満席なのに資金ショート?─飲食店にとっての「流動比率」【会計数値の糸口から / BS-第2回】 | ソング中小企業診断士事務所

満席なのに資金ショート?─飲食店にとっての「流動比率」【会計数値の糸口から / BS-第2回】

満席なのに資金ショート?─飲食店にとっての「流動比率」

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
記事・ツール・コラム・思想─すべては一つの設計思想から生まれています。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

経営相談の窓口から
失敗事例の切り口から
会計数値の糸口から

現場の声を起点に、課題の本質を捉える入口。
今日から動ける“実務の手がかり”を届けます。

時事・構造

診断ノート
経営プログレッション
 

経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

思想・感性

日常発見の窓口から
迎える経営論
響く経営論

見えない価値や関係性の温度に光を当てます。
感性と論理が交差する“気づきの場”です。

実装・仕組み

わかるシート
つなぐシート
みえるシート

現場で“動く形”に落とし込むための仕組み群。
理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

  1. 飲食店の経営リスクを見える化する流動比率とは
    1. 飲食店オーナーが抱える資金繰りの悩み
    2. 流動比率の定義と計算式
    3. 安心ラインと危険水域の目安
  2. 資金繰りに不安を抱える繁盛飲食店オーナーのペルソナ
    1. 繁盛飲食店経営者の基本プロフィールと収益データ
    2. 飲食店経営者の人物像と経営価値観
    3. 飲食店オーナーが抱える主な資金繰り課題と不安
    4. 資金繰り改善への気づきと背景
  3. 繁盛店なのにお金が残らない理由:資金繰りの現実を数値で解説
    1. 売上好調でも手元資金が少ない原因
    2. 流動比率で見える資金余裕の危険水域
    3. 突発的な出費への脆弱性
    4. 資金管理に追われる経営者の時間と心理的負担
    5. 現経営状況の数値まとめ
  4. 流動比率低下リスク徹底解説|飲食店の資金繰り危機を回避する方法
    1. 支払い遅延が招く信用低下と仕入れコスト増加リスク
    2. 金融機関評価悪化による融資困難リスク
    3. 経営者心理的負担と店舗運営への悪影響
    4. 流動比率低下放置のリスク一覧と経営インパクト
  5. 飲食店資金繰り改善|流動比率向上の4ステップ実践ガイド
    1. 在庫管理徹底でキャッシュ流出を抑制する方法
    2. 売上入金サイクル見直しで資金繰りを前倒し
    3. 借入返済リスケジュール交渉で返済負担を軽減
    4. 緊急資金積立で資金クッションを構築
    5. 改善策を継続する習慣化と可視化のポイント
  6. 飲食店資金繰り習慣とツール導入ガイド|数字を経営の味方にする第一歩
    1. 月次資金繰り見える化の習慣づくり
    2. 数字の意味を現場用語に翻訳して理解を深める
    3. 経営判断を加速する数字の推移視覚化
    4. 安心感を生む数字管理の習慣化
    5. まとめ:数字は経営者の最強の相談相手
  7. 飲食店経営の結びと問いかけ|数字が寄り添う資金繰り物語
    1. 数字は経営判断の分身
    2. 会計数値が教える次の一手
    3. 数字で紡ぐ経営ストーリーの書き換え
    4. 最後の問いかけ

飲食店の経営リスクを見える化する流動比率とは

BSくま

BS担当:くま
「毎晩お店は満席なのに、月末が近づくとどうも落ち着かない…」
そんな気持ち、あなたも感じたことがありませんか?
実はその不安の正体を数字で映すものがあります。
それが「流動比率」。
むずかしく聞こえるかもしれないけれど、かんたんに言うと、“入ってくるお金と払わなきゃいけないお金のバランス” のことなんです。
今回は飲食店を舞台に、流動比率がどんなふうにあなたのお店の安心を守るか、私と一緒に見ていきましょう。

飲食店オーナーが抱える資金繰りの悩み

飲食店オーナーにとって、月末は売上の計算よりも支払いに頭を悩ませる時期です。
仕入代金や人件費など、支払うべきお金が集中するタイミングとなるからです。

「今月も無事に支払いできるだろうか……」
売上は好調で席も埋まっているのに、資金繰りの不安はつきまとう。
そんな不安を“数字”として可視化してくれるのが 流動比率 です。

流動比率の定義と計算式

流動比率とは、企業の短期的な支払い能力を測る指標のことで、以下の計算式で求められます。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

項目 内容 飲食店での例
流動資産 1年以内に現金化できるもの 現金、売掛金、在庫(食材など)
流動負債 1年以内に支払う義務のあるもの 仕入代金、人件費、短期借入金

安心ラインと危険水域の目安

  • 流動比率が 200%以上 → 資金繰りは安定していて安心
  • 流動比率が 100%未満 → 支払い能力にリスクがある可能性

つまり、流動比率は「入ってくるお金」と「出ていくお金」のバランスを
ひと目で把握できる、飲食店経営において重要な財務指標なのです。

資金繰りに不安を抱える繁盛飲食店オーナーのペルソナ

繁盛飲食店経営者の基本プロフィールと収益データ

項目 詳細
名前 佐藤大輔(仮名)
年齢 48歳
家族構成 妻と高校生の娘2人
店舗概要 駅近の40席イタリアンレストラン(オープン10年目)
年商 6,000万円(前年比105%増)
スタッフ構成 正社員4人、アルバイト6人
平均客単価 3,500円
営業日 週6日(月曜休業)/ランチ・ディナー営業

飲食店経営者の人物像と経営価値観

  • 飲食業一筋25年。修業時代を経て地元で認知度の高い人気店に育成
  • SNSや口コミサイトを活用し、集客面では成果を実感
  • 「お客様の笑顔」を最優先にした顧客満足重視の姿勢
  • 数字管理には苦手意識あり。「税理士に任せるもの」というスタンス
  • 店舗の雰囲気やサービスには自信がある一方、経営面への漠然とした不安

飲食店オーナーが抱える主な資金繰り課題と不安

  • 繁盛しているはずなのに、月末になると口座残高が減少する理由が不明
  • 突然の設備故障や人件費増加で支払いが逼迫
  • 決算書を見ても良し悪しの判断がつかない
  • 融資審査用に「数字が整っている」と自信を持てない
  • 経営学習の時間を確保できず、効率的な勉強方法が見つからない

資金繰り改善への気づきと背景

  • 毎月の資金繰りがギリギリで“綱渡り”状態を実感
  • 冷蔵庫故障で30万円の突発出費、予備資金の必要性を痛感
  • 同業者セミナーで「流動比率」を知り、自店の試算表を初めて確認

繁盛店なのにお金が残らない理由:資金繰りの現実を数値で解説

売上好調でも手元資金が少ない原因

  • 月商:約500万円(6,000万円 ÷ 12ヶ月)
  • 客数:約140人/日(40席 × 3回転 × 6営業日)
  • クレジット決済比率の高さによる入金タイミングの遅延
  • 売掛金の回収は翌月になるため、今月の支払い資金に使えない

こうした入金と支払いのタイミングずれが、稼いだ売上がすぐに手元現金にならない最大の要因です。

流動比率で見える資金余裕の危険水域

項目 金額
流動資産 300万円

  • 現金:100万円
  • 売掛金:200万円
流動負債 400万円

  • 仕入代金:150万円
  • 人件費:200万円
  • 短期借入返済:50万円
流動比率 75%(300 ÷ 400 × 100)

流動比率75%はリスク可能性ラインの100%を大きく下回り、毎月の資金繰りが緊迫する根拠となっています。

突発的な出費への脆弱性

  • 冷蔵庫故障による30万円の一時支出
  • 食材価格高騰による仕入原価の予想外増加
  • 厨房設備故障:修理または買い替えで30万~50万円の一時支出
  • エアコン故障(夏場):集客減・顧客満足度低下を伴う高額修理費
  • アルバイト急退職で発生する採用広告・教育コスト
  • スタッフ急退職:求人広告、面接、教育で20万円以上のコスト発生

流動比率が低いため、これらの予測不能な出費が致命的なキャッシュ不足を招きます。

資金管理に追われる経営者の時間と心理的負担

  • 本来注力すべき時間:新メニュー開発、スタッフ育成、顧客体験向上
  • 現状の時間配分:毎月の資金繰りにリソースを集中
  • 銀行融資相談時の自信不足:数字に対する理解と準備の欠如

数字を「見える化」できなければ、本業への集中と将来投資が妨げられ、心理的負担が増大します。

現経営状況の数値まとめ

指標 現状 示す内容
売上 好調 顧客支持を獲得している
流動比率 75%(危険水域) 資金繰りの不安が常態化
キャッシュ残高 少ない 売上が手元資金に結びついていない
オーナーの時間 資金繰りに費やされる 本業に集中できず、未来への投資が難しい

流動比率低下リスク徹底解説|飲食店の資金繰り危機を回避する方法

支払い遅延が招く信用低下と仕入れコスト増加リスク

  • 食材業者への仕入代金支払い遅延によって「次回から現金払い」の取引条件に変更される
  • 新規取引先の口座開設や掛け取引が断られ、仕入れ先の選択肢が狭まる
  • 支払いサイトが短縮され、さらなる資金圧迫を招く

仕入れ条件の厳格化は原材料コストの上昇を招き、キャッシュでの支払いが強いられることで、手元資金がさらに減少します。

金融機関評価悪化による融資困難リスク

  • 流動比率100%未満は「資金繰り不安定」とみなされ、融資審査で不利になる
  • 希望融資額が減額されたり、適用金利が上昇したりする
  • 攻めの投資(店舗改装・設備投資・2店舗目展開)に必要な資金確保が難しくなる

短期運転資金の借入に時間がかかることで、資金需要への迅速な対応が阻まれ、事業拡大の機会を逸します。

経営者心理的負担と店舗運営への悪影響

  • 常時「支払いの不安」に悩まされ、接客時の笑顔やモチベーションが低下
  • 月末ごとに胃痛や不眠に悩まされ、健康リスクと業務効率の低下を招く
  • スタッフからの改善提案やアイデアに向き合う余裕がなくなり、離職率上昇につながる

オーナーの精神的余裕が失われると、顧客満足度や店舗文化が損なわれ、中長期的な売上減少リスクを抱えます。

流動比率低下放置のリスク一覧と経営インパクト

リスクカテゴリ 実際に起こること 経営インパクト
信用 支払い遅延による取引条件悪化 仕入れコスト増、大手業者からの掛け取引停止
資金繰り 突発支出で手元資金が枯渇 緊急借入・金利負担増加
融資 銀行評価低下で融資条件悪化 設備投資・事業拡大機会の喪失
心理 不安・ストレス増大 顧客対応・スタッフ育成の質低下

流動比率は感情を伴わず、未来への警告を淡々と示す経営指標です。放置すれば徐々に事業を蝕みますが、早期に対策を講じれば“事業を守る盾”となります。

飲食店資金繰り改善|流動比率向上の4ステップ実践ガイド

在庫管理徹底でキャッシュ流出を抑制する方法

現場で起こりがちな課題

  • 賞味期限切れや生鮮品の使い忘れによる食材ロス
  • 人気メニューと不人気メニューの仕入量最適化が不十分

改善アクション

  • 毎週の棚卸しで「仕入→在庫→消費」の流れを可視化
  • 仕入れ担当と調理スタッフの情報連携を強化(Slackや紙の仕入れ表)
  • 在庫過剰な食材はキャンペーンメニュー化して回転率をアップ

効果

  • 売上につながらない在庫を削減し、キャッシュ流出を抑制
  • 食材ロスを防ぎ、粗利率の向上を実現

売上入金サイクル見直しで資金繰りを前倒し

現場で起こりがちな課題

  • クレジット決済入金が翌月末で資金繰りが後ろ倒し
  • キャッシュレス比率が高く、手元資金不足を招く

改善アクション

  • カード会社に「月2回払い」など早期入金スケジュールを相談
  • PayPayや楽天ペイなど、入金タイミングが早い決済手段を導入
  • 毎日レジ締め時に現金売上とキャッシュレス比率を記録・モニタリング

効果

  • 入金タイミングが前倒しになり流動資産が増加
  • 「売上があるのにお金がない」状態を回避

借入返済リスケジュール交渉で返済負担を軽減

現場で起こりがちな課題

  • 短期借入の月々返済負担が5万~10万円あり資金繰りを圧迫
  • 売上変動があっても一定額を返済しなければならない

改善アクション

  • 金融機関に月末の資金ショートリスクを説明し返済期間延長を相談
  • 月々の返済額を5万円から2万円に見直し、余裕資金を確保
  • 必要なら支払日を月初に変更する交渉も実施

効果

  • 流動負債が減少し流動比率が改善
  • 資金ショートリスクが低減し心理的安心感を獲得

緊急資金積立で資金クッションを構築

現場で起こりがちな課題

  • 「いざという時に借りればいい」と油断し、融資実行までに時間がかかる
  • 一度の支出でキャッシュが枯渇し経営判断に支障が出る

改善アクション

  • 営業利益の5〜10%を毎月別口座に自動積立
  • 設備用・雇用対応用など目的別に口座を分けて管理
  • 売上1ヶ月分の支出目安(例:300万円)を半年かけて確保する目標設定

効果

  • 突発的な出費にも慌てない資金バッファを確保
  • 金融機関から「リスク管理を行う経営者」と評価される

改善策を継続する習慣化と可視化のポイント

  • 月末に「資金繰りチェック会議」を開催(レジ締め、試算表、売掛確認)
  • Excelや専用シートで流動比率推移をグラフ化し、経営状況を視覚化
  • 例:3ヶ月で流動比率75%→110%に改善した実績を社内共有

これらをルーティン化することで、数字の改善が目に見える成果となり、オーナーの不安を安心に変えます。

飲食店資金繰り習慣とツール導入ガイド|数字を経営の味方にする第一歩

月次資金繰り見える化の習慣づくり

アクション

  • 月末に資金繰り確認ミーティングを開催(オーナー単独でも可)
  • レジ締め日報、現金残高、売掛金、支払予定一覧をチェック
  • 試算表から流動資産と流動負債を抽出し、流動比率を計算

使用ツール例

  • Excelで簡易資金繰り表を自作
  • 市販の経理実務月次チェックリストを活用
  • 弥生会計などのクラウド会計ソフトでグラフ機能を利用

効果

  • 不安感が「今月85%、来月120%見込める」に変化
  • 顧問税理士との打ち合わせで数字を自信を持って説明可能

数字の意味を現場用語に翻訳して理解を深める

アクション

  • 「流動比率=払える力」など感覚的に覚えやすい表現を作成
  • 試算表の見方を紙一枚にまとめ、いつでも参照できるよう保管
  • スタッフにも今月のキャッシュ状況を共有する文化を醸成

ヒント

  • 「うちの流動比率75%は口座に○○万円しかない証拠」と言い換える
  • 会計用語を現場用語に翻訳すると理解定着が加速

効果

  • 数字が記号から“経営の声”として聞こえるようになる
  • 現場の判断スピードとスタッフ連携が向上

経営判断を加速する数字の推移視覚化

アクション

  • 月次の流動比率をExcelやクラウドツールでグラフ化
  • 売上・人件費・仕入れの3指標を重ねて推移を比較
  • 「売上増でも比率低下」などの傾向を視覚的に把握

効果

  • 自店の健康診断として予防的アクションが可能に
  • 銀行融資相談時に「数字で説明できる経営者」の信頼を獲得

安心感を生む数字管理の習慣化

継続のために

  • 毎月25日を「経営確認デー」として固定ルーチン化
  • 税理士や経理スタッフとの月次打ち合わせを経営対話の場に昇華
  • 必要時は診断士や税理士を「数字翻訳者」としてサポートに活用

効果

  • 数字不安を「数字で判断する安心」へ転換
  • 苦手意識が薄れ、数字が“味方”に感じられるようになる

まとめ:数字は経営者の最強の相談相手

数字は感情を伴わず、冷静かつ忠実に経営の現状を示すナビゲーターです。

まずは月末の通帳残高を確認するだけでも一歩となります。数字を追いかけるのではなく、先読みする経営へシフトしましょう。

飲食店経営の結びと問いかけ|数字が寄り添う資金繰り物語

数字は経営判断の分身

試算表に並ぶ数字は、仕入れや価格設定、スタッフ配置、キャンペーンなど、日々の判断の積み重ねです。
数字は嘘をつかず、あなたの経営の声をそのまま映し出します。
向き合うことで未来を守るヒントが得られます。

会計数値が教える次の一手

資金繰りに追われる背景には「数字が苦手」という誤解が隠れているかもしれません。
使いこなす経験がなかっただけで、数字は専門家だけのものではありません。
経営者だからこそ、数字を読み解き、道を選ぶ力を身につけるべきです。

数字で紡ぐ経営ストーリーの書き換え

飲食店には忙しさが溶け込む“罠”があります。気づけば半年、1年が過ぎてしまう。
しかし、流動比率という指標を見るだけで「今の経営はどうか」「このままでいいのか」と問い直せます。
その問いが、店の次の物語を紡ぎ始めるのです。

最後の問いかけ

  • あなたは今、店の数字を「苦手なもの」として避けていますか?
  • それとも数字を味方にして、未来への道標に変えたいと思いますか?

数字の裏側にある悩みは、決してあなただけのものではありません。
もし「うちも同じかもしれない」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
現場の声を丁寧にお聴きしながら、数字を“味方”に変える具体的な一歩を一緒に見つけていきましょう。


なお、本記事で触れた会計指標をはじめ、経営に欠かせない数字をシンプルに見える化できるのが、
当事務所オリジナルの 「わかるシート」 です。
あなたのお店や会社の数字を、すぐに“自分ごと”として把握できる仕組みをご提供しています。

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