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リード|これは「マッサージ業の倒産」の話ではない
健康志向の高まりやストレスケアへの関心を背景に、リラクゼーション市場は拡大を続けています。
身体の不調を整えたい人、疲れを和らげたい人、日常のコンディションを保ちたい人は確かに増えており、マッサージや鍼灸、接骨、もみほぐしといったサービスへの需要は今も存在しています。
その一方で、2025年度の「マッサージ業」の倒産は108件となり、過去30年で最多を更新しました。
一見すると不思議な現象です。
需要があるのに、なぜ潰れるのか。
市場が伸びているのに、なぜ生き残れないのか。
しかし本質は、需要の有無ではありません。
問われているのは、その需要を利益に変えられる構造を持っているかどうかです。
マッサージ業は、人に依存するサービスです。
施術の質、接客、カウンセリング、再来店の動機づけまで、すべてが現場の人に大きく依存します。
それにもかかわらず、価格競争は激しく、低価格店も増え、光熱費や人件費は上がり続けています。
つまり今、起きているのは「人気がない業界の衰退」ではありません。
需要があっても、構造が弱ければ利益は残らない。
その現実が、もっとも分かりやすく表れているのがこの業界だと言えます。
この記事を読むことで得られること
- マッサージ業界で「需要があるのに倒産が増える」背景を、競争構造の視点から整理できます
- 人に依存するサービス業が、なぜ価格競争に入ると利益を残しにくくなるのかが見えてきます
- 中小企業が「伸びる市場」に入る前に、何を設計すべきかの判断軸が明確になります
まず結論:需要がある市場でも、利益が残る構造を持たなければ生き残れません。問われているのは市場の人気ではなく、利益を生み出せる設計があるかどうかです。
マッサージ業で何が起きているのか――倒産件数・競争環境から見る現状整理
まず確認しておきたいのは、マッサージ業を取り巻く足元の事実です。
2025年度に倒産した「マッサージ業」は108件となり、1996年度以降の30年間で最多を更新しました。これまで最多だった2019年度の98件を上回っており、業界全体として厳しい環境に置かれていることが分かります。
しかも、倒産した企業の多くは小規模事業者です。負債額では1億円未満がすべてを占め、資本金でも1000万円未満が大半となっています。つまり、地域で営業する小規模な施術所やリラクゼーション店ほど、厳しい影響を受けやすい状況が表れています。
一方で、需要そのものがなくなっているわけではありません。健康志向の高まりや、ストレス、自律神経の乱れ、肩こり、腰痛といった悩みを背景に、施術サービスへの関心は引き続き存在しています。実際、「整骨院」「接骨院」「鍼灸院」「カイロプラクティック」などを含む施術所数は増加傾向にあり、リラクゼーション目的の店舗も増えています。
つまり、市場が縮小しているから倒産が増えている、という単純な構図ではありません。
現実には、需要がある一方で、参入も増えています。業態をまたいだ競争が激しくなり、接骨院、鍼灸院、整体、もみほぐし、リラクゼーション店などが、同じ顧客層を奪い合う状況になっています。さらに、大手チェーンや低価格業態の拡大によって、価格競争も強まっています。
そこに加えて、人件費や光熱費などの運営コストが上昇しています。人の手で価値を生み出す業種である以上、コスト上昇の影響を受けやすい一方で、施術料へそのまま転嫁しにくい環境が続いています。
整理すると、今この業界で起きているのは、
「需要はある」
「参入も増える」
「価格競争は激しい」
「コストは上がる」
という四つの現象が同時に進んでいる状態です。
ここでは、良い悪いの評価はまだ行いません。まずは、マッサージ業界が成長市場でありながら、倒産件数は過去最多という、一見矛盾した状況にあることを押さえておく必要があります。
健康志向とストレス社会の中で、なぜマッサージ業への需要は続いているのか
倒産が増えている一方で、マッサージ業への需要そのものは消えていません。むしろ一定の広がりを保ち続けています。ここを見誤ると、この業界の本質はつかめません。
背景にあるのは、まず健康志向の高まりです。年齢を問わず、日常的に身体を整えたい、未病の段階でケアしたいという意識は確実に広がっています。肩こりや腰痛、疲労感といった不調を「我慢するもの」ではなく、「整えるもの」と捉える人が増えたことで、施術サービスは以前より身近な存在になりました。
加えて、現代はストレス要因の多い社会でもあります。長時間のデスクワーク、スマートフォンの使用、睡眠の質の低下、対人ストレス、気候変動による体調不良など、心身に負担をかける要素はむしろ増えています。そうした中で、自律神経の乱れ、頭痛、慢性的な疲労感、首肩の張りなどを訴える人は少なくありません。
特にコロナ禍以降、人々の生活スタイルは大きく変わりました。テレワークの定着によって身体の使い方が変わり、運動不足や姿勢不良が新たな不調を生みました。一方で、在宅時間が増えたことにより、自分の体調や疲労に意識が向きやすくなった面もあります。
また、マッサージ業と一口にいっても、実際には業態が多様です。整骨院、接骨院、鍼灸院、整体、カイロプラクティック、もみほぐし店、リラクゼーションサロンなど、利用者の目的に応じて選択肢が細かく分かれています。痛みの改善を求める人もいれば、リラックスや美容、コンディション維持を目的とする人もいます。この裾野の広さが、需要を一定水準で支えているとも言えます。
さらに、SNSや動画サイトを通じて、身体のケアや姿勢改善に関する情報が日常的に発信されるようになったことも影響しています。以前であれば施術所に行く発想がなかった層にも、身体を整えるという習慣が浸透しつつあります。
つまり、需要が続いている理由は明確です。
身体の不調を抱える人が増えていること、
ケアへの意識が高まっていること、
サービスの選択肢が広がっていること。
この三つが重なっているからです。
だからこそ、この業界で起きている問題は「需要がないから厳しい」のではありません。需要があるにもかかわらず、利益が残らない構造になっている。そこに、このテーマの難しさがあります。
「需要はあるのに、なぜか利益が残らない」
そう感じている場合、
それは努力ではなく“構造”の問題かもしれません。
需要があるのになぜ潰れるのか――利益を削る「競争構造」の正体
では、なぜ需要があるにもかかわらず、倒産が増えているのでしょうか。ここで見なければならないのは、個々の店舗の努力不足ではなく、業界全体の競争構造です。
現在のマッサージ業界では、同じような悩みを抱えた顧客を、さまざまな業態が取り合っています。整骨院、接骨院、鍼灸院、整体、カイロプラクティック、もみほぐし店、リラクゼーションサロン。表面的には違うサービスに見えても、顧客側から見れば「肩こりを何とかしたい」「疲れを取りたい」「身体を整えたい」という同じニーズに対して競合しているケースが少なくありません。
ここに、大手チェーンや低価格業態の参入が加わります。特に「もみほぐし」系の店舗は、価格の分かりやすさと入りやすさを武器に市場を広げてきました。短時間・低価格のサービスは利用のハードルが低く、新規客を取り込みやすい一方で、周辺の事業者にとっては価格競争圧力になります。
さらに、競争が激しくなると、集客のための販促も過熱します。初回無料、割引クーポン、口コミ投稿特典、SNS発信、動画配信。どれも顧客接点を増やすためには有効ですが、同じような施策が広がるほど差別化しにくくなり、結果として値引きと広告コストの消耗戦になりやすくなります。
問題は、こうした競争の中で、施術の価値と価格の境目が見えにくくなっていることです。
顧客から見ると、
「この店はなぜ高いのか」
「何が違うのか」
が十分に伝わらなければ、価格で比較されやすくなります。すると、専門性や丁寧さ、本来なら時間をかけて積み上げるべき価値が、価格競争の中で埋もれてしまいます。
しかもこの業種は、人が価値そのものです。施術者の技術、接客、ヒアリング力、提案力。こうした人に依存する要素が大きい一方で、価格だけは市場競争に引っ張られやすい。つまり、コストは上がりやすいのに、売価は上げにくいという構造になっています。
整理すると、倒産が増えている理由は単純です。
需要はある。
しかし供給が増えすぎている。
その結果、価格競争が激しくなり、利益が削られる。
そこに人件費や光熱費の上昇が重なる。
この構造の中で、小規模事業者ほど耐えにくくなるのです。
つまり、この業界で起きているのは「人気がないから潰れる」のではありません。
需要のある市場で、競争構造が利益を奪っているということです。
サービス業で起きやすい構造問題――「人に依存する仕事」が価格競争に入ると何が起きるのか
マッサージ業界で起きていることは、この業界だけの特殊な問題ではありません。むしろ、多くのサービス業に共通する構造問題が、分かりやすく表れていると見るべきです。
その核心にあるのが、人に依存する仕事でありながら、価格競争に巻き込まれやすいという矛盾です。
マッサージ業は、機械や設備だけで価値を生み出す仕事ではありません。施術者の技術、接客、カウンセリング、空気づくり、継続利用への導き方など、価値の大部分が「人」によってつくられます。言い換えれば、売っているのは単なる施術時間ではなく、施術者の経験、判断、配慮、信頼関係です。
ここにこの業種の難しさがあります。
人に依存する以上、簡単には効率化できません。施術時間を極端に短くすれば品質が落ちますし、人を減らせば回らなくなります。技術のある人材を確保し、育て、定着してもらう必要があります。つまり、人件費を削ることがそのまま価値の毀損につながりやすい業種だということです。
にもかかわらず、市場では価格比較が起きやすい。
「60分いくら」
「初回無料」
「今だけ割引」
といった打ち出しが前面に出るほど、顧客は価格を基準に選びやすくなります。
すると何が起きるか。
価値の源泉は人なのに、評価軸は価格になる。
このズレが、経営を苦しくします。
本来であれば、
- 丁寧なヒアリング
- 身体の状態に合わせた提案
- 継続的なケア設計
- 安心して通える関係性
といった部分が価値になるはずです。ところが、それが十分に言語化されず、顧客にも伝わっていないと、「結局どこも同じなら安い方でいい」という判断になりやすくなります。
この構造は、マッサージ業に限りません。美容、教育、コンサルティング、介護、接客サービスなど、人が価値を担う業種では共通して起こり得ます。人が提供する価値を、価格だけで比較される状態に入った瞬間、利益は薄くなり、働く人も疲弊しやすくなります。
つまり、ここで起きている問題は単なる値付けの問題ではありません。
人に依存するビジネスが、価格競争に入った時点で構造的に苦しくなるということです。
だからこそ必要なのは、「安くする工夫」ではなく、人が生み出す価値を価格以外の軸で伝え、選ばれる構造をつくることです。価格競争から少しでも距離を取れなければ、人に依存するサービス業ほど、消耗戦に入りやすくなります。
診断士視点:利益は努力ではなく「構造」で決まる
現場で経営を見ていると、よく聞く言葉があります。
「もっと頑張らないといけない」
「技術を上げればなんとかなる」
「接客を丁寧にすればリピートが増える」
どれも間違いではありません。
しかし、これだけでは利益は安定しません。
なぜなら、利益は単発の努力ではなく、構造によって決まるからです。
例えば、同じように技術があり、同じように努力している店舗でも、結果には差が出ます。
- 価格を自分で決められるか
- リピートが自然に生まれる導線になっているか
- 広告に頼らなくても集客できる状態か
- 施術者に負荷が集中しすぎていないか
- 利益が残る単価・回転・コストのバランスになっているか
こうした要素が整っているかどうかで、同じ努力でも結果は大きく変わります。
逆に言えば、構造が整っていない状態で努力を重ねるほど、現場は疲弊します。
施術時間を増やす、割引を増やす、広告を増やす。
その場しのぎの対応が積み重なるほど、利益はむしろ削られていきます。
👉 ここで重要なのは、
利益は「どれだけ頑張ったか」ではなく、「どう設計されているか」で決まるという視点です。
例えば、
- どの価格帯で勝負するのか
- 誰に来てもらうのか
- どのくらいの頻度で通ってもらうのか
- どの施術にどれだけ時間を使うのか
- どこまで人に依存するのか
こうした前提をどう組み立てるかが、そのまま利益構造になります。
マッサージ業界で起きている倒産の増加は、決して個々の店舗の努力不足ではありません。
構造的に利益が残りにくい状態に入っていることの表れです。
だからこそ必要なのは、「もっと頑張る」ではなく、
👉 利益が残る形に構造を組み替えることです。
経営とは、現場の努力に期待することではなく、
努力が報われる構造を設計することです。
「需要があるのに利益が残らない」状態のまま、続けていませんか
この記事を読んで、
「自分の事業も同じ構造に入っているかもしれない」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
問題は、それが努力や技術の問題ではなく、
利益が残りにくい構造のまま続いてしまっていることです。
利益が残らない構造について相談してみる
下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。
相談内容は、まだまとまっていなくて大丈夫です。たとえば、こんな一文で十分です。
- 「集客はできているのに、なぜか利益が残らない」
- 「価格を上げたいが、競争の中でどう設計すればいいかわからない」
- 「リピートや単価をどう組み立てれば利益が出るのか整理したい」
「利益が残らない」構造の悩み専用フォーム
※営業電話はいたしません。まずは状況の整理からご一緒します。
ソング中小企業診断士事務所
井村淳也が直接お話を伺います。
中小企業への示唆――「人気の市場」に入る前に設計すべきこと
マッサージ業界で起きていることは、他の中小企業にとっても他人事ではありません。
特に注意すべきなのは、「需要がある市場=参入すればうまくいく」ではないという点です。
健康志向、ストレス社会、高齢化。こうしたキーワードを見ると、マッサージやリラクゼーションの分野は一見すると「伸びる市場」に見えます。しかし実際には、同じように感じた事業者が次々と参入し、競争が激しくなり、価格が崩れ、利益が残らなくなるという流れが起きています。
これは多くの業界で繰り返されている現象です。
飲食、美容、教育、ITサービス。どれも「伸びている」と言われた瞬間に参入が増え、競争が激しくなり、構造が崩れやすくなります。
👉 だからこそ重要なのは、
市場の良し悪しではなく、その中でどう設計するかです。
中小企業が考えるべきポイントは大きく分けて三つあります。
- 誰に選ばれるのかを明確にすること
価格だけで比較される状態に入れば、規模の大きい企業や低価格業態に勝つことは難しくなります。特定の悩み、特定の層に対して価値を提供できているかが重要です。 - リピートされる構造を持つこと
単発の来店ではなく、継続的に利用される関係性を設計できるかどうかで、収益の安定性は大きく変わります。 - 利益が残る単価とコストのバランスを持つこと
いくら来店数が増えても、利益が残らなければ意味がありません。時間あたりの単価、施術時間、稼働率、固定費を含めた全体設計が必要です。
また、もう一つ見落とされがちなのが、「やらないことを決める」視点です。
すべての顧客を取りに行こうとすると、サービスはぼやけ、価格競争に入りやすくなります。どの市場に入り、どの市場に入らないのか。その選択自体が、構造を決めます。
👉 中小企業にとって重要なのは、
人気の市場に乗ることではなく、利益が残る形をつくることです。
市場は選べますが、構造は自分でつくるしかありません。
この順序を間違えないことが、これからの経営ではより重要になります。
まとめ|「儲かる市場」ではなく「儲かる構造」をつくる
マッサージ業界で起きている倒産の増加は、単に景気が悪いからでも、人気がなくなったからでもありません。
需要はあります。
身体の不調に悩む人も、ケアを求める人も、これから先も一定数存在し続けるでしょう。
それでも倒産が増えているのは、需要があることと、利益が残ることは別問題だからです。
市場が伸びていても、参入が増えすぎれば競争は激しくなります。
価格が上げられず、コストだけが上がれば、利益は残りません。
人が価値を生む業種ほど、その影響は深刻になります。
👉 つまり、経営で本当に見るべきなのは、
「儲かる市場かどうか」ではなく、「儲かる構造になっているかどうか」です。
誰に選ばれるのか。
なぜリピートされるのか。
その価格で利益が残るのか。
人に依存する価値を、どう伝えるのか。
こうした問いに答えられる状態をつくれているかどうかが、これからの差になります。
最後に問いを置きます。
あなたの事業は、「需要がある」ことに安心していないでしょうか。
それとも、利益が残る構造を自ら設計しているでしょうか。
ここまで読んで、
少しでも引っかかるものがあった方へ。
まだ依頼するか決めていない段階でも大丈夫です。
まずは、今の事業の状態を整理する時間としてご利用ください。
「利益が残らない理由がよくわからない」
そんな一言からでも構いません。

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