
動画で見る経営プログレッションの記事説明
※この動画は「経営プログレッション」全記事に共通して掲載しています。
「地域資源を活かそう」。
観光計画や商店街の議論で、必ずと言っていいほど登場する言葉です。
しかし現実には、資源があるにもかかわらず選ばれなくなっている地域が少なくありません。
- 特産品もある
- 歴史もある
- 景観もある
それでも、
- 人が来ない
- 売上が伸びない
- リピーターが増えない
という状況が続いています。
PRを強化しても変わらない理由
多くの現場が陥るのは、
- 「もっとPRをしよう」
- 「もっと露出を増やそう」
という発想です。
しかし、情報発信を強化しても状況が変わらないケースは非常に多い。
なぜか。
“良いものがある”だけでは選ばれない時代になっているからです。
停滞する地域に共通する構造
観光、特産品、商店街。分野は違っても、停滞している地域には共通点があります。
資源が「並んでいるだけ」になっている。
素材としての価値はある。
しかし、
- 誰のためのものか
- どんな時間に意味を持つのか
- どのような体験として記憶されるのか
といった意味の設計がなされていません。
つまり、問題は資源の質ではなく、
資源に文脈が与えられていないことにあります。
これから必要なのは「活かす」ではなく「編集する」
これまでの地域振興は「資源を活かす」という言葉で語られてきました。
しかし今必要なのは、資源をそのまま出すことではなく、
- 組み合わせる
- 文脈を与える
- 体験として再構成する
つまり、「編集する」という発想です。
資源そのものを変える必要はありません。
変えるべきなのは、資源の置き方と使われ方です。
本稿で扱うこと
本稿では、
- 「資源はあるのに選ばれない地域」
- 「同じ資源で価値を生み直した地域」
この2つを比較しながら、
“活用”と“編集”の決定的な違いを整理していきます。
この記事を読むことで得られること
- 「資源はあるのに選ばれない」地域で起きている問題が、PR不足ではなく“設計不在”だと整理できます
- 「活かす」と「編集する」の違いを、失敗(A地域)と成功(B地域)の比較から具体的に理解できます
- 地域資源だけでなく、企業の“強み”も同じ構造で劣化することがわかり、明日からの見直し視点が手に入ります
まず結論:資源は“ある”だけでは価値にならず、文脈の中で編集されて初めて「選ばれる理由」になります。
失敗ケース(A地域)|“ありのまま”を掲げ続けた地域
A地域は、典型的な「資源はある」観光地でした。
特産品もあり、歴史的な街並みもあり、自然景観も評価されている。
行政資料やパンフレットには魅力的な写真が並び、
関係者の共通認識も明確でした。
- 「うちは良いものがある」
- 「本物を出している」
- 「わかる人にはわかる」
この言葉自体は間違っていません。
実際に素材の質は高く、来訪者の満足度も低くはありませんでした。
問題は、その先に“設計”が存在しなかったことです。
情報発信は「紹介」で止まっていた
A地域の情報発信の中心は、資源そのものの紹介でした。
- 名産品の説明
- 歴史の解説
- 景観の写真
しかしそこには、
- どのような目的で訪れると価値が高まるのか
- どの季節・時間帯に来ると体験が変わるのか
- 誰と来ると意味が深まるのか
といった「来訪理由の設計」がありませんでした。
結果として起きた現象
- 初回訪問は一定数ある
- しかし再訪が伸びない
- 若年層が定着しない
- 滞在時間が短い
- 消費単価が上がらない
来訪者の声には不満はありません。
- 「良かったです」
- 「きれいでした」
といった評価は得られている。
それでも次の訪問の理由にはならないのです。
売上は大きく落ち込むわけではないものの、横ばいから微減を続けました。
関係者は「PRが足りないのでは」と考え、パンフレットを増やし、SNS発信を強化。
しかし、状況は変わりませんでした。
本質は「資源の不足」ではなく「資源の置かれ方」
A地域では、資源はただ「並べられているだけ」でした。
来訪者にとっての意味や文脈が設計されていないため、
資源は評価されても選ばれる理由にはならない。
つまり、A地域は
資源は存在しているが、“選ばれる理由”が存在していない状態
に陥っていたのです。
成功ケース(B地域)|地域資源を“編集”した地域
B地域も、資源の条件はA地域とほぼ同じでした。
特産品があり、自然があり、歴史もある。
いわゆる「観光素材」は揃っていました。
違っていたのは、資源の捉え方です。
B地域では、資源を「完成品」ではなく、“素材”として再定義しました。
資源を「文脈の中で配置」した
名産品は単体で売るものではなく、
- 誰が作っているのか
- どの時間帯に食べると価値が変わるのか
- どの景観と組み合わせると記憶に残るのか
といった文脈の中で再配置されました。
たとえば同じ食でも、
- 昼:回遊の途中で気軽に食べる軽体験
- 夕:地元の人と会話しながら味わう滞在体験
- 朝:景観と組み合わせた静かな時間の体験
というように、時間帯ごとに意味が変わる設計がされました。
来訪動機ごとに体験を組み替えた
B地域では、来訪者の目的に合わせて体験を編集しました。
- 一人旅:静かな滞在と対話
- 友人同士:写真と回遊性
- 家族連れ:短時間でも満足できる導線
同じ資源でも、
「誰が」「なぜ」「いつ」使うかによって役割を変えたのです。
“人”も資源として編集した
地域の人の存在も資源として組み込まれました。
単なる接客ではなく、
「この時間に来るとこの人に会える」
という体験が設計され、来訪理由が“人”に紐づき始めました。
変えたのは「資源」ではなく「意味付け」
重要なのは、資源そのものは変えていないことです。
変えたのは、
資源の組み合わせ方と意味付け
でした。
その結果、起きた変化
- 滞在時間が伸びる
- 客単価が上がる
- 再訪理由が生まれる
- 紹介が増える
B地域は、資源を増やしたわけでも、
新しい施設を大量に作ったわけでもありません。
行ったのは、資源を編集し、体験として再配置したこと。
同じ素材でも、
編集されることで「選ばれる理由」になるのです。
現場の物語|「この資源、どう見せれば伝わる?」
語り手は、地元で小さな飲食店を営む若手事業者の方です。
観光協会のプロジェクトに関わり始めたばかりの頃、彼の口癖はこうでした。
「うちの食材は本当にいいんです」
実際に品質は高く、地元でも評判の素材を使っていました。
しかし観光客の反応はどこか薄い。
- 「おいしいですね」とは言われるが、印象に残っていない
- 写真も撮られない
- 再訪の話にもつながらない
最初は「価格が高いのかもしれない」「立地が悪いのかもしれない」と考え、
値段を調整したり、看板を変えたりしましたが、状況は変わりませんでした。
転機:資源を“編集する”という発想との出会い
転機になったのは、地域全体で「資源の編集」という考え方を学んだときでした。
同じ料理でも、
- 出す時間帯を変える
- 景色の見える席で提供する
- 提供前に生産者の話を一言添える
- 食べる順番を設計する
それだけで、お客の反応が明らかに変わりました。
「この時間にこれを食べるのがいいですね」
「さっき見た景色とつながっている感じがします」
「友達にも勧めたいです」
同じ食材、同じ調理法でも、
見せ方と組み合わせで意味が変わったのです。
「ただの名物」から「この町の体験」へ
彼が特に印象的だったと語るのは、ある来訪者の言葉でした。
「これ、ただの名物じゃなくて、この町の体験ですね」
その瞬間、彼の中で資源の位置づけが変わりました。
それまで資源は「誇り」。
守るべきもの、評価されるべきもの。
しかし編集発想を知ってからは、資源は「対話の素材」になりました。
- どう見せるか
- 誰に届けるか
- どの体験と組み合わせるか
を考えることで、お客との会話が生まれ、記憶に残る体験になっていきました。
変わったのは“資源”ではなく“使い方”
彼はこう言います。
「資源は変わっていないんです。変わったのは、自分の使い方でした」
人が変わったのではなく、
資源との向き合い方が変わったことで、現場の手応えが大きく変わったのです。
比較と学び|“活用”と“編集”の決定的違い+ つなぐシート(地域資源編集版)
A地域とB地域の違いは、資源の“質”ではありません。
資源をどう捉え、どう使っていたかという設計思想の違いでした。
▼ 構造比較
| 観点 | A地域 | B地域 |
|---|---|---|
| 資源認識 | 完成品 | 素材 |
| 提供方法 | 単体紹介 | 体験設計 |
| 顧客理解 | 人数・属性 | 来訪動機・文脈 |
| 改善軸 | PR強化 | 意味編集 |
A地域の前提と限界
A地域は、
「良いものがある → 知ってもらえば売れる」
という前提で動いていました。
そのため施策は、
- 露出を増やす
- パンフレットを作る
- SNSで紹介する
といった発信強化に集中します。
しかし、
- 何の文脈で
- どのタイミングで
- どんな目的で
消費されるのかは設計されていませんでした。
B地域の発想:資源は“素材”である
B地域は資源を「完成品」ではなく、
“組み合わせ可能な素材”として扱いました。
- 朝の景観 × 軽食
- 夕方の散策 × 甘味
- 雨の日 × 屋内体験
資源単体ではなく、
体験の中の役割として配置したのです。
つなぐシート(地域資源編集版)とは
この違いを現場で扱うために導入されたのが、
つなぐシート(地域資源編集用)です。
目的はひとつ。
資源が「どの文脈で」「どの意味で」使われたかを蓄積すること。
評価ではなく、使われ方の記録です。
▼ シート構造(最小形)
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 | F列 | G列 | H列 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 項目 | 来訪動機 | 同行形態 | 資源への反応(原文) | 行動反応 | 消費された文脈 | 組み合わせ資源 | 再編集アイデア | 試行結果 |
| 入力形式 | 選択+短文 | 選択 | 短文(そのまま) | 選択+短文 | 選択+短文 | 選択+短文 | 短文(仮説でOK) | 短文 |
| 意図 | 「なぜ来たか」を固定する | 体験の型を分ける | 加工せず“生の声”を残す | 記憶の残り方を可視化する | 時間・季節・天候で意味が変わる | 体験として再構成する素材を集める | 次の配置・語り口を作る | 反応の変化を拾う |
▼ 選択肢例(運用を止めない最小セット)
| カテゴリ | 選択肢例 |
|---|---|
| 来訪動機 | 食/景観/体験/休息/学び・背景/非日常/効率・手軽さ |
| 同行形態 | 一人/友人/家族/カップル/団体 |
| 行動反応 | 写真を撮る/会話が生まれる/滞在が伸びる/購入が発生/紹介が出る |
| 消費された文脈 | 朝/昼/夕/季節(春夏秋冬)/天候(晴・雨・暑・寒)/前後導線(回遊の途中・締め・寄り道) |
▼ 記入イメージ(1行=1件の“編集ログ”)
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 | F列 | G列 | H列 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 景観 | 一人 | 「静かで落ち着きます」 | 滞在が伸びた | 朝/晴/回遊の途中 | 朝の景観×軽食 | “朝だけの一言ガイド”を追加 | 会話が増え、写真も撮られた |
■ 記入のポイント
- 1件あたり30秒以内で書ける粒度
- 評価コメントは禁止(良い/悪いを書かない)
- “使われ方”だけを記録する
つなぐシートは、資源を管理するツールではありません。
資源がどのように生きたかを記録し、次の体験を設計するための編集台帳です。
つまり、資源の価値判断ではなく、
文脈との接続ログを蓄積します。
■ B地域で見えてきた変化
このシートを運用した結果、
資源の「人気ランキング」はほとんど意味を持たなくなりました。
代わりに見えてきたのは、
- どの時間帯に強いか
- 誰と来たときに反応が出るか
- どの体験と組み合わせると記憶に残るか
という役割分担です。
資源は主役にも脇役にもなり、
体験全体の中で機能し始めました。
■ 学び
A地域は資源を“並べて”いた。
B地域は資源を“配置して”いた。
A地域は資源を“説明”していた。
B地域は資源を“体験に変換”していた。
資源はそれ自体で価値を持つのではなく、
文脈の中で意味を持つのです。
つなぐシートは、資源を管理するツールではありません。
資源がどのように生きたかを記録し、次の体験を設計するための編集台帳です。
資源を活かすとは、守ることではなく、
使われ方を設計し続けることなのです。
中堅・大企業への展開視点|“強み”も編集されなければ劣化する
この構造は、観光や地域資源だけの話ではありません。
企業におけるコア技術や主力商品にもそのまま当てはまります。
多くの企業はこう言います。
- 「うちはこの技術が強い」
- 「この商品でここまでやってきた」
しかし市場側の文脈が変われば、
同じ強みでも意味は変わります。
かつては差別化要因だったものが、今では“当たり前”になっている。
あるいは、顧客の評価軸そのものが変わっている。
それでも企業側は、強みを固定資産のように扱い続けます。
- 守るべきもの
- 変えてはいけないもの
として扱ってしまうのです。
その結果、
強みは残っているのに選ばれない
という現象が起きます。
これは地域の名物が売れなくなる構造と同じです。
必要なのは「強みを捨てること」ではなく「編集し直すこと」
強みを捨てる必要はありません。
必要なのは、強みを編集資源として扱い直すことです。
つまり、
- どの顧客文脈で使われているのか
- どの課題と結びついているのか
- どの体験の中で意味を持つのか
を再設計する必要があります。
ここで重要な3つのポイント
■ 意味の再設計
技術や商品を「何ができるか」ではなく、
誰のどんな状況で価値になるかに翻訳すること。
■ 文脈の更新
従来の用途だけでなく、
新しい使われ方・組み合わせ方を設計すること。
BtoBであれば、顧客の業務プロセスの中でどの位置に置かれるかを見直します。
■ 顧客との再接続
強みを説明するのではなく、
顧客の課題や目的と接続し直すこと。
ここで初めて“選ばれる理由”になります。
強みは放置すれば劣化し、編集すれば価値を生み続ける
強みは放置すると、
「既存の説明」に閉じ込められ、市場の変化とともに意味が劣化します。
しかし編集され続ければ、
同じ強みでも新しい価値を生み続けることができます。
地域資源と同じように、企業の強みもまた、
守るものではなく、問い直し続ける編集対象なのです。
まとめ+読者への問い
資源は、あるだけでは価値になりません。
評価が高いことと、選ばれることはまったく別の話です。
選ばれる資源とは、
- 文脈の中に配置され、
- 体験として設計され、
- 意味を持って消費されるもの
つまり価値は、資源そのものの中にあるのではなく、
編集された関係性の中に生まれるのです。
価値が生まれるのは「設計」されたとき
これはPRの問題ではありません。
露出を増やすことでも、説明を増やすことでもなく、設計の問題です。
どの時間に、
どの来訪動機で、
どの体験と組み合わされ、
誰の記憶に残るのか。
そこまで設計されて初めて、
資源は“選ばれる理由”になります。
問い
あなたの地域(会社)の資源は、
👉 素材のまま並べられていませんか?
それは、
👉 誰のどんな時間に意味を持つよう設計されていますか?
そしてその資源は、
次の10年も「編集され続ける」前提になっていますか。

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