
PL担当:うさぎ
人も増やした。それなのに、なぜか経営は楽にならない。
むしろ、
・管理することが増えた
・現場はバタバタしている
・自分の仕事だけ減らない
そんな感覚はありませんか?
「人を増やせば楽になる」
多くの経営者が、一度はそう考えたことがあるはずです。けれど現実は、思ったほど楽にならない。
この“ズレ”の正体こそが、
「一人当たり売上」 という指標に表れます。
一人ひとりが、どれだけ売上を生み出せているのか。
頑張りではなく、経営構造そのものを映し出す数字です。
本稿では、
「人を増やしても楽にならない会社」と
「少人数でも回る会社」の違いを、
生産性という視点から読み解いていきます。
数字は冷たいものではありません。
むしろ、あなたの経営の“詰まりどころ”を正直に教えてくれる存在です。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。
この記事を読むことで得られること
- 「一人当たり売上」が、頑張りではなく“経営構造”を映す指標だと整理できます
- 人を増やしても楽にならない理由(属人化・教育不在・仕組み不足など)の正体が見えてきます
- 採用より先にやるべき「設計」の見直しと、わかるシートでの可視化手順が掴めます
まず結論:人を増やすことが成長ではなく、成長とは「一人の価値を高める設計」ができている状態であり、その答えは一人当たり売上に表れます。
1|一人当たり売上とは何か
まず、この指標の定義から整理しましょう。
一人当たり売上 = 売上高 ÷ 従業員数
とてもシンプルな式です。
会社全体の売上を、働いている人数で割るだけ。
それだけなのに、
この数字には経営の本質が凝縮されています。
■ この数字が見ているもの
一人当たり売上が示しているのは、
「人が、どれだけ価値を生み出せているか」
という一点です。
ここで大切なのは、
「誰が頑張っているか」ではありません。
- 長時間働いているか
- 残業しているか
- 忙しそうか
そうした“頑張り感”は、
この数字には一切関係ありません。
見ているのは、頑張りではなく構造です。
つまり、
- 仕事の設計
- 役割分担
- 仕組みの作り方
- ムダの多さ
- 意思決定の速さ
そうした“会社の作り”そのものが、
一人当たり売上にそのまま表れます。
■ 人件費率とは何が違うのか
ここで、よく混同される指標があります。
それが人件費率です。
人件費率は、
売上に対して
人件費がどれくらいかかっているか
を見る指標でした。
一方、
一人当たり売上は逆の視点です。
一人あたり
どれくらい売上を生み出しているか
つまり、
- 人件費率 → コスト視点
- 一人当たり売上 → 生産性視点
同じ「人」に関する数字でも、
見ている方向がまったく違います。
■ 本質は「人数」ではなく「使い方」
ここが一番重要なポイントです。
一人当たり売上が教えてくれるのは、
人が多いか少ないか
ではありません。
そうではなく、
人をどう使っているか
です。
- 本来1人でできる仕事に3人使っていないか
- 判断待ちで手が止まっていないか
- 属人化で回っていないか
- ムダな会議や報告に時間を取られていないか
こうした“見えないロス”が、
すべてこの数字に集約されます。
だからこそ、
👉 「人の数」ではなく
人の“使い方”を映す指標
と言えるのです。
人を増やす前に、
まず見るべきはこの数字。
一人当たり売上は、
「今の組織構造で、
どれだけ効率よく価値を生めているか」を
冷静に突きつけてくれます。
2|企業概要・状況説明(ペルソナ設定)
今回のモデルケースは、
地方でサービス業を営む中小企業です。
■ 会社の基本情報
- 業種:地域密着型のサービス業
(例:整骨院、学習塾、清掃、介護、ITサポートなど) - 従業員数:15名
- 売上:ここ数年、右肩上がり
- 事業歴:10年以上
3年前、
業績好調を背景に人員を倍増しました。
「人を増やせば、
もっと仕事を回せるはず」
「現場が楽になるはず」
そんな期待を持っての増員です。
■ しかし現実は…
確かに売上は伸びました。
問い合わせも増え、現場も忙しい。
ところが――
- 利益はほぼ横ばい
- 経営者の手元に残るお金は増えていない
- 月末になると資金繰りが気になる
「売上は伸びているのに、
なぜか楽にならない」
そんな違和感を、
経営者は強く感じています。
■ 経営者の本音
実際に聞こえてくる声は、こんな感じです。
- 「とにかく毎日忙しい…」
- 「管理する仕事が増えて、現場に出られない」
- 「人は増えたけど、手応えは薄い」
- 「給与も上げたいが、余裕がない」
- 「結局、自分が一番働いている気がする」
人を増やしたことで、
- シフト調整
- 教育
- トラブル対応
- 情報共有
- マネジメント業務
“管理コスト”だけが急増しました。
「人を増やせば楽になる」
そう思っていたのに、
実際は忙しさが増えただけ。
■ ここで見落とされているもの
この会社で見落とされているのが、
一人当たり、
どれだけ売上を生んでいるか
という視点です。
売上「総額」ばかりを見て、
- 人が増えた
- 仕事量が増えた
- 現場が回っている
それだけで
「成長している」と思い込んでしまっている状態。
しかし、
- 人が増えた分
本当に効率は上がったのか? - 価値を生む構造に
変化はあったのか?
そこを誰も検証していません。
この違和感の正体こそが、
一人当たり売上で見えてきます。
3|よくある誤解と落とし穴
■ よくある思い込み
人を増やしたとき、
多くの経営者が無意識にこう考えます。
- 人を増やせば仕事は回る
- 人手不足は採用すれば解決する
- 売上が増えれば、自然と楽になる
どれも一見、正しそうに聞こえます。
実際、現場からも
- 「人が足りない」
- 「もっと人がいれば…」
という声が上がるでしょう。
だからこそ、
採用=解決策
になりやすいのです。
■ しかし実際に起きていること
ところが、
人を増やしても現場は楽にならない。
その理由はシンプルです。
仕事の設計が変わっていないから。
具体的には――
- 業務フローが昔のまま
- ムダな作業が放置されている
- 判断が特定の人に集中
- 情報共有が属人化
- 教育の仕組みがない
結果として、
新しい人が入っても「やること」が増えるだけ
という状態になります。
さらに、
- ベテランが新人のフォローに追われる
- 本来やるべき仕事に集中できない
- かえって生産性が落ちる
ベテラン頼み構造が
より強化されてしまうのです。
■ 売上が増えても楽にならない理由
売上は確かに増えています。
仕事量も増えています。
でも、
- 段取りは昔のまま
- ツールも仕組みも変えていない
- 属人的な運営のまま
この状態で人だけ増やすと、
忙しさだけが増殖する
という現象が起きます。
つまり、
- 売上アップ
- 人員増加
どちらも正解なのに、
構造が変わっていない。
これが最大の落とし穴です。
■ 本当の問題はどこか
ここで改めて確認したいのは、
👉 問題は「人数」ではなく
生産性の設計不在。
という点です。
人が足りないのではなく、
- 人が活きる設計がない
- 仕事の割り振りが雑
- 仕組みで回す発想がない
これこそが本質。
採用はあくまで手段であって、
解決策そのものではありません。
一人当たり売上が伸びない会社は、
- 人を増やしても楽にならない
- 管理コストだけ増える
- 経営が重くなる
というループに陥ります。
ここから抜け出すには、
人数ではなく構造を見る視点が必要になります。
4|一人当たり売上が低い会社の構造
一人当たり売上が伸びない会社には、
いくつか共通する「構造」があります。
個人の能力ややる気の問題ではありません。
組織の作り方そのものに原因があります。
■ 典型的なパターン
まず多いのが、属人化です。
- 特定の人しかできない仕事が多い
- 「〇〇さんがいないと回らない」状態
- ノウハウが共有されていない
この状態では、新しい人が入っても
すぐに戦力になれません。
結局、ベテランに仕事が集中します。
次に、教育に時間を割けない構造。
- 忙しくて教える余裕がない
- マニュアルがない
- OJTが感覚頼み
結果として、
- 新人は「見て覚える」しかない
当然、成長スピードは遅くなります。
ミスも増え、
ベテランのフォロー工数が増える。
さらに、仕組みがない。
- 仕事の流れが人ごとに違う
- ルールが曖昧
- 判断基準が共有されていない
その場しのぎで回すため、
- 手戻りが多い
- 無駄な確認が増える
- 会話コストが膨らむ
最後に、仕事の棚卸しをしていない点です。
- 何の業務が本当に売上に直結しているのか
- 逆に「やらなくてもいい仕事」は何か
こうした整理をしていないため、
- 全部大事
- 全部急ぎ
- 全部自分で判断
という状態になります。
■ 結果として起きること
この構造のまま人を増やすと、何が起きるか。
- 新人がなかなか戦力にならない
- 教える人が疲弊する
- ベテランに仕事が集中
- 結局、経営者が現場に戻る
そして、
組織がまったく成長しない
という状況に陥ります。
人は増えたのに、
- 仕事は減らない
- 管理は増える
- トラブルも増える
楽になるどころか、
経営はどんどん重くなる。
■ 本質的な構造問題
ここで大事なのは、
→ 人が増えるほど
経営が重くなる構造
になってしまっている、という事実です。
これは、
- 人が悪い
- 能力が低い
という話ではありません。
「人を活かせない設計」になっているだけです。
一人当たり売上が低い会社は、
- 人を増やしても生産性が上がらない
- むしろ管理コストだけ増える
という悪循環に入ります。
この構造を変えない限り、
何人増やしても経営は軽くなりません。
5|どう使うべき指標か
一人当たり売上は、
「良い・悪い」と評価するための数字ではありません。
本当の価値は、
経営の問いを生み出すことにあります。
■ 見るべき問い
この指標を見たとき、
ぜひ自分に投げかけてほしい問いがあります。
- この業務、誰でもできるか?
- 特定の人にしかできない仕事になっていないか
- マニュアル化・分解はできないか
- 仕組みに落とせないか
次に、
- この仕事、売上に直結しているか?
- 本当に価値を生んでいる業務か
- 「昔からやっているだけ」になっていないか
- やらなくても困らない仕事ではないか
そして、
- 人を増やす前に、削れる業務はないか?
- 二重チェック
- 無意味な会議
- 形だけの報告
- 過剰な承認フロー
こうした「見えないムダ」は、
現場に当たり前のように潜んでいます。
■ 改善の方向性
問いが立てられたら、
次は設計の見直しです。
① 業務分解
- 仕事を細かく分ける
- 誰でもできる部分と専門部分を切り分ける
- 難易度を見える化する
② 標準化
- やり方を統一する
- 判断基準を揃える
- 手順を言語化する
これだけで、
新人の立ち上がり速度は変わります。
③ 教育設計
- 教える順番を決める
- 何日で何ができるか明確化
- OJTを仕組みに落とす
「教える時間がない」からこそ、
教える設計が必要です。
④ 役割再設計
- 何に集中してもらうか
- 誰が判断するか
- どこまで任せるか
役割が曖昧なほど、
管理コストは増えます。
■ 最後に
ここで一番伝えたいのは、
👉 採用より先に設計を変える。
ということ。
人を増やすのは簡単です。
でも、
構造を変えずに人を増やすと、
経営は必ず重くなります。
一人当たり売上は、
- 今の設計で本当に回っているか
- 人を活かせているか
を教えてくれる
経営のレントゲンです。
まずは数字を見て、設計を疑う。
それが、
この指標の正しい使い方です。
6|「わかるシート」での可視化(GSS導線)
一人当たり売上は、
感覚で語ると必ずブレます。
- 「忙しくなった」
- 「人は足りている」
- 「たぶん良くなっている」
こうした主観ではなく、
数字で事実を見るための仕組みが
「わかるシート」です。
■ わかるシート例
一人当たり売上を、
毎月自動で見える化します。
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 項目 | 月 | 売上 | 従業員数 | 一人当たり売上(自動計算) | 気づき |
| 入力形式 | 自動 | 数値入力 | 数値入力 | 自動計算 | 記述 |
| 意図 | 時系列把握 | 売上の推移確認 | 人員変動の把握 | 生産性の可視化 | 気づきの言語化 |
計算式例:
= B2 / C2
たったこれだけですが、
経営の見え方が変わります。
■ 何が見えるようになるか
① 人を増やした月の変化が一目
- 採用した月
- シフトを増やした月
- パートを増やした月
そのタイミングで、
一人当たり売上は
上がったのか、下がったのか
が、感情抜きで分かります。
「人を増やしたから良いはず」
という思い込みを、
数字が冷静に止めてくれます。
② 採用判断の質が上がる
- 本当に人が必要なのか
- まず設計を変えるべきか
- どのタイミングで採るべきか
これが、
感覚 → 根拠
に変わります。
「忙しいから採る」ではなく、
「この数字なら必要」
と、自信を持って判断できます。
③ 感情ではなく数字で会話できる
現場との会話も変わります。
- 「忙しい」
- 「人が足りない」
という感覚論ではなく、
- この月、数字はどうだった?
- どの業務が詰まっている?
と、
事実ベースの対話になります。
責めるための数字ではありません。
改善するための共通言語です。
■ このシートの本当の価値
「わかるシート」の価値は、
数字を“管理”することではありません。
考える材料をくれることです。
- なぜ下がった?
- なぜ上がった?
- 何を変えた?
一人当たり売上は、
人を評価する指標ではなく、
設計を評価する指標。
だからこそ、
- 誰かを責める
- ノルマにする
ためには使いません。
経営を良くするための道具として、
ぜひ使ってみてください。
7|まとめ
人を増やすことが、
必ずしも成長ではありません。
人数が増えても、
- 忙しさだけが増える
- 管理コストが膨らむ
- 利益が伸びない
そんな状態なら、
それは「拡大」ではあっても
成長とは言えません。
本当の成長とは、
一人ひとりの価値が高まることです。
同じ人数でも、
- できることが増える
- 判断が速くなる
- 仕事の質が上がる
こうした変化こそが、
組織を強くしていきます。
だからこそ、
採用は手段、
設計が本質。
人を増やす前に、
- 仕事の設計
- 役割の整理
- 仕組みづくり
ここを変えなければ、
何人増やしても
経営は軽くなりません。
一人当たり売上は、
組織の成熟度を映す鏡です。
誰かを評価するための数字ではなく、
経営の構造を映す数字。
この数値を見れば、
- 人を活かせているか
- 仕組みで回っているか
- 属人化していないか
すべてが、正直に表れます。
数字は嘘をつきません。
一人当たり売上は、
あなたの会社の
「人の使いこなし力」
を、
静かに、しかし確実に語っています。
