人を増やしたのに楽にならない─サービス業にとっての「一人当たり売上」【会計数値の糸口から / PL-第10回】 | ソング中小企業診断士事務所

人を増やしたのに楽にならない─サービス業にとっての「一人当たり売上」【会計数値の糸口から / PL-第10回】

人を増やしたのに楽にならない─サービス業にとっての「一人当たり売上」【会計数値の糸口から / PL-第10回】

PLうさぎ

PL担当:うさぎ
人も増やした。それなのに、なぜか経営は楽にならない。

むしろ、

・管理することが増えた
・現場はバタバタしている
・自分の仕事だけ減らない
そんな感覚はありませんか?

「人を増やせば楽になる」
多くの経営者が、一度はそう考えたことがあるはずです。けれど現実は、思ったほど楽にならない。
この“ズレ”の正体こそが、
「一人当たり売上」 という指標に表れます。

一人ひとりが、どれだけ売上を生み出せているのか。
頑張りではなく、経営構造そのものを映し出す数字です。

本稿では、
「人を増やしても楽にならない会社」と
「少人数でも回る会社」の違いを、
生産性という視点から読み解いていきます。

数字は冷たいものではありません。
むしろ、あなたの経営の“詰まりどころ”を正直に教えてくれる存在です。

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この記事を読むことで得られること

  • 「一人当たり売上」が、頑張りではなく“経営構造”を映す指標だと整理できます
  • 人を増やしても楽にならない理由(属人化・教育不在・仕組み不足など)の正体が見えてきます
  • 採用より先にやるべき「設計」の見直しと、わかるシートでの可視化手順が掴めます

まず結論:人を増やすことが成長ではなく、成長とは「一人の価値を高める設計」ができている状態であり、その答えは一人当たり売上に表れます。

1|一人当たり売上とは何か

まず、この指標の定義から整理しましょう。

一人当たり売上 = 売上高 ÷ 従業員数

とてもシンプルな式です。
会社全体の売上を、働いている人数で割るだけ。

それだけなのに、
この数字には経営の本質が凝縮されています

■ この数字が見ているもの

一人当たり売上が示しているのは、

「人が、どれだけ価値を生み出せているか」

という一点です。

ここで大切なのは、
「誰が頑張っているか」ではありません

  • 長時間働いているか
  • 残業しているか
  • 忙しそうか

そうした“頑張り感”は、
この数字には一切関係ありません。

見ているのは、頑張りではなく構造です

つまり、

  • 仕事の設計
  • 役割分担
  • 仕組みの作り方
  • ムダの多さ
  • 意思決定の速さ

そうした“会社の作り”そのものが、
一人当たり売上にそのまま表れます

■ 人件費率とは何が違うのか

ここで、よく混同される指標があります。
それが人件費率です。

人件費率は、

売上に対して
人件費がどれくらいかかっているか

を見る指標でした。

一方、
一人当たり売上は逆の視点です。

一人あたり
どれくらい売上を生み出しているか

つまり、

  • 人件費率 → コスト視点
  • 一人当たり売上 → 生産性視点

同じ「人」に関する数字でも、
見ている方向がまったく違います

■ 本質は「人数」ではなく「使い方」

ここが一番重要なポイントです。

一人当たり売上が教えてくれるのは、

人が多いか少ないか
ではありません

そうではなく、

人をどう使っているか

です。

  • 本来1人でできる仕事に3人使っていないか
  • 判断待ちで手が止まっていないか
  • 属人化で回っていないか
  • ムダな会議や報告に時間を取られていないか

こうした“見えないロス”が、
すべてこの数字に集約されます

だからこそ、

👉 「人の数」ではなく
人の“使い方”を映す指標

と言えるのです。

人を増やす前に、
まず見るべきはこの数字

一人当たり売上は、
「今の組織構造で、
どれだけ効率よく価値を生めているか」

冷静に突きつけてくれます。

2|企業概要・状況説明(ペルソナ設定)

今回のモデルケースは、
地方でサービス業を営む中小企業です。

■ 会社の基本情報

  • 業種:地域密着型のサービス業
     (例:整骨院、学習塾、清掃、介護、ITサポートなど)
  • 従業員数:15名
  • 売上:ここ数年、右肩上がり
  • 事業歴:10年以上

3年前、
業績好調を背景に人員を倍増しました。

「人を増やせば、
 もっと仕事を回せるはず」
「現場が楽になるはず」

そんな期待を持っての増員です。

■ しかし現実は…

確かに売上は伸びました。
問い合わせも増え、現場も忙しい。

ところが――

  • 利益はほぼ横ばい
  • 経営者の手元に残るお金は増えていない
  • 月末になると資金繰りが気になる

「売上は伸びているのに、
 なぜか楽にならない」

そんな違和感を、
経営者は強く感じています

■ 経営者の本音

実際に聞こえてくる声は、こんな感じです。

  • 「とにかく毎日忙しい…」
  • 「管理する仕事が増えて、現場に出られない」
  • 「人は増えたけど、手応えは薄い」
  • 「給与も上げたいが、余裕がない」
  • 「結局、自分が一番働いている気がする」

人を増やしたことで、

  • シフト調整
  • 教育
  • トラブル対応
  • 情報共有
  • マネジメント業務

“管理コスト”だけが急増しました

「人を増やせば楽になる」
そう思っていたのに、
実際は忙しさが増えただけ。

■ ここで見落とされているもの

この会社で見落とされているのが、

一人当たり、
どれだけ売上を生んでいるか

という視点です。

売上「総額」ばかりを見て、

  • 人が増えた
  • 仕事量が増えた
  • 現場が回っている

それだけで
「成長している」と思い込んでしまっている状態

しかし、

  • 人が増えた分
     本当に効率は上がったのか?
  • 価値を生む構造に
     変化はあったのか?

そこを誰も検証していません。

この違和感の正体こそが、
一人当たり売上で見えてきます

3|よくある誤解と落とし穴

■ よくある思い込み

人を増やしたとき、
多くの経営者が無意識にこう考えます。

  • 人を増やせば仕事は回る
  • 人手不足は採用すれば解決する
  • 売上が増えれば、自然と楽になる

どれも一見、正しそうに聞こえます。
実際、現場からも

  • 「人が足りない」
  • 「もっと人がいれば…」

という声が上がるでしょう。

だからこそ、

採用=解決策
になりやすいのです。

■ しかし実際に起きていること

ところが、
人を増やしても現場は楽にならない

その理由はシンプルです。

仕事の設計が変わっていないから

具体的には――

  • 業務フローが昔のまま
  • ムダな作業が放置されている
  • 判断が特定の人に集中
  • 情報共有が属人化
  • 教育の仕組みがない

結果として、

新しい人が入っても「やること」が増えるだけ
という状態になります。

さらに、

  • ベテランが新人のフォローに追われる
  • 本来やるべき仕事に集中できない
  • かえって生産性が落ちる

ベテラン頼み構造が
より強化されてしまう
のです。

■ 売上が増えても楽にならない理由

売上は確かに増えています。
仕事量も増えています。

でも、

  • 段取りは昔のまま
  • ツールも仕組みも変えていない
  • 属人的な運営のまま

この状態で人だけ増やすと、

忙しさだけが増殖する
という現象が起きます。

つまり、

  • 売上アップ
  • 人員増加

どちらも正解なのに、
構造が変わっていない

これが最大の落とし穴です。

■ 本当の問題はどこか

ここで改めて確認したいのは、

👉 問題は「人数」ではなく
生産性の設計不在。

という点です。

人が足りないのではなく、

  • 人が活きる設計がない
  • 仕事の割り振りが雑
  • 仕組みで回す発想がない

これこそが本質

採用はあくまで手段であって、
解決策そのものではありません

一人当たり売上が伸びない会社は、

  • 人を増やしても楽にならない
  • 管理コストだけ増える
  • 経営が重くなる

というループに陥ります。

ここから抜け出すには、
人数ではなく構造を見る視点が必要になります。

4|一人当たり売上が低い会社の構造

一人当たり売上が伸びない会社には、
いくつか共通する「構造」があります。
個人の能力ややる気の問題ではありません。
組織の作り方そのものに原因があります。

■ 典型的なパターン

まず多いのが、属人化です。

  • 特定の人しかできない仕事が多い
  • 「〇〇さんがいないと回らない」状態
  • ノウハウが共有されていない

この状態では、新しい人が入っても
すぐに戦力になれません
結局、ベテランに仕事が集中します。

次に、教育に時間を割けない構造

  • 忙しくて教える余裕がない
  • マニュアルがない
  • OJTが感覚頼み

結果として、

  • 新人は「見て覚える」しかない

当然、成長スピードは遅くなります
ミスも増え、
ベテランのフォロー工数が増える。

さらに、仕組みがない

  • 仕事の流れが人ごとに違う
  • ルールが曖昧
  • 判断基準が共有されていない

その場しのぎで回すため、

  • 手戻りが多い
  • 無駄な確認が増える
  • 会話コストが膨らむ

最後に、仕事の棚卸しをしていない点です。

  • 何の業務が本当に売上に直結しているのか
  • 逆に「やらなくてもいい仕事」は何か

こうした整理をしていないため、

  • 全部大事
  • 全部急ぎ
  • 全部自分で判断

という状態になります。

■ 結果として起きること

この構造のまま人を増やすと、何が起きるか。

  • 新人がなかなか戦力にならない
  • 教える人が疲弊する
  • ベテランに仕事が集中
  • 結局、経営者が現場に戻る

そして、

組織がまったく成長しない
という状況に陥ります。

人は増えたのに、

  • 仕事は減らない
  • 管理は増える
  • トラブルも増える

楽になるどころか、
経営はどんどん重くなる

■ 本質的な構造問題

ここで大事なのは、

→ 人が増えるほど
経営が重くなる構造

になってしまっている、という事実です。

これは、

  • 人が悪い
  • 能力が低い

という話ではありません。

「人を活かせない設計」になっているだけです。

一人当たり売上が低い会社は、

  • 人を増やしても生産性が上がらない
  • むしろ管理コストだけ増える

という悪循環に入ります。

この構造を変えない限り、
何人増やしても経営は軽くなりません

5|どう使うべき指標か

一人当たり売上は、
「良い・悪い」と評価するための数字ではありません。

本当の価値は、
経営の問いを生み出すことにあります。

■ 見るべき問い

この指標を見たとき、
ぜひ自分に投げかけてほしい問いがあります。

  • この業務、誰でもできるか?
  • 特定の人にしかできない仕事になっていないか
  • マニュアル化・分解はできないか
  • 仕組みに落とせないか

次に、

  • この仕事、売上に直結しているか?
  • 本当に価値を生んでいる業務か
  • 「昔からやっているだけ」になっていないか
  • やらなくても困らない仕事ではないか

そして、

  • 人を増やす前に、削れる業務はないか?
  • 二重チェック
  • 無意味な会議
  • 形だけの報告
  • 過剰な承認フロー

こうした「見えないムダ」は、
現場に当たり前のように潜んでいます。

■ 改善の方向性

問いが立てられたら、
次は設計の見直しです。

① 業務分解

  • 仕事を細かく分ける
  • 誰でもできる部分と専門部分を切り分ける
  • 難易度を見える化する

② 標準化

  • やり方を統一する
  • 判断基準を揃える
  • 手順を言語化する

これだけで、
新人の立ち上がり速度は変わります

③ 教育設計

  • 教える順番を決める
  • 何日で何ができるか明確化
  • OJTを仕組みに落とす

「教える時間がない」からこそ、
教える設計が必要
です。

④ 役割再設計

  • 何に集中してもらうか
  • 誰が判断するか
  • どこまで任せるか

役割が曖昧なほど、
管理コストは増えます

■ 最後に

ここで一番伝えたいのは、

👉 採用より先に設計を変える。

ということ。

人を増やすのは簡単です。
でも、
構造を変えずに人を増やすと、
経営は必ず重くなります

一人当たり売上は、

  • 今の設計で本当に回っているか
  • 人を活かせているか

を教えてくれる
経営のレントゲンです。

まずは数字を見て、設計を疑う

それが、
この指標の正しい使い方です。

6|「わかるシート」での可視化(GSS導線)

一人当たり売上は、
感覚で語ると必ずブレます。

  • 「忙しくなった」
  • 「人は足りている」
  • 「たぶん良くなっている」

こうした主観ではなく、
数字で事実を見るための仕組み
「わかるシート」です。

■ わかるシート例

一人当たり売上を、
毎月自動で見える化します。

A列 B列 C列 D列 E列
項目 売上 従業員数 一人当たり売上(自動計算) 気づき
入力形式 自動 数値入力 数値入力 自動計算 記述
意図 時系列把握 売上の推移確認 人員変動の把握 生産性の可視化 気づきの言語化

計算式例:
= B2 / C2

たったこれだけですが、
経営の見え方が変わります

■ 何が見えるようになるか

① 人を増やした月の変化が一目

  • 採用した月
  • シフトを増やした月
  • パートを増やした月

そのタイミングで、

一人当たり売上は
上がったのか、下がったのか

が、感情抜きで分かります

「人を増やしたから良いはず」
という思い込みを、
数字が冷静に止めてくれます

② 採用判断の質が上がる

  • 本当に人が必要なのか
  • まず設計を変えるべきか
  • どのタイミングで採るべきか

これが、

感覚 → 根拠
に変わります。

「忙しいから採る」ではなく、
「この数字なら必要」
と、自信を持って判断できます。

③ 感情ではなく数字で会話できる

現場との会話も変わります。

  • 「忙しい」
  • 「人が足りない」

という感覚論ではなく、

  • この月、数字はどうだった?
  • どの業務が詰まっている?

と、
事実ベースの対話になります。

責めるための数字ではありません
改善するための共通言語です。

■ このシートの本当の価値

「わかるシート」の価値は、
数字を“管理”することではありません

考える材料をくれることです。

  • なぜ下がった?
  • なぜ上がった?
  • 何を変えた?

一人当たり売上は、

人を評価する指標ではなく、
設計を評価する指標

だからこそ、

  • 誰かを責める
  • ノルマにする

ためには使いません。

経営を良くするための道具として、
ぜひ使ってみてください。

7|まとめ

人を増やすことが、
必ずしも成長ではありません

人数が増えても、

  • 忙しさだけが増える
  • 管理コストが膨らむ
  • 利益が伸びない

そんな状態なら、
それは「拡大」ではあっても
成長とは言えません

本当の成長とは、
一人ひとりの価値が高まること
です。

同じ人数でも、

  • できることが増える
  • 判断が速くなる
  • 仕事の質が上がる

こうした変化こそが、
組織を強くしていきます

だからこそ、

採用は手段、
設計が本質

人を増やす前に、

  • 仕事の設計
  • 役割の整理
  • 仕組みづくり

ここを変えなければ、
何人増やしても
経営は軽くなりません

一人当たり売上は、
組織の成熟度を映す鏡です。

誰かを評価するための数字ではなく、
経営の構造を映す数字

この数値を見れば、

  • 人を活かせているか
  • 仕組みで回っているか
  • 属人化していないか

すべてが、正直に表れます

数字は嘘をつきません

一人当たり売上は、
あなたの会社の

「人の使いこなし力」

を、
静かに、しかし確実に語っています