単価はそこそこなのに利益が残らない─町工場にとっての「限界利益率」【会計数値の糸口から / PL-第3回】 | ソング中小企業診断士事務所

単価はそこそこなのに利益が残らない─町工場にとっての「限界利益率」【会計数値の糸口から / PL-第3回】

単価はそこそこなのに利益が残らない─町工場にとっての「限界利益率」

PLうさぎ

PL担当:うさぎ
「仕事はあるし、単価もそこそこ。なのに利益がほとんど残らない……」
そんな声を、町工場の経営者さんからよく耳にします。
その原因を数字で映すのが 限界利益率。
売上から変動費を引いた“利益の源泉”がどれくらい残るのかを示す数字です。
限界利益率が低いままだと、忙しく働いても利益は増えません。
今回は、地域密着型の町工場を舞台に、この数字が映す「儲かる構造」と「儲からない構造」の違いを、私と一緒に見ていきましょう。

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
記事・ツール・コラム・思想─すべては一つの設計思想から生まれています。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

経営相談の窓口から
失敗事例の切り口から
会計数値の糸口から

現場の声を起点に、課題の本質を捉える入口。
今日から動ける“実務の手がかり”を届けます。

時事・構造

診断ノート
経営プログレッション
 

経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

思想・感性

日常発見の窓口から
迎える経営論
響く経営論

見えない価値や関係性の温度に光を当てます。
感性と論理が交差する“気づきの場”です。

実装・仕組み

わかるシート
つなぐシート
みえるシート

現場で“動く形”に落とし込むための仕組み群。
理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

町工場モデルで学ぶ限界利益率と赤字構造のポイント

限界利益率の定義と計算式

限界利益率とは、売上高から変動費(材料費・外注費など)を差し引いた利益が、売上高に対してどれだけ残るかを示す指標です。

  • 限界利益=売上高−変動費
  • 限界利益率=限界利益÷売上高×100(%)

モデルケース:精密部品加工会社の損益構造

項目 金額 備考
月間売上 1,000万円 単価3,000円〜2万円の金属部品
材料費(変動費40%) 400万円 原材料費
外注費(変動費15%) 150万円 部品加工委託
固定費 500万円 人件費・家賃など
  • 変動費合計:400万円+150万円=550万円
  • 限界利益:1,000万円−550万円=450万円
  • 限界利益率:450万円÷1,000万円×100=45%
  • 営業利益:450万円−500万円=▲50万円(赤字)

数値で読み解く赤字のメカニズム

  • 限界利益率45%では月500万円の固定費を吸収できずに赤字
  • 受注量が多くても変動費が増えるだけで利益につながりにくい
  • 売上増加だけでは限界利益率を変えられず、黒字化が困難

黒字化のカギとなる損益分岐点の算出方法

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

  • 500万円÷0.45≒1,111万円
  • 現在の売上(1,000万円)との差額111万円を上回る増収が必要

ペルソナ:地域密着型の精密部品加工会社の社長

今回の主人公は、従業員12名の精密部品加工会社を営む社長。
自動車や産業機械の部品を製造し、取引先は地元企業と長年の付き合いがあります。

  • 年商:1億2,000万円
  • 主力製品:金属部品(単価3,000円〜2万円)
  • 材料費:売上の40%
  • 外注加工費:売上の15%
  • 人件費や家賃などの固定費:月500万円

限界利益率改善で黒字化を実現する経営改善の4つの戦略

売上はあるのに利益が残らない構造を転換するには、単に売上を伸ばすだけではなく、利益が残る仕組みを作る必要があります。以下の4つの視点から、限界利益率を高める具体的な改善策をご紹介します。

高付加価値案件比率向上で利益構造を強化

  • 単価が高く、材料費や外注費が抑えられる製品を拡充することで限界利益率を引き上げる
  • 既存取引先へ高付加価値提案を行い、受注単価と利益率を同時に改善する

実践例:

  • 加工精度や短納期対応を武器に難易度の高い部品加工を受注
  • 設計段階から顧客と連携し、価値ある製品仕様を共同開発

原材料費削減による限界利益率アップ

  • 仕入れ先との価格交渉や共同購買で材料コストを低減する
  • 加工ロスを抑える歩留まり改善や廃材再利用で変動費を削減する

実践例:

  • 材料の寸法最適化で切削ロスを削減
  • 切れ端を治具や試作品に再活用しコストゼロ化

外注費内製化で利益率を最大化

  • 外注していた工程を社内に取り込み、外注費を削減する
  • 小ロット・短納期対応を可能にする設備投資と作業標準化を推進する

実践例:

  • 汎用機械を導入して社内で簡易加工を完結
  • 作業手順書を整備し、誰でも一定品質で加工できる仕組みを構築

生産計画最適化でコスト効率化を図る

  • 段取り替えや稼働ムラを減らし、稼働率を平準化する
  • 受注タイミングや納期を調整し、同系統製品をまとめて生産する

実践例:

  • 稼働率を見える化し、閑散期の受注を積極的に獲得
  • 顧客と納期調整することで段取り回数を削減し工数を圧縮

数字を活用した損益分岐点管理で戦略的受注

限界利益率を月次で計算し、固定費とのバランスから損益分岐点を把握することで、「あといくら売上を伸ばせば黒字化できるか」が明確になります。

ツール活用例:「わかるシート
売上と変動費を入力するだけで限界利益率と損益分岐点が自動算出され、改善の方向性が可視化されます。

町工場の「見える経営」に変える数字活用ステップ

「数字を見てもよく分からない」「会計は税理士任せ」──そんな声を一歩前に進めるには、数字を“経営の言語”として味方につけることが不可欠です。ここでは、町工場がすぐに始められる4つの具体的ステップをご紹介します。

限界利益率を把握して利益構造を可視化

  • 売上に対してどれだけ利益が残るかを示す「限界利益率」を算出
  • 例:売上100万円・材料費40万円・外注費15万円 → 限界利益45万円 → 限界利益率45%
  • この数字が分かれば「あといくら売れば黒字か」が一目でわかる

実践ポイント:

  • 月次の売上・材料費・外注費を集計するだけ
  • Excelや「わかるシート」などで簡単に自動計算

損益分岐点で黒字ラインを明確化

  • 限界利益が固定費をちょうどカバーする売上を「損益分岐点」として設定
  • 例:固定費30万円・限界利益率50% → 損益分岐点60万円
  • 損益分岐点を超えれば黒字、下回れば赤字と経営判断の基準になる

実践ポイント:

  • 人件費・家賃・減価償却など固定費をざっくりでも把握
  • 毎月更新し、目標売上に反映する習慣をつける

数字で振り返る習慣を定着させる

  • 月末に「売上」「変動費」「限界利益」「損益分岐点」を一覧で確認
  • 感覚ではなく実績の数字で、「忙しかったけれど利益が少ない」原因を明らかにする
  • 改善点を洗い出し、次月に向けた具体策を検討する

実践ポイント:

  • 社内ミーティングで数字を共有し、全員で課題を議論
  • 改善施策の進捗を毎月チェックしてPDCAを回す

数字を使った意思決定で経営精度を高める

  • 受注判断:見積もりベースで限界利益率を試算し、利益に見合う案件を選別
  • 設備投資:回収期間や追加利益を数字でシミュレーションして優先度を決定
  • 人員配置:稼働率や利益率が高い工程にリソースを集中させる

実践ポイント:

  • 新規案件はまず限界利益率を試算し、不採算リスクを回避
  • 投資判断は複数パターンでシミュレーションし、最適案を採用

数字は経営の地図

数字を味方にすれば、経営は「勘と経験」から「戦略と根拠」へと進化します。まずはざっくりでも構いませんので、数字で考える習慣を今すぐスタートしましょう。

おすすめツール:「わかるシート
売上・変動費・固定費を入力するだけで、限界利益率・損益分岐点・利益予測が自動で見える化。数字に苦手意識がある方でも直感的に使えます。

町工場経営の結び:数字活用で利益構造を再設計する旅の始まり

町工場の経営は、日々の忙しさに追われる中で感覚的に「なんとなく黒字」「なんとなく赤字」と判断しがちです。しかし、限界利益率という数字のレンズを通すことで、経営の本質が明らかになります。限界利益率を高めることは単なる数値の改善ではなく、儲かる構造を設計し直す未来への意思表示ともいえます。

これまでのポイントを振り返る

視点 具体的な改善策 期待される効果
限界利益率の把握 売上から変動費を引いて算出 利益構造の見える化
高付加価値案件の比率向上 単価が高く原価率が低い仕事を増やす 利益率の向上
材料費・外注費の見直し 歩留まり改善・内製化 コスト削減による利益増
損益分岐点の見える化 固定費と限界利益率から算出 黒字ラインの明確化
数字で振り返る習慣 月次で利益構造を確認 感覚経営からの脱却

経営者への問いかけ:現状を見つめ直す

「あなたの工場は、“忙しいだけの経営”から、“利益が残る経営”へと舵を切れていますか?」

「数字を見て、次の一手を打てる準備はできていますか?」

この問いかけが、経営者自身の現状分析と次のアクションを生み出すきっかけになります。数字を味方にすれば、経営は迷いから確信へと変わります。

行動への一歩:数字を味方にするための具体アクション

  • 月次の限界利益率を社内で共有し、全員で数値感覚を合わせる
  • わかるシート」で利益構造を見える化し、改善ポイントを全員で共有
  • 社内勉強会を開催し、会計・損益分岐点・限界利益率の見方を学ぶ

持続可能な町工場経営は設計できる

外部環境に左右されやすい町工場経営でも、利益構造は自ら設計可能です。数字を味方にし、改善の糸口をつかみ、利益が残る仕組みを築く。それが持続可能な経営への第一歩です。

数字の裏側にある悩みは、決してあなただけのものではありません。
もし「うちも同じかもしれない」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
現場の声を丁寧にお聴きしながら、数字を“味方”に変える具体的な一歩を一緒に見つけていきましょう。


なお、本記事で触れた会計指標をはじめ、経営に欠かせない数字をシンプルに見える化できるのが、
当事務所オリジナルの 「わかるシート」 です。
あなたのお店や会社の数字を、すぐに“自分ごと”として把握できる仕組みをご提供しています。

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