昨今、全国の飲食店が厳しい経営環境に直面しています。特に、地域密着型の個人経営の飲食店は、倒産のリスクが高まっています。実際に飲食店の倒産が過去最多のペースで増えており、地元密着型の古くから営業してきた個人経営の飲食店が無くなっていくのは、経済の原則とはいえ寂しい思いがします。本稿では、飲食店の倒産増加の原因と、その対策について中小企業診断士の視点から考察します。
個人飲食店の歴史と現状
個人経営の飲食店は、大手チェーン店とは異なり、地域に根ざした営業形態をとっています。地元の食材を使用し、地域の文化や習慣を尊重した料理やサービスを提供することが特徴です。地元のイベントや祭りに積極的に参加し、地域住民との絆を深めることも重要です。また、常連客との長年の信頼関係は、個人経営の飲食店ならではの強みと言えるでしょう。
歴史をさかのぼると、個人経営の飲食店は地域社会の重要な存在であり、人々が集い、交流する場として機能してきました。昭和時代には、地元の商店街や市場とともに地域経済を支える重要な役割を果たしていました。しかし、昨今の経済環境や消費者行動の変化により、多くの個人経営の飲食店が存続の危機に直面しています。特に、家賃の高騰や原材料費の上昇、人手不足などの問題が経営を圧迫しています。
ファミリーレストラン・ファーストフード店との競合の状況と対策
近年、ファミリーレストランやファーストフード店の増加により、個人経営の飲食店は厳しい競争にさらされています。これらのチェーン店は、規模の経済を活かしてコストを抑え、安価で迅速なサービスを提供しています。また、多様なメニューや統一された品質管理、全国的なプロモーションが強みです。
対策としては、以下のポイントが考えられます。
- 独自性の強化
- 顧客体験の向上
- デジタルマーケティングの活用
地域の特産品を活用し、他にはないメニューを提供することで差別化を図ります。例えば、地元の新鮮な野菜や魚介類を使った季節限定メニューを考案し、地元の風味を楽しんでもらいます。
温かみのあるサービスや、リピーターを増やすための工夫(例えば、ポイントカード制度の導入や顧客の誕生日を祝うイベント)を行います。また、店内の雰囲気を改善し、居心地の良い空間を提供することで、顧客が長居したくなるような工夫をします。
SNSや口コミサイトを活用し、効果的なプロモーションを行います。特にインスタグラムやフェイスブックなどのビジュアル中心のプラットフォームを活用し、美味しそうな料理の写真や動画を投稿することで、視覚的に訴えます。また、定期的にプロモーションキャンペーンを実施し、フォロワーを増やします。
コンビニエンスストアとの競合の状況と対策
コンビニエンスストアも個人経営の飲食店にとっての競合相手です。特に、近年のコンビニ弁当や惣菜の品質向上により、手軽に食事を済ませたい消費者が増加しています。コンビニは24時間営業で、いつでも利用できる利便性が魅力です。
対策としては、以下のポイントが考えられます。
- 品質の向上
- 健康志向のメニュー
- 迅速な対応
食材の質を高め、手作り感のある料理を提供します。例えば、自家製のソースやドレッシングを使用し、他店とは一味違った風味を楽しんでもらいます。また、調理方法にこだわり、健康志向の消費者にアピールします。
健康志向の消費者に対応したメニュー(オーガニック食品や低カロリーメニュー、アレルギー対応メニューなど)を提供します。例えば、地元の農家と提携し、新鮮な有機野菜を使用したメニューを考案します。
テイクアウトやデリバリーサービスを導入し、消費者の利便性を高めます。また、オンライン予約システムを導入し、スムーズな注文と受け取りができるようにします。
今後個人経営の飲食店が生き残るためには
個人経営の飲食店が生き残るためには、常に変化する市場環境に対応し、柔軟な経営戦略を持つことが求められます。特に以下のポイントが重要です。
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地域連携
- 持続可能な経営
- 人材育成
地域の他の事業者や行政と連携し、地域全体の魅力を高めます。例えば、地元のイベントやフェスティバルに参加し、地域全体でのプロモーションを行います。また、地域の特産品を使用した共同メニューの開発なども効果的です。
環境に配慮した経営を行い、持続可能なビジネスモデルを構築します。例えば、食品ロスを減らすための取り組みや、エコフレンドリーな包装資材の使用を推進します。また、再生可能エネルギーの利用や地元の生産者との協力を強化し、環境負荷の少ない経営を目指します。
従業員のスキルアップを図り、質の高いサービスを提供します。例えば、定期的な研修を実施し、調理技術や接客スキルの向上を図ります。また、働きやすい職場環境を整え、従業員のモチベーションを高めることも重要です。
中小企業診断士の視点から
中小企業診断士として、経営者の方に向けて飲食店経営の改善につなげられる施策を考えてみました。
- 経営状況の定期的な見直し:定期的に経営状況を見直し、問題点や改善点を明確にします。例えば、収支計画を見直し、コスト削減や収益拡大の方法を検討します。また、経営戦略の修正や新たなマーケットの開拓も考慮します。
- 外部資源の活用
- リスクマネジメント
- お店独自の強みをいかす
- 近隣の別のお店と連携または合併して強化する
- 地域の商店街や自治体と連携する
- 若者を取り込むための方策を検討する
専門家のアドバイスや、公的支援制度を積極的に活用します。例えば、中小企業支援センターや商工会議所からの助成金や相談サービスを利用することで、経営改善のヒントを得ます。もちろん、当事務所も全力でサポートさせていただきます。
リスクを最小限に抑えるための対策を講じます(例:保険の活用、事業継続計画の策定など)。例えば、自然災害やパンデミックなどのリスクに対する備えを強化し、事業の継続性を確保します。
個々の店が持つ強みや特色を積極的に活用し、他店との差別化を図ります。例えば、特定の料理のスペシャリストとしてのブランドを確立し、それを前面に押し出すことで集客を図ります。店長やシェフの人柄、キャラクターを効果的に活用します。その際、全国自治体で盛んな「ゆるキャラ」のようなオリジナルのキャラクターイラスト等を作るのもイメージアップに効果的です。また、お店のストーリーや歴史を活かしたマーケティングも効果的です。ファミリーレストランやコンビニエンスストアと大きく異なることは、「この人の作る料理はこの店でしか食べられない」という唯一性です。個人飲食店はオーナーシェフであることが多いため、オーナーがこれまでどのような思いでお店を立ち上げ、運営してきたのか、どんな思いを込めて料理を作っているのか、こだわりは何か、お客様への思いは、といった「そのお店ならではの物語」が必ず、あるはずです。そういった顧客の心に訴えかけるような戦略は、差別化を進めていくうえで大変効果的です。
同じ地域の他の飲食店と連携し、イベントや共同プロモーションを行うことで、相互に集客効果を高めます。また、合併によって経営資源を集約し、競争力を高めることも検討します。例えば、共同でのクーポン発行やスタンプラリーの実施などが考えられます。さらに、経営資源の面から考え、お互いの強みを連結させさらなる競争力強化を目指す方法もあります。例として、自社が技術力に強みを持つものの地元の高品質な材料仕入れのルートを持たないという場合、そのようなノウハウを持つパートナーを探すことが活路を見出すヒントになるでしょう。
地域の商店街や自治体と連携し、共同でイベントやキャンペーンを企画し、地域全体の魅力を向上させます。例えば、商店街全体でのフェスティバルやフリーマーケットを開催し、その際に自店の特産品やサービスを紹介する機会を増やします。また、地元の観光スポットや文化施設と連携し、観光客向けのパッケージプランを提供することで、新たな顧客層を取り込むことができます。地元商店街の活性化を図りながら、自らも生き残りさらなる発展を目指す、というWin-winの関係構築を地元から発信していく取り組みをアピールすることで、自治体も大きく取り上げ、積極的に協力してくれるでしょう。
若者の嗜好やトレンドを把握し、それに合わせたメニューやサービスを提供します。例えば、インスタ映えする料理の考案や、若者に人気のある飲料(クラフトビールやカフェ風ドリンク)の導入などが効果的です。また、SNSやインフルエンサーを活用したプロモーションも検討し、若者層へのアプローチを強化することが求められます。
まとめ
地域密着型の個人経営の飲食店は、地域社会の重要な一部であり、その存続は地域全体の活力に直結します。私自身も事業を立ち上げ16年経過しますが、自分の事業への思いはとても強いものがあります。何度も苦労を経験し、もうだめかもしれないという危機に直面しつつも、何とか乗り越えてさらなる成長を目指す。経営者の方であれば、どなたでも同じような経験をされてきているのではないでしょうか。だからこそ昨今の飲食店の倒産が増えている状況を何とかしたいと中小企業診断士として強く感じています。
経営者の皆さまがこれらの対策を実践され、引き続き地域に愛される店舗運営を行えるよう、心から応援しています。もし、さらなるアドバイスやサポートが必要であれば、いつでもお気軽にご相談ください。無料相談だけでも大歓迎です。皆さまの成功を心より祈っています。
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