
動画で見る診断ノートの記事説明
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ことしの春闘で、賃上げ率は平均5.26%となり、3年連続で5%台を維持しました。
一方で、中小企業に限ると5.05%にとどまり、連合が掲げる「6%以上」には届いていません。
数字だけを見ると、賃上げは着実に進んでいるように見えます。
しかしその内側では、大企業と中小企業の間で明確な差が生まれています。
表面的には「賃上げが続いている」というニュースです。
しかし本質はそこではありません。
問われているのは、
賃上げできるかどうかは、意思の問題なのか、それとも構造の問題なのかという点です。
多くの中小企業は、賃上げをしたくないわけではありません。
むしろ「上げたい」と考えている経営者は多いはずです。
それでも上げられない。
これは景気の問題でも、努力不足でもなく、
賃上げを支える構造の違いによって生まれている現象です。
春闘の数字の裏側には、
中小企業の経営そのものに関わる課題が表れています。
この記事を読むことで得られること
- 春闘の賃上げ率の数字から、大企業と中小企業のあいだにある構造的な差が整理できます
- 賃上げが「意思」ではなく「利益構造の結果」で決まる理由が見えてきます
- 中小企業が今後向き合うべき課題が、賃上げそのものではなく“賃上げできる状態づくり”にあると理解できます
まず結論:賃上げは経営者の気合いや意思だけで実現できるものではなく、価格・利益・生産性を含めた経営全体の構造が整ってはじめて実現できる結果です。
何が起きているのか(事実整理)
連合がまとめた今年の春闘の集計結果によると、これまでに回答が示された1100組合の平均賃上げ額は月額1万7687円。
率にすると5.26%で、賃上げ率が5%台となるのは3年連続です。
前年と比べると、額で141円、率で0.2ポイントとわずかに下回っていますが、全体としては高い水準の賃上げが続いています。
■中小企業は5%台だが目標未達
一方で、中小企業に限ると状況は異なります。
従業員300人未満の企業では、552組合の平均で月額1万4300円、率にして5.05%の賃上げ。
こちらも前年より微減しており、連合が掲げる「6%以上」には届いていません。
■非正規は6.89%の上昇だが、こちらも目標未達
非正規雇用では、104組合の平均で時給84円余りの引き上げ。
前年より約9円上回り、率にすると6.89%と比較的高い水準です。
しかし、こちらも目標とされる7%にはわずかに届いていません。
■数字が示す構造的な差
全体では5%台の賃上げが継続。
一方で中小企業は目標未達。
非正規は上昇傾向だが、こちらも目標には届かず。
数字を整理すると、賃上げは進んでいるものの、
企業規模や雇用形態による差が明確に存在していることが見えてきます。
なぜ賃上げが続くのか
賃上げが3年連続で5%台となっている背景には、いくつかの構造的な要因があります。
■最大の要因:人手不足
少子化の影響もあり、労働力人口は長期的に減少しています。
特に若年層や専門人材の確保は難しく、企業にとって「人を採ること」自体が競争になっています。
この状況では、賃金は単なるコストではなく、
人材を確保するための条件
になります。
賃上げをしなければ採用できない、あるいは人が定着しないという現実があり、企業は賃金水準を引き上げざるを得ません。
■もう一つの要因:インフレ
物価上昇が続く中で、実質賃金の低下が社会問題として認識されるようになりました。
生活コストが上がる中で賃金が据え置かれれば、働く側の負担は大きくなります。
そのため賃上げは、企業単体の判断ではなく、
社会全体の流れとして進められている
という側面があります。
政府や労働組合も「賃上げを前提とした経済運営」を意識し始めており、企業にもその圧力がかかっています。
■賃上げは“構造的に避けられない”状態
つまり現在の賃上げは、景気が良いから起きているというよりも、
👉 人手不足とインフレによって“賃上げせざるを得ない構造”が生まれている
と捉えることができます。
企業の意思ではなく、構造が賃上げを強制している。
これが今の日本の賃金動向の本質です。
なぜ中小はできないのか
一方で、中小企業では賃上げが進みにくい現実があります。
その理由はシンプルですが、極めて構造的です。
■最大の壁:価格転嫁の難しさ
原材料費や人件費が上昇しても、それをそのまま販売価格に反映できるとは限りません。
取引先との力関係や市場競争の中で、値上げが難しいケースが多くあります。
特に下請構造にある企業では、価格は発注側によって決められることが多く、
自社のコスト上昇を価格に反映する余地が限られています。
■利益率の低さという構造的制約
中小企業の多くはもともと利益率が高くありません。
そのため、賃上げの原資となる利益を確保しにくい状況にあります。
売上はあっても利益が薄い。
その状態で人件費を上げれば、すぐに経営を圧迫します。
結果として、
- 賃上げしたいができない
- 人を確保したいが原資がない
という状況に陥ります。
■意思ではなく“構造”の問題
中小企業にとって賃上げは、経営者の意思の問題というよりも、
👉 価格と利益の構造に制約されている問題
です。
賃上げをしたくてもできない。
このギャップこそが、大企業との賃金格差を生み続ける根本要因になっています。
構造問題:賃上げは利益構造で決まる
ここまでを整理すると、賃上げの可否は「意思」ではなく「構造」によって決まっていることが見えてきます。
賃上げは、最終的には利益からしか生まれません。
売上があっても、利益が残らなければ人件費は上げられません。
■利益はどこで決まるのか
企業の利益構造は、次の要素の組み合わせで決まります。
- 価格をどれだけコントロールできるか
- 原価をどれだけ管理できるか
- 生産性をどれだけ高められるか
大企業は、ブランド力・市場支配力・規模のメリットによって、
価格転嫁がしやすい構造を持っています。
一方で中小企業は、取引関係や競争環境の中で価格を上げにくく、
利益を確保しにくい構造に置かれています。
■同じ「賃上げ」でも結果が分かれる理由
その結果、同じ賃上げというテーマでも、
- できる企業
- できない企業
が生まれます。
👉 問題は賃上げそのものではなく、利益が残る構造を持っているかどうか。
賃上げは結果です。
その前提には必ず、利益構造があります。
診断士視点:賃上げは結果である
現場でよく聞く言葉があります。
- 「賃上げしたいが余裕がない」
- 「人を確保するために上げないといけないが厳しい」
どちらも現実です。
しかし、この問いをそのまま捉えると、議論は行き詰まりやすくなります。
診断士として現場を見ると、賃上げは単独の意思決定ではありません。
👉 賃上げは結果です。
価格設定、原価管理、生産性、顧客との関係、事業の設計。
これらすべての積み重ねの先に、最終的に「賃上げできるかどうか」が決まります。
つまり、
賃上げをするかどうかではなく、賃上げができる状態になっているかどうか。
ここが本質です。
無理に賃上げをすれば、短期的には人件費が増え、経営を圧迫します。
一方で、構造を変えずに賃上げを先送りすれば、人材確保が難しくなります。
だからこそ問われるのは、
賃上げという結果を生み出せる設計になっているかどうか。
経営とは、
結果を直接操作することではなく、
結果が生まれる構造を整えること。
賃上げも、その例外ではありません。
中小企業の対応
では、中小企業はこの状況にどう向き合うべきでしょうか。
前提として、賃上げの流れは一時的なものではなく、今後も続く可能性が高いと考えられます。
つまり、
「賃上げするかどうか」ではなく、どうすれば賃上げできる状態をつくれるかが問われています。
■価格の見直し
値上げが難しい市場であっても、すべての価格が固定されているわけではありません。
商品やサービスの内容、提供方法、顧客層を見直すことで、価格を再設計する余地はあります。
■生産性の改善
同じ人数でより多くの付加価値を生み出せるかどうかは、賃上げの原資に直結します。
- 業務プロセスの見直し
- IT・デジタルツールの活用
- 工程の整理・標準化
こうした小さな改善の積み重ねが、生産性向上につながります。
■“売らないもの”を決める
利益が出にくい商品や業務を見直し、経営資源を集中させることで、全体の収益性を高めることができます。
「何をやるか」だけでなく、
「何をやめるか」を決めることも重要です。
■顧客との関係性の再構築
単なる価格競争から抜け出し、継続的に選ばれる関係を築ければ、価格の自由度は高まります。
- 価値に基づく取引
- 長期的な関係構築
- 価格以外の強みの明確化
■賃上げは経営全体の設計の結果
いずれも短期的に大きな効果が出るものではありません。
しかし、こうした積み重ねによって初めて、賃上げが可能な構造が生まれます。
賃上げは単独の施策ではなく、
👉 経営全体の設計の結果として実現されるものです。
まとめ|賃上げできる会社になるか
今年の春闘は、賃上げが続いていることを示す一方で、企業の間にある差も明確に映し出しました。
大企業は賃上げを継続できる。
中小企業は目標に届かない。
この違いは、意思や努力の差ではありません。
👉 構造の差です。
賃上げは単なるコストではなく、企業が持つ利益構造の結果として現れます。
だからこそ問われているのは、
賃上げをするかどうかではなく、
👉 賃上げできる会社になっているかどうか。
人手不足とインフレの中で、賃上げは避けて通れないテーマになっています。
そのとき、目の前の数字だけを見るのではなく、
その数字を支える構造に目を向けられるか。
■最後の問い
あなたの会社は、
賃上げを「頑張るもの」として捉えていますか。
それとも、
賃上げができる状態を設計していますか。

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