを意味します。
金融業界における“便利さ”とは、単なるアプリの存在ではなく次のような体験です。
- 資産残高・クレカ・ポイント・融資を1つのアプリで完結
- 問い合わせ時に自動で最適部門へ振り分け
- 必要なときに必要な情報だけが出てくる
- 手続きが最短で済む
- 顧客の行動をAIが理解し、提案が最適化
つまり「ストレスなく、意図を先回りしてくれる体験」のことです。この概念は中小企業にもそのまま適用できます。
中小企業も陥る「金利競争型」の構造
来店型店舗、BtoB、飲食、医療・美容など多くの現場では、気づかないうちに「金利競争」と同じ構造に陥っています。
- 値下げ競争
- 追加メニューの過剰提供
- 広告での“釣り”集客
- SNSでの過度な宣伝
しかしこうした施策は短期的には効いても長続きしません。“便利さ”“わかりやすさ”“意図を汲み取る姿勢”を持つ競合が現れた瞬間、お客様はそちらへ流れてしまいます。
価格・金利・割引で差別化できる時代の終焉
SMFGのような巨大企業が金利ではなく体験で勝負する時代に入ったことは、
「価格・金利・割引で差別化できる時代は終わった」
という明確なメッセージです。この変化はすでに店舗型サービスの現場でも始まっています。顧客が求めているのは「安さ」ではなく、
“自分のことをわかってくれるか”
です。
SMFGの投資が示す「顧客理解競争」への参入
SMFGの1兆円投資は単なるデジタル化ではなく、“顧客理解の精度を高める競争”への本格参入を意味します。ここから先、中小企業が取り残されないためには、
- 価格ではなく顧客体験(CX)の設計力
をどれだけ磨けるかが重要になります。
巨大企業が1兆円を投じる理由:顧客は便利さに動く
SMFG(三井住友フィナンシャルグループ)が今後3年間で1兆円規模のデジタル投資を行う方針を示した背景には、極めてシンプルで普遍的な構造があると見ます。それは、
顧客は“便利さ”に動く
という事実です。金融は金利が主役の業界に見えますが、実態はそうではありません。特に若年層・現役世代の行動パターンは大きく変化しており、次の要素が銀行選びに決定的な影響を与えています。
- 口座開設のしやすさ
- アプリの使いやすさ
- 必要な情報へのアクセスの速さ
- 手続きのわかりやすさ
- チャットや電話のストレスの少なさ
もはや「ブランド力がある」「大手だから安心」といった理由だけでは顧客は残りません。どれだけ金利がよくても、面倒さを感じればすぐに離れてしまいます。だからこそSMFGは“便利さ”への投資を惜しまず、桁違いの規模でデジタル領域に資金を投じています。
便利さは新しい差別化軸
これまで銀行の差別化は、
- 店舗数
- ATMの数
- 金利・手数料
といった「数値で説明できる要素」に偏っていました。しかしデジタル化が進んだ今、顧客は“わざわざ銀行へ行く必要がない”生活を前提に動いています。差別化軸は次のように変わりました。
- どれだけアプリが直感的か
- どれだけ問い合わせがラクか
- どれだけ迷わず使えるか
- どれだけ顧客の「やりたい」を瞬時に理解できるか
これらはすべて毎日の体験の中で評価されるため、一度便利さを知った顧客は他へ移りにくくなります。つまり、
便利さ=顧客ロイヤル化の核
になっていくのです。
1兆円規模の投資が意味するもの
この金額のインパクトを単なる大企業のニュースとして捉えると本質を見落とします。重要なのは、
「便利さを作る競争」がすでに巨大企業の経営戦略の中心にある
という点です。1兆円の投資とは、単なるアプリ改善やAI導入ではありません。
- 顧客理解の深度を最大化する
- オペレーションのムダを極限まで減らす
- 人手不足でも対応品質を落とさない仕組みを作る
- 金融サービスを1つの体験として統合する
これらの基盤を徹底的に強化するための投資です。つまり、
「便利さ」を武器にした企業だけが生き残る未来
をSMFGは読み取っているのです。
この潮流は中小企業にも確実に降りてくる
「大手の話だから関係ない」と思うのは誤解です。むしろ中小企業こそ影響を受けやすいと言えます。なぜなら顧客はすでに大手企業の“便利さ基準”に慣れてしまっているからです。
- LINE予約が当たり前
- 返信のスピードが評価に直結
- 欲しい情報はすぐ見たい
- 問い合わせで迷いたくない
- 手続きは極力シンプルにしたい
Amazonや銀行アプリが生み出す“便利さの基準”は、小規模店舗・地域ビジネスでも容赦なく適用されます。「うちは小さいから関係ない」という言葉は、もはや通用しません。
SMFGの1兆円投資が示す未来
それは、
“便利に勝てる企業だけが選ばれる”時代の本格到来
です。そしてこれは、私が一貫して取り組んできた「届け方の設計」とも完全に地続きです。便利さは技術ではなく設計です。
- AIを入れるかどうかではなく、意図をどう理解するか
- 顧客が迷わない動線設計をどう作るか
SMFGの発表は、その方向性を裏付ける大きな材料となっています。
中小企業にも起きている課題:顧客理解の欠落と構造的問題
SMFGが1兆円を投じてまで改善しようとしている本質的な課題──それは「顧客の意図を読めていない」という問題です。これは銀行業界だけの話ではなく、中小企業の現場でも規模を問わず同じ構造が起きています。
多くの経営者は「うちは顧客をよく知っている」と言います。しかし実際に現場をのぞくと、次のような情報が体系的に整理されていないことがほとんどです。
- なぜこの商品を選ばれたのか
- なぜ離脱したのか
- 本当に求めている価値は何か
- どんな言葉に安心し、どんな説明で不安になるのか
- LINE・電話・SNSなどでの問い合わせの“意図”の違い
つまり、現場の「感覚」と顧客の「実態」がズレたまま運営されているのです。
「感覚で分かっている」は事実とは違う
“長年やっているから分かっている”“お客様に直接会っているから大丈夫”──一見もっともらしい言葉ですが、これは危険です。顧客の行動や価値観は毎年変化し、情報経路も多様化しています。
- 電話では強気、LINEでは弱気
- 来店時の言葉とSNS投稿内容が矛盾している
- クレームの本質が「説明の順番」だけだった
- 高額商品を買わない理由が「予算」ではなく「不安」だった
このような事例は数えきれません。現場の“感覚”に頼った判断は一見当たっているように見えても、顧客理解が浅いため改善が「ズレた方向」に進む危険があります。
顧客理解の欠落が引き起こす4つの典型的な問題
中小企業でよく見られる問題は、すべて顧客理解の不足が原因です。
- 「売れない理由」の読み違え
値下げをしても売れないケースでは、本当の理由は「価値が伝わっていない」ことが多い。 - スタッフ間で顧客像がバラバラ
顧客理解が共有されず、対応が属人化しサービス品質が一定しない。 - 問い合わせの文脈を読み取れない
LINE・電話・DMなどの文面だけを読むと誤解につながり、機会損失が生まれる。 - 顧客の本音が蓄積されない
記録がないため改善活動が毎回ゼロからの出発となり、現場が疲弊する。
大企業が「顧客意図の解析」に巨額投資する理由
今回のSMFGの動きは単なるデジタル化ではありません。顧客が何を求めているのか、どの担当に振り分けるべきか、どこで困っているのか、どんな言葉が刺さるのか──これらを正確に数秒で解析する仕組みを作ろうとしています。つまり「顧客理解の深度」を機械の精度で補完する試みです。これは中小企業にも求められる視点です。
中小企業の課題は技術不足ではなく構造不足
私が現場で一貫して発信しているように、中小企業の課題は“AIを入れていないから生まれている”わけではありません。
- 顧客情報が散在している
- 一次情報を整理していない
- 記録がない
- 顧客像を定義していない
- スタッフ同士で認識がズレている
つまり顧客理解のための設計図がないのです。これこそが最大の課題であり、AI導入以前に「顧客をどう理解するか」の土台を作ることが先決です。
SMFGの動きは中小企業への静かな警鐘
今回のニュースは金融業界のデジタル投資にとどまりません。むしろ、
“顧客理解を深められる企業だけが選ばれる”未来が本格化する
というメッセージです。顧客理解は技術ではなく設計。そしてその設計が弱い企業は、どの業種でも取り残されていきます。
▶︎ [初めての方へ]
この記事は「経営ラボ」内のコンテンツから派生したものです。
経営は、数字・現場・思想が響き合う“立体構造”で捉えることで、より本質的な理解と再現性のある改善が可能になります。
▶︎ [全体の地図はこちら]
井村が実装するAIペルソナ壁打ち:顧客の意図を翻訳する技術
今回のSMFGのニュースが示しているのは、“顧客が言っていること”と“顧客が求めていること”は違うという本質です。これは銀行だけでなく、あらゆる業種で同じ構造が起きています。中小企業の現場でも顧客の「本音」と「表現」のズレによって改善が誤った方向に進むケースが多く見られます。
こうした課題に対し、私が現場で実装しているのが「AIペルソナ壁打ち」というアプローチです。これは単なるAI活用ではなく、顧客理解を構造化するための実践的な手法です。AIペルソナ壁打ちについては、以前の記事で詳しく述べております。

AIペルソナ壁打ちとは何か?
一言で言えば、顧客の会話・行動・背景情報をAIで構造化し、「その顧客ならどう反応するか?」をシミュレーションする技術です。主な材料は以下の通りです。
- 電話・LINE・対面などの顧客との会話ログ
- 現場で聞こえてくるリアルな悩みや断り理由
- スタッフが日々感じている「顧客の温度感」
- 継続してくれる人と離脱する人の違い
- 口コミやレビュー、SNSの投稿内容
これらをAIに投げ込むことで“その企業にとってのロイヤル顧客像”が立体的に浮かび上がります。そしてその顧客像をもとに、
- 「この提案はどう受け取られるか?」
- 「この接客はストレスになるか?」
- 「この料金変更は納得してもらえるか?」
といった“壁打ち”を行うのです。
MUFGと同じ方向性を中小企業規模で実現
大手金融機関が導入するAIは顧客の話す内容を解析し「意図」を翻訳する仕組みです。私が経営支援で提案するAIペルソナ壁打ちも本質は同じで、
“顧客が何に価値を感じ、何に反応し、何を嫌がるのか”
その深層をAIで読み解きます。規模は違えど、向かっている方向性は一致しています。
なぜ必要なのか──顧客の意図は読み違えやすい
多くの現場で顧客の意図は誤って解釈されがちです。例えば、
- 「高いから買わない」 → 実際は説明不足で納得できないだけ
- 「忙しいからまた今度」 → 本当は初回の印象が弱かっただけ
- 「検討します」 → 実は迷っているポイントが整理できていないだけ
こうした誤解を放置すると価格設定、接客方針、情報提供など多くの改善がズレたまま進みます。AIペルソナ壁打ちは「顧客側の文脈」を正しく翻訳する補助線を引くことができます。
スタッフ教育に共通言語を生む
AIペルソナ壁打ちのもうひとつの効用は属人化をなくすことです。現場には必ず、
- 顧客の“微妙な違い”に気づける人
- なんとなく上手く対応できる人
- 逆にどこでつまづいているのか分からない人
がいます。こうした個人差は経験値や感性によるものですが、AIペルソナ壁打ちで顧客像が可視化されればチーム内で認識が揃い、共通の判断軸が生まれます。結果として、
- 接客品質の均一化
- クレーム減少
- 顧客ロイヤル化のスピード向上
といった効果が現れます。
顧客理解を設計することが中小企業の競争力になる
AIを入れるかどうかではなく、重要なのは私が常に提唱しているように“顧客理解をどう設計するか”です。
- どんな顧客を深く理解したいのか
- どんな情報を集めると改善につながるのか
- どの顧客の声を最優先で拾うべきか
- どんな体験がリピートにつながっているのか
この設計が明確であればあるほどAIペルソナ壁打ちは大きな成果を生みます。逆に設計が曖昧だと、どれだけ技術を導入しても「効果が出ない企業」になります。
まとめ|差別化はデジタル投資ではなく届け方設計から始まる
SMFGの「3年間で1兆円」という巨額のデジタル投資は、大企業だからこそ実現できる規模感です。しかし、このニュースが中小企業にとって意味する本質は“お金をかければ勝てる”という話ではありません。
むしろ逆で、私が現場で一貫して語ってきたように、経営の差は「どんな技術を使うか」よりも「どう届けるかの設計があるか」で決まるという点に収れんしていきます。
SMFGが追求するのは体験価値の設計
SMFGが目指しているのは金利競争ではなく、
「顧客が迷わず使える便利さ」=体験価値の設計
ではないでしょうか。これは中小企業でもまったく同じ構造が起きています。
- AIを導入しても顧客理解が曖昧なら改善がズレる
- チャットボットを入れても質問設計が悪ければ不満が増える
- 接客マニュアルを作っても顧客像が曖昧なら使われない
- データを集めても活かす構造がないと意味がない
つまり技術はあくまで“設計の延長にある道具”でしかないのです。
SMFGも中小企業も共通して抱える課題
両者に共通するのは次のような課題です。
- 顧客の意図が読めない
- 情報が属人化している
- 改善の打ち手がズレている
- 経営判断が「感覚頼り」になっている
ここを動かすのが私が提唱する“届け方設計としてのCS”です。これは単なるカスタマーサービスではなく、
「顧客の意図をどう翻訳し、どう受け止め、どう届けるか」
という構造を企業の基盤にする考え方です。AIはその設計を強化するための手段に過ぎません。
中小企業にとっての再確認ポイント
今回のSMFGのニュースは、中小企業にとっても「技術競争では勝てない時代」を再確認させる出来事でした。差別化は巨額投資の有無ではなく、
“顧客をどれだけ深く理解できる設計を持てるか”
で決まります。そしてその設計は中小企業こそ最速で実装できます。なぜなら、現場に近く、顧客の声をすぐに拾えるからです。

コメント