営業代行に頼らない成長のための対話~資金繰りの安定と自社営業力の再構築【経営相談の窓口から】 | ソング中小企業診断士事務所

営業代行に頼らない成長のための対話~資金繰りの安定と自社営業力の再構築【経営相談の窓口から】

営業代行に頼らない成長のための対話~資金繰りの安定と自社営業力の再構築

動画で見る経営相談の窓口からの記事説明

※この動画は「経営相談の窓口から」全記事に共通して掲載しています。

営業活動を外部に委託する「営業代行」は、一見すると手早く売上を伸ばせるように思えます。しかし、成果が出ずに資金だけが減り、会社の経営を圧迫してしまう例も少なくありません。
この記事では、営業代行への投資が実を結ばず、資金繰りの悪化に悩む中小企業の社長が、経営の立て直しを図るために相談に訪れた事例を紹介します。外注頼みから脱却し、自社に営業の仕組みを取り戻すまでの道のりを、対話形式でお伝えします。

【登場人物】
経営相談の窓口から~微笑む経営者
経営者:BtoB向けにIT機器のメンテナンスや保守サービスを提供する会社の代表。創業から10年、堅実に黒字を維持してきたが、さらなる成長を目指して営業代行に大きな投資を行った。しかし思うような成果が得られず、資金繰りが悪化。返済負担と先行きへの不安を抱えている。
経営お悩み解決:井村淳也
経営コンサルタント:ソング中小企業診断士事務所代表。中小企業診断士として、数字に基づく分析と現場の実態を踏まえた改善策を得意とする。外注頼みではなく、自社に“仕組みを残す”支援を重視し、相談者に寄り添いながら経営改善をサポートする。

設定:営業代行に多額の資金を投じたものの成果が得られず、資金繰りが逼迫した社長が、今後の経営の立て直しを図るために井村に相談を持ちかけるところから、今回の対話が始まります。

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
記事・ツール・コラム・思想─すべては一つの設計思想から生まれています。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

経営相談の窓口から
失敗事例の切り口から
会計数値の糸口から

現場の声を起点に、課題の本質を捉える入口。
今日から動ける“実務の手がかり”を届けます。

時事・構造

診断ノート
経営プログレッション
 

経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

思想・感性

日常発見の窓口から
迎える経営論
響く経営論

見えない価値や関係性の温度に光を当てます。
感性と論理が交差する“気づきの場”です。

実装・仕組み

わかるシート
つなぐシート
みえるシート

現場で“動く形”に落とし込むための仕組み群。
理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

相談者のプロフィールと課題の背景

相談者は、首都圏でBtoB向けにIT機器のメンテナンスや保守サービスを提供する会社を経営する50代の男性社長です。
創業から10年、地道に顧客を増やしながら黒字を維持してきましたが、さらなる成長を目指して昨年営業代行に大きな投資を行いました。

しかし、結果は期待に届かず、契約終了時には成果がほとんど残らないまま借入金だけが残る状況に。今期に入ってからは案件が急減し、決まっている仕事も来期以降に集中しているため、直近の資金繰りに不安を抱えるようになりました。

また、日々の業務に追われるなかで、営業活動の記録や資金繰りの管理が整理されておらず、外注に頼っていたため社内に営業ノウハウが蓄積されていないことも明らかになりました。
金融機関への追加融資を検討する中で、現状を整理し立て直しを図るため、経営コンサルタントへの相談に至りました。

導入 ~ 概要説明

中小企業診断士・井村淳也

本日はご相談いただきありがとうございます。まずは会社のこれまでの歩みと、現在のお困りごとをお聞かせいただけますか。

悩んでいる人

はい。弊社は法人向けにIT機器のメンテナンスや小規模システムの保守を手がけており、創業して10年になります。これまで決して派手な成長ではありませんでしたが、常連のお客様に支えられ、なんとか黒字を続けてきました。ただ昨年、営業をもっと安定させようと考え、思い切って営業代行に投資したんです。

中小企業診断士・井村淳也

営業代行に踏み切られたのは、会社の成長を加速したいというお気持ちからだったのですね。

悩んでいる人

そうなんです。ところが結果は期待外れで、成果がほとんど出ないまま借入金だけが残ってしまいました。しかも今期に入ってからは案件が急に減り、決まっている仕事も来年以降のものが多いんです。当面の売上が足りず、資金繰りが一気に厳しくなってきました。

中小企業診断士・井村淳也

営業に関しては外部に任せたもののノウハウが社内に残らなかった。さらにキャッシュの流れが悪化したという状況ですね。

悩んでいる人

はい。実は来週、日本政策金融公庫に相談に行く予定です。ただ、すでに信用金庫からも借りていますし、正直通るのかどうか不安です。返済はこの2年間、一度も滞らせたことはないのですが…。

会社の状況

項目 内容(アレンジ済)
業種 法人向けIT機器メンテナンス・サービス業
創業年数 約10年
経営状況(昨年度まで) 細いながらも黒字を維持
営業強化策 営業代行に約○百万円を投資
結果 成果が乏しく、借入だけが残る
今期の課題 案件が減少、確定案件は来期以降が中心
資金繰り 公庫への追加融資を検討中、返済遅延なし

一番困っていること

中小企業診断士・井村淳也

まず、今いちばん頭を悩ませているのはどの点でしょうか。

悩んでいる人

やはり資金繰りです。ここ数か月で案件が急に減って、毎月の返済や固定費の支払いが重くのしかかっています。先に決まっている案件はあるものの、納品や入金は来期以降。目先の売上が足りず、このままだと資金ショートのリスクがあります。

中小企業診断士・井村淳也

資金の流れが細ってしまったわけですね。営業の体制についてはどうお考えですか。

悩んでいる人

正直に言うと、もう営業代行は使いたくありません。あの時は、営業が強化できればすぐに売上が伸びると信じていたんですが、結局は高い授業料だけ払った形です。本当は営業マンを雇いたいのですが、その人件費をまかなう余裕が今はありません。

中小企業診断士・井村淳也

営業の外注には頼れず、かといって社内で人を増やせない。そのジレンマがあるのですね。

悩んでいる人

はい。加えて、公庫への融資も確実ではないので、とにかく次の一手が見えず、夜もよく眠れません。

社長の悩み

課題 内容
資金繰り 今期の売上不足で資金ショートが懸念。来期案件はあるが今すぐの現金が足りない
営業戦略 代行は不信感があり再利用したくないが、自前の営業マンを雇う余力もない
心理的負担 過去の投資失敗による後悔と、将来の見通しが立たない不安
中小企業診断士・井村淳也

まずは、この切迫した資金繰りと営業の両方を整理して優先順位をつけることが重要です。焦りのなかで次の一手を誤ると、かえって体力を削ぎかねません。

悩んでいる人

そうですね…。一度冷静に状況を整理し、現実的な選択肢を見つけたいです。

問題点の把握

中小企業診断士・井村淳也

資金繰りの不安は大きな問題ですが、その背景には営業の仕組みが機能していないことがありそうです。少し詳しくお聞かせください。昨年の営業代行では、どのような取り組みをされましたか。

悩んでいる人

代行会社に月額でかなりの金額を支払って、アポイントの獲得や提案まで任せました。しかし、案件はほとんど受注につながらず、結局は数字だけが積み上がらないままでした。

中小企業診断士・井村淳也

営業代行を利用した成果の検証や改善策は、その後どのようにされましたか。

悩んでいる人

正直に言えば、そこをきちんと分析しないまま、契約を終了してしまいました。日々の業務と返済に追われて、冷静に振り返る余裕がなかったんです。

中小企業診断士・井村淳也

なるほど。代行に頼ったものの、知見や仕組みが社内に蓄積されなかったわけですね。

ヒアリングで見えてきた現状

項目 現状
営業活動の記録 案件の見込みや商談状況のデータが整理されていない
資金繰り 1〜3か月先のキャッシュフロー予測が不十分
案件の構造 既存顧客からの受注が多いが、新規顧客開拓の仕組みが弱い
営業代行の検証 成果・費用対効果を十分に検証せず終了
組織体制 専任営業マンがおらず、社長が多くを兼務

対応方針

中小企業診断士・井村淳也

営業代行を使ったこと自体が問題ではなく、活用したデータや学びを社内に残せなかった点が大きいようです。資金繰りの管理も、もっと見える化できる余地がありますね。

悩んでいる人

たしかに。代行にお金を払っただけで終わってしまい、振り返れば自分たちの営業力は何も育っていません。

中小企業診断士・井村淳也

現時点で手を打つべきは、短期的な資金繰りの安定と、営業の仕組みづくりの二本立てです。これらを分けて考えることで、今の焦りを整理できます。

悩んでいる人

その整理ができるだけでも少し気持ちが落ち着きます。確かに、両方がごちゃまぜになっていて混乱していました。

課題の抽出

中小企業診断士・井村淳也

ここまでお話を伺って、状況を大きく3つの課題に整理できそうです。

悩んでいる人

3つ…ですか?

中小企業診断士・井村淳也

はい。まずは短期的に資金繰りを安定させること。次に、目先の売上をどう立て直すか。そして最後に、中長期的に営業力を社内に育てる仕組みをつくることです。

抽出された3つの課題

課題 内容
課題① 短期の資金繰り改善 当面の支払いに備え運転資金を確保する; 公庫への相談に向け資金繰り表を整備し過去の返済実績を示す準備が必要
課題② 目先の売上の確保 既存顧客への深耕と短期案件の掘り起こしを優先し即効性のある営業施策を実行する
課題③ 営業の仕組みづくり 自社内で顧客管理と商談進捗を可視化し外注依存を減らして安定した営業体制を整える

優先順位と方針

中小企業診断士・井村淳也

まずは資金繰りの改善が最優先です。現金が回らなければ、営業の立て直し以前に会社が動けなくなります。そのうえで、短期の売上と中長期の営業力強化を並行して進めるイメージです。

悩んでいる人

確かに、問題が頭の中でごちゃごちゃしていましたが、整理されると次にやるべきことが見えてきます。

中小企業診断士・井村淳也

課題を分けて考えないと、資金繰りの焦りのなかでまた無理な投資に走ってしまうリスクがあります。今は、足元の資金を守りつつ、自社に残る仕組みをつくることが重要です。

悩んでいる人

“外に丸投げしない”という方向性が、改めて必要だと感じました。

具体的な施策の提案

中小企業診断士・井村淳也

ここからは、今お話しした3つの課題に対して、具体的な進め方をご提案します。

悩んでいる人

お願いします。正直、次に何をしたらいいか見えなくて…。

中小企業診断士・井村淳也

1. 資金繰りの安定化(最優先)

公庫への相談準備:これまでの返済実績(2年間遅延なし)を明確に示す。資金繰り表を作成し、入出金の見通しを数字で示す。

信金との関係維持:既存借入先とも連携し、返済計画を説明。

支出見直し:不要な外注コストや広告費を一時的に縮小。

金融機関に対しては、返済をきちんと続けてきた信用をしっかり伝えることが大事です。

悩んでいる人

数字で示せるように準備しておけば、公庫も検討してくれる可能性はあるのですね。

中小企業診断士・井村淳也

2. 目先の売上の確保(緊急対応)

既存顧客フォローの強化:過去の取引先に向けてメンテナンス契約や追加提案を実施。

短期案件の掘り起こし:納期が早い案件・小口でも即入金につながる案件を優先。

紹介営業の仕組みづくり:既存顧客や協力会社からの紹介を制度化(インセンティブ導入など)。

新規顧客をゼロから開拓するよりも、既存のお客様にもう一歩踏み込むほうが短期的には早い成果につながります。

悩んでいる人

確かに、そこに目を向けていませんでした。

中小企業診断士・井村淳也

3. 営業の仕組みづくり(中長期対応)

営業活動の見える化:案件管理シートを整備し、見込み・進捗・受注見通しを数値で把握。

社内営業力の育成:当面は社長と数名のスタッフが主体となり、ノウハウを積み上げる。

採用は時期を見極めて:体制と仕組みが整ってから営業人材の採用を検討。

営業を外部に丸投げしても仕組みが残らなければ、同じ問題が繰り返されます。社内でデータを持ち、育てていく仕組みが重要です。

悩んでいる人

数字と仕組みを整えた上で採用に踏み切る。確かに、その順番のほうが安心です。

提案のまとめ

課題 具体的な施策
資金繰りの安定化 公庫への相談準備、資金繰り表整備、不要コスト削減
目先の売上確保 既存顧客フォロー強化、短期案件掘り起こし、紹介営業制度
営業の仕組みづくり 案件管理シートによる見える化、社内ノウハウの蓄積、体制確立後の採用

今後の方針

中小企業診断士・井村淳也

短期的には資金繰りの安定と既存顧客のフォロー、中長期的には仕組みづくりが柱です。これで外部に振り回されず、会社に力が残る形を目指しましょう。

悩んでいる人

次にやるべきことが明確になってきました。特に“仕組みを残す”という言葉が響きました。

今後に向けての明るい展望

中小企業診断士・井村淳也

まずは資金繰りを安定させて一息つける状況をつくり、そのうえで売上を立て直す。これができれば、会社は確実に回復していきます。

悩んでいる人

そうなれば本当に安心できます。実は、これまでは目先の営業数字だけを追いかけてしまい、会社をどう育てるかという視点を持てていませんでした。

中小企業診断士・井村淳也

仕組みと数字を整えれば、営業も投資も無理なく進められるようになります。外注に頼りきるのではなく、自社に力を蓄える流れができるはずです。

取り組み開始から数か月後の変化(イメージ)

項目 変化の内容
資金繰り 公庫との相談を経て追加融資が実行され、返済計画が安定
営業活動 既存顧客向け提案が成果を出し始め、短期案件がいくつか受注
社内体制 案件管理シートにより営業の進捗が見える化され、スタッフも営業活動を意識するように
社長の気持ち 焦りが和らぎ、将来への見通しが立ち始める

結びと読者へのメッセージ

悩んでいる人

資金の目処が立ち、営業も少しずつ動き始めたことで、会社に希望が戻ってきました。次は、この取り組みをさらに仕組みとして定着させたいと思っています。

中小企業診断士・井村淳也

一歩ずつ進めば必ず改善はできます。大切なのは、その過程で会社に残る資産──数字とノウハウを積み上げていくことです。

読者へのメッセージ

中小企業診断士・井村淳也

営業の停滞や資金繰りの悪化に直面すると、つい即効性を求めて外部に頼りたくなるものです。しかし、本当に会社を強くするのは、自社に仕組みを残す取り組みです。どんなに厳しい状況でも、問題を整理し、優先順位をつけて対処すれば、必ず道は開けます。

ご自身の状況と重なる部分があると感じた方へ。
議論よりも対話、理論よりも現場、正しさよりも納得感。
これは、私が支援において常に基盤においているスタンスです。

多くの診断士が“数字と理屈”を武器に議論を展開しがちな中、私はまず現場へ出ることを選びます。
職場の空気を感じ、スタッフの声を聴き、そこから生まれる対話と納得を重ねていくことで、
ストラテジーは「本当に働くもの」へと変わっていきます。

この姿勢は、あなたの職場やチームの笑顔を増やす“本質的な支援”へとつながると信じています。


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