セールをしても利益が出ない ─ アパレルショップにとっての「原価率」【会計数値の糸口から / PL-第5回】 | ソング中小企業診断士事務所

セールをしても利益が出ない ─ アパレルショップにとっての「原価率」【会計数値の糸口から / PL-第5回】

セールをしても利益が出ない ─ アパレルショップにとっての「原価率」

PLうさぎ

PL担当:うさぎ
今日のテーマは、アパレルショップ経営における「原価率」です。
「売上はそこそこあるのに、なぜかお金が残らない…」
「セールをやっても利益がほとんど出ない…」
そんなお悩みをよく耳にします。
アパレル業界は、トレンドの変化や在庫リスク、セール依存などが絡み合い、数字と現場感覚のギャップがとても大きい業界なんです。
だからこそ、原価率という数字を「会計用語」ではなく、「経営改善のヒント」として正しく理解することが重要です。
この記事では、セレクトショップを営むオーナーさんの事例を交えながら、原価率が高止まりする原因と、その改善の糸口を分かりやすくお伝えします。
数字がちょっと苦手でも大丈夫。
ペンギンと一緒に、ストーリーを追いながら原価率を“味方”にしていきましょう。

東京都内でセレクトショップを経営する山田さん(仮名・39歳)。
こだわり抜いたインポートブランドを扱い、SNSでの集客にも成功し、月商は順調に伸びていました。

しかし、ある日ふと気づきます。

「客足は悪くないし、売上もある。でも、なぜかお金が残らない…」

PL(損益計算書)を開いてみると、売上高は先月800万円。
それにもかかわらず、営業利益はほぼゼロ。
手元の現金は減る一方で、仕入れの支払いに追われる状況が続いていました。

その原因は、「原価率」に隠れていました。

アパレル業界は、在庫リスクが高く、セール依存度も大きい特殊な構造を持っています。

  • 仕入れ単価の高さ
  • トレンド変化の速さ
  • セール時の大幅値引き
  • 売れ残り在庫の損失

これらが積み重なると、売上があるのに利益が残らない状況に陥ります。

この記事では、アパレルショップ経営者が陥りがちな「原価率の高止まり」という課題を掘り下げ、
その原因と改善策を、ストーリー仕立てで解説していきます。

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
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現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

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時事・構造

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経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

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実装・仕組み

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理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

アパレルショップ経営で抑えるべき原価率とは?

アパレルショップの経営において、売上と並んで重要な指標のひとつが原価率です。
一言でいうと「売上のうち、仕入れや製造にどれだけお金を使っているか」を示す数字ですが、その裏側には利益構造や在庫管理の問題が凝縮されています。

原価率の定義と計算式で売上高に対するコスト割合を把握

原価率は以下の式で求められます:

原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100(%)

  • 売上原価:仕入れた商品や製造した製品の原価。PL(損益計算書)に記載。
  • 売上高:商品やサービスを販売した総額。

たとえば、月商800万円で売上原価が400万円なら、原価率は50%になります。
つまり、売上の半分が仕入れや製造コストに消えている計算です。

アパレル業界の理想原価率の目安と粗利益率

一般的なアパレルショップでは、原価率30〜35%が理想とされます。
これは「粗利益率(=100%−原価率)」を65〜70%程度に確保することで、
人件費
家賃
広告費
その他経費
これらをまかないつつ、適切な利益を残すことができるからです。

しかし、現実にはこの理想を大きく上回るお店も少なくありません。

アパレルショップで原価率が高止まりする原因と在庫管理リスク

  • セール依存型の販売戦略
    • 売れ残り在庫を捌くため、定価の30〜50%引きで販売
    • セール品が全体売上の多くを占めると、実質的な原価率は急上昇
    • 売上は増えても、利益は思ったほど増えない
  • 仕入れ単価の上昇
    • インポートブランドを中心に扱う場合、仕入原価が高騰しやすい
    • 為替や原材料費の影響も受け、仕入れ価格が想定以上に膨らむ
  • トレンド変動による在庫リスク
    • ファッションは流行のサイクルが早く、商品寿命が短い
    • 期末在庫が多いと、翌シーズンにセールでしか売れず、結果として原価率がさらに悪化

高原価率でも利益を生む最適な原価率設定と利益構造

注意したいのは、「原価率が高い=必ず赤字」ではないという点です。
たとえば、高価格帯のブランド品を扱うショップでは、原価率が40%を超えても十分な利益が出るケースがあります。

大切なのは、自店の売上構造・販売戦略・経費構造と照らし合わせて最適な原価率を設定することです。
単に「数字を下げる」のではなく、利益を残すために必要な原価率を把握することが第一歩になります。

アパレル業界特有の原価率リスクと利益圧迫要因

  • 流行色やデザインが外れると期末在庫が残る
  • 翌シーズンには型落ち扱いで定価販売が困難
  • 大幅値引きしないと在庫を消化できず原価率が上昇

セール依存型販売が利益を圧迫

多くのアパレルショップはシーズン末にセールを行い在庫を消化しますが、セール比率が高まるほど利益が削られます。

定価 原価 販売価格(30%OFF) 実質原価率
¥10,000 ¥4,000 ¥7,000 約57%

セール売上が全体の3~4割を超えると、月間原価率は50%を簡単に突破し、「売上は伸びたが利益が増えない」状態に陥ります。

仕入れ単価が高止まりする要因

  • インポートブランド中心では仕入原価が高騰しやすい
  • 為替レートや素材価格の上昇で原価が想定以上に増加
  • 小規模店は発注ロットが少なく単価交渉力が弱い

短い商品寿命による原価ロスの発生

  • トレンド商品は1シーズンで入れ替えが必要
  • 過剰在庫は値下げしなければ売れず
  • セール後も売れ残ると廃棄コストが発生し原価回収不可

このように、アパレル業界は「売れなければ在庫リスク」「売れてもセール依存で利益が残らない」という二重の課題を抱えています。次のセクションでは、この状況をどう改善するか――原価率改善の糸口を具体的に解説します。

アパレルショップの原価率改善の糸口:利益構造を強化する具体策

アパレルショップ経営において、原価率は一度高止まりすると下げにくい指標です。しかし、適切な改善策を講じれば利益を守りつつ健全な収益構造を作れます。ここでは現場ですぐに実践できる4つの具体策を解説します。

仕入れ単価を見直して原価率を直接低減

  • 取引先との交渉強化:定期的に仕入単価を見直す交渉を実施
  • 発注ロットの最適化:同一ブランドをまとめ買いして単価を引き下げる
  • 新規仕入先の開拓:インポートと国内ブランドを組み合わせ、コストを抑制

「良い商品を安く仕入れる」努力が原価率改善に直結します。

プライベートブランド(PB)比率を高めて粗利率アップ

  • 高粗利率を確保しやすい自社企画品を戦略的に導入
  • 他店との差別化を図り、ブランド価値を高める
  • 在庫調整を自社で柔軟にコントロール可能

PB化を一部進めるだけで全体の原価率を数%改善できるケースもあります。

セール依存から脱却して定価販売を強化

  • 在庫数を絞り込み、シーズン中に完売させる前提で発注
  • 適正在庫の設定:過去データをもとにSKU単位で発注数を調整
  • 新作投入の頻度を高め、定価販売できる商品を増やす

セール比率を下げることで粗利率を安定させ、原価率を改善します。

原価率と在庫回転率をセットで管理しキャッシュフロー最適化

  • 原価率が低くても回転が遅いとキャッシュが滞留する
  • 回転が速くても原価率が高すぎると粗利が出ない
  • 両面からの改善でキャッシュフローと利益率を同時に強化

「原価率 × 在庫回転率」の視点で管理すると、より効果的に収益構造を健全化できます。

原価率を経営の武器に:数字を味方にする第一歩

「売上はあるのにお金が残らない」──その原因が原価率にあると気づいたとき、次に重要なのは数字を経営に活かすことです。原価率は単なる会計用語ではなく、経営の未来を考えるためのコンパスです。

原価率を把握して経営状況を可視化

  • 月次のPLで「売上原価」と「売上高」を必ず確認する
  • セール後の実質原価率も別計算で把握する
  • 前年同月や過去3カ月との推移を比較する

数字は意外なほど素直に現実を映し出します。「原因がわからない赤字」も、原価率を追うことで輪郭が見えてきます。

意思ある数字管理で原価率目標を設定

  • 高価格帯ブランドであれば、原価率40%でも利益が出る場合がある
  • PB商品を強化して粗利率を高める戦略なら、原価率30%を目標にする
  • セール比率を減らして利益率を優先するなら、原価率改善が経営の鍵になる

「自店にとって最適な原価率はいくらなのか」を考えることが経営改善の第一歩です。

数字分析から行動計画へ転換

  • 原価率を下げるために仕入れ交渉を行う
  • セール戦略を見直して定価販売の比率を高める
  • 在庫回転率も併せて管理し、キャッシュフロー改善を狙う

「数字を知る → 改善行動を起こす」という循環を回すことで、初めて数字が利益を生む武器になります。

原価率を未来予測のコンパスとして活用

原価率を管理することで、「このままでは半年後に資金がショートする」といった未来のシナリオが見えてきます。

数字をコンパスにすれば、在庫発注・仕入戦略・販売施策をすべて未来逆算型で考えられるようになります。

原価率管理でアパレルショップの利益とキャッシュフローを確実に改善するクロージング

売上はあるのに利益が残らない──その理由の多くは数字の奥に隠れています。特にアパレルショップでは、「仕入れ」「在庫」「セール戦略」が複雑に絡み合い、原価率が高止まりするリスクが常につきまといます。

でも、原価率は単なる会計上の指標ではありません。それは、「これからどれだけ利益を残せるか」を示す未来のコンパスです。

あなたのお店の原価率は、今どれくらいですか?その数字を、最後に確認したのはいつですか?

原価率を正しく把握し、具体的な行動につなげるだけで、キャッシュフローも利益率も確実に改善します。数字を“知る”だけでなく、“使いこなす”ことで、経営の景色は大きく変わるはずです。

この記事は「会計数値の糸口から」シリーズのひとつです。数字という糸口をたどることで、経営のリアルを解きほぐし、具体的な改善策を一緒に考えていきます。

  • 「売上はあるのにお金が残らない」
  • 「原価率が高い気がするけど、原因がわからない」
  • 「数字をどう経営に活かせばいいのか知りたい」

そんな悩みが少しでもあるなら、お気軽にご相談ください。数字は、あなたを責めるためではなく、未来を切り開くためにあります。

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数字の裏側にある悩みは、決してあなただけのものではありません。
もし「うちも同じかもしれない」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
現場の声を丁寧にお聴きしながら、数字を“味方”に変える具体的な一歩を一緒に見つけていきましょう。


なお、本記事で触れた会計指標をはじめ、経営に欠かせない数字をシンプルに見える化できるのが、
当事務所オリジナルの 「わかるシート」 です。
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