精密加工の技術力を武器に次の一手を探る対話(経営相談の窓口から) | ソング中小企業診断士事務所

精密加工の技術力を武器に次の一手を探る対話(経営相談の窓口から)

長年培った精密加工技術を活かし、未来を切り拓くための対話~ 新規事業推進のための組織改革と社員の意識改革への挑戦(経営相談の窓口から)

「高度な技術はある。でも、それをどう活かせばいいかわからない」
長年培ってきた精密加工技術を持つ町工場が、新しい市場開拓や事業の方向性に悩み、立ち止まっていた時にソング中小企業診断士事務所に相談されました。
本記事では、技術の棚卸し価値訴求の整理を通じて、将来を見据えた事業の再構築に取り組んだプロセスをご紹介します。

【登場人物】
経営相談の窓口から~微笑む経営者
経営者:部品製造業の経営者。経営において様々な悩みを抱えている。事業の安定改善を図りたいと考えているが、具体的に何をすればいいのかがわからず、相談できる相手もいない。
経営お悩み解決:井村淳也
経営コンサルタント:企業の経営改善を支援するコンサルタント、ソング中小企業診断士事務所代表、井村淳也。中小企業診断士としての知識と自身の事業経営経験を活かし、相談者の想いに寄り添った実現可能性を考慮した経営改善提言を重視している。

設定:経営者が、新規事業立ち上げに際して効果的な組織形態が分からないことに悩み、コンサルタントに相談を持ちかけた場面から始まる。

相談者のプロフィールと課題の背景

金属部品の精密加工を得意とする製造業の経営者が、ソング中小企業診断士事務所に問い合わせをしました。
長年にわたり特定の業界向けに安定した受注を続けてきたものの、市場環境の変化や取引先の先細りに不安を抱え、新たな活路を模索していました。
自社の強みをどう活かし、次に何を目指すべきかを明確にするため、経営の方向性について相談が寄せられました。

自己紹介と企業、事業、商品、現状、悩みの説明

中小企業診断士・井村淳也

山田社長、本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。ソング中小企業診断士事務所の井村です。

悩んでいる人

井村さん、本日はありがとうございます。山田精密工業の山田です。以前、商工会議所の紹介で井村さんのセミナーに参加させていただき、親しみやすいお人柄と、地に足のついた実践的なお話に感銘を受け、ぜひ一度個別にご相談させていただきたいと思っておりました。

中小企業診断士・井村淳也

セミナーにご参加いただき、光栄です。山田社長、本日はどのようなご相談でしょうか?何か、経営でお悩みになられていることがあるのでしょうか?

悩んでいる人

はい、実はここ数年、ずっと頭を悩ませていることがありまして。弊社は創業から30年、主に自動車部品の精密加工を手掛けてきました。おかげさまで、長年培ってきた技術力には自信があり、大手メーカー様とも安定したお取引をさせていただいております。これまでも、お客様からのご要望に応じたカスタマイズ対応など、小回りの利く対応で競合との差別化を図り、なんとかやってこれました。しかし、ご存じの通り、自動車業界は今、大きな変革期を迎えています。電動化や自動運転など、技術トレンドの変化が非常に速く、従来の部品加工だけでは将来的に厳しくなるのでは、という危機感を強く感じています。このままでは、いつか受注が激減してしまうのではないか、と夜も眠れない日があります。そこで、新たな収益の柱を作るべく、新規事業を立ち上げたいと考えているんです。いくつかのアイデアもあるにはあるんですが、これがなかなか前に進まなくて…。

中小企業診断士・井村淳也

なるほど。長年培われた確かな技術力をお持ちでありながら、将来を見据えて新たな挑戦を検討されているのですね。素晴らしい危機意識だと思います。御社の現状について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?従業員の方々は何名くらいで、組織はどのような形になっているのでしょうか?

悩んでいる人

従業員は正社員が50名ほどです。組織としては、製造部、技術部、営業部、総務部といったように、機能別に分かれています。それぞれ専門性が高く、日々の業務は効率的に回っていると感じています。

中小企業診断士・井村淳也

機能別組織なのですね。製造業では比較的多い組織形態ですね。それぞれの部門が専門性を高め、効率的に業務を遂行するという点ではメリットが大きいと思います。

悩んでいる人

はい、既存事業に関しては、この組織で特に問題なく運営できています。しかし、新しい事業、例えば先ほどお話しした自動車業界の新しい技術に対応するための部品開発や、全く別の分野への進出などを考え始めると、どうも歯車が噛み合わないというか…。

中小企業診断士・井村淳也

具体的にどのような点で、組織が新規事業の足かせになっていると感じられるのでしょうか?

悩んでいる人

まず、新規事業の担当者を決めようにも、既存事業の担当者が手いっぱいで、新しいことに時間を割く余裕がないんです。技術部の人間も、既存製品の改良や顧客からの要望対応に追われています。もし兼任で任せたとしても、既存業務を優先してしまうのは目に見えています。 それに、新規事業のアイデアが出ても、「それ、本当に儲かるの?」とか、「既存の設備じゃできないから無理だ」とか、どうしても既存事業の延長線上で考えてしまいがちなんです。新規事業に必要な、スピード感や柔軟性に欠けていると感じています。

中小企業診断士・井村淳也

なるほど。既存事業で培われた専門性や効率性が、新規事業という未知の領域への挑戦においては、逆に障壁となっている側面があるのですね。これは多くの中小企業が新規事業を立ち上げる際に直面する課題です。

悩んでいる人

まさにその通りで。新しいアイデアがあっても、どの部門が担当するのか、誰が責任者になるのか、どうやって評価するのか、といったことが曖昧になってしまって、結局立ち消えになってしまうんです。今の組織形態が、新規事業を進める上で本当に適切なのか、疑問に感じています。機能別組織が良いのか、それとも事業部制のようなものにした方が良いのか…。このあたりを井村さんにご相談したいと思い、参りました。

中小企業診断士・井村淳也

大変よく理解いたしました。山田社長の新規事業への意欲と、それに伴う組織への問題意識、そして将来へのご不安、しっかりと受け止めました。私もこれまで、多くの経営者の方々が、既存事業の成功体験や組織文化が、新たな挑戦の足かせになってしまう状況を目の当たりにしてきました。御社の強みである精密加工技術やお客様との良好な関係を活かしながら、新規事業を成功させるための組織のあり方を、一緒に考えていきましょう。私の経営理念は「共に考え、悩み、成長できるパートナーでありたい」というものです。一方的に答えを提示するのではなく、山田社長と共に悩み、最適な解決策を見つけていきたいと考えています。

問題点の洗い出し

中小企業診断士・井村淳也

では、早速ですが、先ほどお話しいただいた点も含め、現状抱えている問題点をもう少し掘り下げて整理させていただけますでしょうか。新規事業を進める上で、具体的にどのような壁にぶつかっているか、詳しく教えてください。

悩んでいる人

はい。まず、最大の壁は「リソース(人員・資金・時間)の不足」ですね。先ほども言いましたが、各部門とも日々の既存業務で手いっぱいで、新規事業に専任で人をつけたり、十分な時間を割いたりすることが難しい状況です。資金に関しても、既存事業の維持・拡大に優先的に回さざるを得ない部分があり、新規事業への投資に及び腰になってしまいます。

悩んでいる人

次に、「既存事業との兼任による効率の低下とモチベーションの問題」です。もし新規事業を既存の部門や担当者に兼任で任せたとしても、どうしても目先の既存業務を優先してしまい、新規事業がおろそかになりがちです。評価も既存業務の成果に紐づけられることが多いので、新規事業に積極的に取り組むモチベーションも生まれにくいように感じます。

中小企業診断士・井村淳也

なるほど。既存事業の成功体験や評価体系が、新規事業への取り組みを阻害する可能性があるのですね。

悩んでいる人

ええ。それと、「新規事業の評価基準や判断プロセスの不明確さ」も問題です。既存事業は売上や利益率、生産効率といった明確な指標で評価できますが、新規事業は立ち上げ期にはほとんど売上になりません。長期的な視点が必要なのに、短期的な採算性だけで判断してしまい、少しうまくいかないとすぐに「これはダメだ」となってしまいがちです。会社として、新規事業をどう評価し、いつまで続けるのか、という基準がないんです。

中小企業診断士・井村淳也

新規事業には、既存事業とは異なる評価軸が必要になることが多いですからね。その点、お悩みになるのは当然です。

悩んでいる人

あと、「組織のサイロ化と情報共有の不足」も感じています。機能別に分かれているため、製造部は製造のこと、技術部は技術のこと、営業部は営業のこと、といったように、どうしても自分の部門の視点にとらわれがちです。新規事業は複数の機能が連携しないとうまくいかないことが多いのに、部門間の連携がスムーズではありません。情報共有も十分ではなく、せっかく出たアイデアも、他の部門にスムーズに伝わらなかったり、協力が得られにくかったりします。

中小企業診断士・井村淳也

部門間の壁が、新規事業に必要な横断的な連携を妨げている可能性があるのですね。組織の風通しが悪くなっている、と言い換えることもできるかもしれません。

悩んでいる人

はい。それと、「変化への抵抗感やリスク回避志向」も問題です。長年、既存事業で安定した経営を続けてきた社員の中には、新しいことに挑戦することに抵抗を感じたり、失敗を恐れたりする人がいるようです。これは、過去の成功体験が強い組織ほど起こりやすいのかもしれません。新しいアイデアを出しても、「それは無理だ」という否定的な意見が出やすい雰囲気もあります。

中小企業診断士・井村淳也

新しい取り組みには、どうしても不確実性やリスクが伴いますから、社員の方々が不安を感じるのも無理はありません。しかし、経営者として将来を見据え、変化を恐れずに挑戦する姿勢を示すことが重要です。

悩んでいる人

まさにその通りなんですが、どうすれば社員の意識を変えられるのか、悩んでいます。社員のモチベーションを高め、新しい挑戦に前向きになってもらうにはどうすれば良いのか…。給与などの「外発的動機づけ」だけでなく、仕事へのやりがいや会社への貢献意識といった「内発的動機づけ」が重要だと井村さんのセミナーで学んだのですが、具体的にどうすればそれが実現できるのか、まだ手探り状態です。

中小企業診断士・井村淳也

社員の「内発的動機づけ」は、まさに今後の組織活性化の鍵となりますね。社員の皆さんが「この会社で新しいことに挑戦したい」「自分の仕事が会社の未来に繋がる」と感じられる環境を作ることができれば、新規事業もスムーズに進む可能性が高まります。

悩んでいる人

そうなんです。現在の機能別組織では、どうしても日々の業務に焦点が当たりがちで、会社の将来や新規事業といった大きな視点を持ちにくいのかもしれません。社員一人ひとりが会社の経営を「自分事」として捉える「全員経営」のような意識を持つことが理想なのですが、現状ではまだまだ難しいと感じています。

中小企業診断士・井村淳也

大変貴重なお話をありがとうございます。まとめると、現在の機能別組織において、新規事業推進にあたって、

  • リソースの不足
  • 既存事業との兼任による効率低下・モチベーション低下
  • 新規事業の評価基準・判断プロセスの不明確さ
  • 部門間の連携不足・情報共有の不足(組織のサイロ化)
  • 変化への抵抗感・リスク回避志向
  • 社員の新規事業に対するモチベーション・当事者意識の課題

といった問題点が顕在化しているということですね。

課題の選定

中小企業診断士・井村淳也

先ほど洗い出した様々な問題点の中で、山田社長が最も根本的だとお考えになる課題は何でしょうか? 新規事業を成功させるために、まず解決すべき最も重要なボトルネックは何だと感じられますか?

悩んでいる人

そうですね…。どれも重要な問題なんですが、やはり一番大きいのは、「新規事業を効果的に推進できる組織体制が確立されていない」ことだと思います。人員や資金の不足、評価の不明確さ、部門間の壁、社員の意識…。これらはすべて、新規事業に特化した組織的な仕組みがないことから来ている気がします。今の機能別組織のままでは、新規事業を本格的に進めるのは難しいのではないか、と強く感じています。

中小企業診断士・井村淳也

まさに、それが今回のテーマである「新規事業に強い組織形態」に関わる核心的な課題ですね。既存事業を効率的に回す機能別組織は、その目的においては非常に優れています。しかし、新規事業のように不確実性が高く、既存のルールやプロセスに縛られない柔軟性やスピードが求められる領域では、別の組織のあり方が求められる可能性があります。

悩んでいる人

そうなんです。だから、機能別組織のままではダメなのか、それとも何か別の組織形態に変えるべきなのか、悩んでいます。変えるとしたら、事業部制のようなものか…。でも、弊社のような規模で、大規模な組織改編ができるのかも不安です。

中小企業診断士・井村淳也

山田社長のおっしゃる通りです。組織形態の選択は、企業の規模や事業特性、そして経営戦略によって大きく変わってきます。そして、大規模な組織改編は、従業員に与える影響も大きいため、慎重に進める必要があります。

そこで、今回、私たちが共に解決すべき最も重要な課題は、「御社の現状と将来の新規事業戦略に適した、実現可能な組織体制を検討・構築すること」と設定したいと思います。

これには、単に組織図を変えるだけでなく、新規事業に必要なリソースの確保、評価制度の見直し、部門間の連携強化、そして社員の意識改革といった、様々な側面からのアプローチが必要になります。この課題を解決できれば、先ほど洗い出した他の問題点も、自然と解消されていく道筋が見えてくるはずです。

悩んでいる人

「弊社の現状と将来の新規事業戦略に適した、実現可能な組織体制を検討・構築すること」ですね。まさにそこが知りたいんです。弊社の規模で、現実的にどのような組織の選択肢があり、どう進めていけば良いのか。

中小企業診断士・井村淳也

はい、承知いたしました。では、この主要課題解決に向けて、具体的な解決策を一緒に考えていきましょう。

具体的な解決策の提案

中小企業診断士・井村淳也

課題として「御社の現状と将来の新規事業戦略に適した、実現可能な組織体制を検討・構築すること」を選定しました。これに対し、いくつかの解決策を提案させていただきます。

まず、一般的な組織論として、新規事業を推進する上での組織形態について触れておきたいと思います。

一般的に、企業全体の機能を効率化し、専門性を深めるためには「機能別組織」が適しています。製造は製造部、営業は営業部といったように、各部門がそれぞれの役割を担うことで、効率的な生産や販売が可能になります。御社の既存事業の成功は、この機能別組織のメリットを活かしてきた結果と言えるでしょう。

一方、複数の事業領域を持ち、それぞれの事業で独立した戦略を展開したい場合には「事業部制組織」が有効とされます。事業部ごとに開発、製造、販売といった機能を持たせることで、その事業の顧客ニーズや市場変化に迅速に対応しやすくなります。新規事業は既存事業とは異なる市場や顧客をターゲットにすることが多いため、事業部制のような独立した組織の方が、既存事業の考え方に縛られず、スピード感を持って意思決定やリソース配分を行いやすいと言われています。

しかし、事業部制には、組織全体で見た場合に機能が重複したり、事業部間の連携が難しくなったりといったデメリットもあります。 また、御社のような規模の中小企業では、いきなり大規模な事業部制を導入するのは、人的・資金的な負担が大きく、現実的ではない場合が多いです。

そこで、御社の現状を踏まえると、いきなり全社的に組織形態を大きく変えるよりも、「新規事業推進に特化した、より小規模で柔軟な組織や仕組みを導入する」というアプローチが現実的だと考えられます。 具体的な提案としては、いくつか選択肢があります。

提案1:新規事業推進チームの発足
これは、既存の機能別組織の中に、新規事業専任のチームを設置するという方法です。 チームのメンバーは、各部門から新規事業への高い意欲や適性を持つ社員を選抜し、既存業務との兼任ではなく、できる限り専任とすることが理想です。 チームには、開発、製造、営業など、新規事業に必要な多様なスキルを持つ人材を配置し、機動的に動けるようにします。

メリット: 既存組織を大きく変える必要がなく、比較的短期間で立ち上げられます。 新規事業に特化したチームができることで、リソースを集中させやすくなります。
デメリット: 既存部門との連携や調整が必要になる場合があります。 チームへの権限委譲が十分でないと、意思決定に時間がかかる可能性があります。

提案2:プロジェクト制の導入
特定の新規事業テーマごとにプロジェクトチームを編成し、目標達成に向けて活動するという方法です。 プロジェクトチームは、既存部門から必要な人材を招集して一時的に構成し、プロジェクト終了後は元の部門に戻る、という形も考えられます。

メリット: 特定のテーマに集中してリソースを投入できます。 テーマが終了すれば解散できるため、組織の硬直化を防げます。
デメリット: プロジェクトメンバーの既存業務との兼任負担が大きくなりがちです。 プロジェクト終了後のノウハウ蓄積や、次のテーマへの連携が課題となることがあります。

提案3:社内ベンチャー制度の検討
これは、社員から新規事業のアイデアを募集し、有望なアイデアに対しては、社内のリソースを使って独立した小規模な組織(社内ベンチャー)として事業化を支援する制度です。

メリット: 社員の起業家精神を醸成し、主体性や当事者意識を高める効果が期待できます。 ユニークなアイデアが生まれやすい環境を作れます。
デメリット: 制度設計や運用に手間がかかります。 既存事業との軋轢が生じる可能性もあります。 独立性が高すぎる場合、全社戦略との整合性を保つのが難しくなることがあります。

御社の現状や、どのような新規事業を目指すかによって最適な方法は異なりますが、まずは「新規事業推進チームの発足」や「プロジェクト制の導入」といった、既存組織を活かしながら部分的に新規事業に特化した仕組みを作る方法から検討されてはいかがでしょうか。

悩んでいる人

なるほど。 いきなり事業部制のような大きな組織改編をするのではなく、まずは新規事業専用のチームやプロジェクトを作るということですね。 それは弊社でも現実的に検討できそうです。

中小企業診断士・井村淳也

はい。 これらの組織や仕組みを導入する際には、先ほど問題点として挙がった点への対策も同時に講じる必要があります。

  • リソースの確保: 新規事業チームやプロジェクトに、既存業務とは別に、明確な人員と予算を割り当てます。 社長がリーダーシップを発揮し、戦略的にリソースを配分することが重要です。 必要に応じて、外部の専門家や副業・兼業人材の活用 も検討しましょう。
  • 評価制度の見直し: 新規事業チームや担当者に対しては、既存事業とは異なる、新規事業の特性に合わせた評価指標を導入します。 例えば、短期的な売上目標だけでなく、市場調査の進捗、顧客からのフィードバック、技術的な検証結果など、新規事業の各段階に応じた評価基準を設定します。
  • 部門間の連携強化: 新規事業チームと既存部門との間で、定期的な情報交換や協力体制を構築する仕組みを作ります。 例えば、合同ミーティングの実施や、既存部門の協力を得た際の評価への反映などが考えられます。
  • 社員の意識改革: 新規事業の必要性や、会社が目指す将来のビジョンを社員全体に丁寧に説明し、共有します。 社員一人ひとりが、新規事業が自分たちの仕事や会社の未来にどう繋がるのかを理解し、会社の成長を「自分事」として捉えられるように働きかけます。 MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定なども有効です。 社員の「内発的動機づけ」を高める施策、例えば新しい業務に挑戦する機会の提供や、アイデアを提案しやすい雰囲気作り、小さな成功体験を共有し称賛することなども重要です。
悩んでいる人

社員の意識改革、重要ですね。 どうすれば社員に新規事業への当事者意識を持ってもらえるのか、悩んでいました。 会社の将来ビジョンを共有したり、社員のアイデアを聞いたりする機会を作ることですね。

中小企業診断士・井村淳也

はい。 組織の活性化には、トップダウンのアプローチだけでなく、ボトムアップのアプローチも不可欠です。 現場で働く社員の意見やアイデアを積極的に取り入れることで、より実効性のある新規事業テーマが見つかったり、社員のモチベーション向上にも繋がります。

また、新規事業のアイデアを考える際には、御社の強み を活かせる領域に焦点を当てることも重要です。 精密加工技術や短納期対応といった強みを、ドローンやロボットといった新しい分野で活かせないか、といったように、発想を柔軟にしてみることも大切です。 顧客ニーズ を起点に考える ことも忘れてはなりません。 既存顧客へのアンケートやヒアリング、グループインタビューなども有効です。

悩んでいる人

顧客ニーズですか。 つい技術先行で考えてしまいがちでしたが、お客様が何を求めているのかを深く理解することが、新規事業の成功には不可欠なのですね。 アンケートやヒアリングから始めてみます。

中小企業診断士・井村淳也

それは素晴らしいですね。 まずは低コストで始められる方法から着手し、顧客の生の声を集めることが重要です。

中小企業診断士・井村淳也

まとめると、新規事業推進に適した組織体制の構築としては、まずは既存の機能別組織を活かしつつ、「新規事業推進チームの発足」「プロジェクト制の導入」 を検討する。 そして、その仕組みが機能するように、リソース確保、評価制度見直し、部門間連携強化、社員の意識改革 といった側面からも同時にアプローチしていくことが、御社の現状において最も現実的で効果的な解決策だと考えられます。

実行~評価~改善のフェーズ

中小企業診断士・井村淳也

組織体制の検討や必要な取り組みについてお話ししましたが、重要なのはこれらを机上の空論で終わらせず、実行に移し、継続的に評価・改善していくことです。

悩んでいる人

はい。具体的なアクションプランを立てて、実行に移したいと考えていますが、どこから手を付けるのが良いでしょうか? そして、うまくいっているかどうか、どうやって判断すれば良いのでしょうか?

中小企業診断士・井村淳也

まず、実行のフェーズですが、組織改革は一朝一夕にはできません。焦らず、段階的に進めることが重要です。

中小企業診断士・井村淳也

ステップ1:新規事業テーマの選定とスモールスタート

まずは、複数の新規事業アイデアの中から、御社の強みを活かせ、かつ市場性が見込めるテーマを一つ、あるいは少数に絞り込みます。そして、そのテーマについて、先ほど提案した「新規事業推進チーム」や「プロジェクトチーム」を小規模で発足させます。専任の担当者を数名置き、集中的にリソースを投入できるようにします。

中小企業診断士・井村淳也

ステップ2:詳細な計画策定と実行

選定した新規事業テーマについて、市場調査、顧客ニーズの深掘り、技術的な実現可能性の検証、ビジネスモデルの検討、初期プロトタイプの開発など、具体的な活動計画を策定します。そして、計画に基づいて実行に移します。この段階では、まだ大きな成果は求めず、まずは小さく始めて、市場や顧客の反応を見ながら進めることが重要です。

中小企業診断士・井村淳也

ステップ3:定期的な評価とフィードバック

実行と並行して、定期的に進捗状況を評価します。評価指標は、単なる売上だけでなく、設定した目標(例:特定顧客層へのアプローチ件数、プロトタイプに対するフィードバック件数、技術的な課題の解決度など)の達成度や、活動を通じて得られた学び(成功点、失敗点)などを重視します。定期的なミーティング(例えば週に一度、月に一度など)を開催し、チームメンバー間で情報共有を行い、課題や問題点を早期に発見し、解決策を検討します。社長も積極的に参加し、チームをサポートする姿勢を見せることが重要です。

中小企業診断士・井村淳也

ステップ4:計画の改善と軌道修正

評価の結果を受けて、当初の計画を見直したり、必要に応じて軌道修正を行います。新規事業は不確実性が高いため、計画通りに進まないことの方が多いかもしれません。しかし、その都度状況に合わせて柔軟に対応し、より成功確率の高い方向へと戦略を調整していくことが大切です。

中小企業診断士・井村淳也

私の伴走支援としては、これらの実行、評価、改善のプロセスを、山田社長や新規事業チームの皆様と「共に」行っていきたいと考えています。定期的に御社に伺い、現場の状況を拝見したり、チームメンバーから直接ヒアリングしたり、データ分析をお手伝いしたり、といった形でサポートさせていただきます。

悩んでいる人

井村さんに伴走していただけると、心強いです。やはり一人で進めるのは不安も大きいですから。

中小企業診断士・井村淳也

新規事業は孤独な戦いになりがちですが、パートナーとして共に悩み、解決策を見つけ、小さな成功を共に喜び合うことができればと考えています。

悩んでいる人

具体的な評価方法について、もう少し詳しく教えていただけますか? 先ほどおっしゃったような、売上以外の指標というのは、具体的にどんなものがあるのでしょうか?

中小企業診断士・井村淳也

はい。新規事業のフェーズによって適切な指標は変わってきますが、例えば以下のようなものがあります。

  • アイデア検証フェーズ: 市場規模の調査結果、ターゲット顧客の明確化度、顧客インタビューで得られたフィードバック数、競合分析の結果など。
  • プロトタイプ開発フェーズ: プロトタイプの完成度、ユーザーテストの参加者数と満足度、技術的な課題の解決状況、必要なリソース(時間、費用)の見込みとの差異など。
  • 市場投入初期フェーズ: 特定顧客層へのアプローチ数、初期の問い合わせ件数、トライアル利用者の数とその反応、Webサイトへのアクセス数(デジタルマーケティングを進める場合)、SNSでの言及数、メディア露出の件数など。
  • 事業化フェーズ: 初期顧客獲得数、リピート率(サービスの場合)、顧客満足度、粗利率、損益分岐点達成の見込みなど。

これらを、単なる数値目標として追うだけでなく、「何がうまくいって、何がうまくいかなかったのか」「なぜうまくいかなかったのか」「そこから何を学び、次にどう活かすのか」という視点での評価が重要です。 これが継続的な改善活動に繋がります。

悩んでいる人

なるほど。 新規事業の段階に応じて、見るべき指標が変わってくるのですね。 売上だけにとらわれず、様々な角度から評価し、改善に繋げていくことが重要なのですね。

中小企業診断士・井村淳也

仰る通りです。 そして、これらの活動を通じて得られた知見や学びを、社内で共有することも非常に大切です。 成功事例だけでなく、失敗事例からも多くのことを学べます。 新規事業チームだけでなく、既存部門の社員にも共有することで、全社的な新規事業への理解や、変化への対応力を高めることにも繋がります。

悩んでいる人

社内での情報共有 ですね。 これも部門間の壁をなくすために必要な取り組みだと感じています。

中小企業診断士・井村淳也

はい。 定期的な全体ミーティングや社内報、あるいは社内SNSなどを活用して、新規事業の進捗や学びを積極的に共有する仕組みを作ることをお勧めします。

まとめと今後の展望

中小企業診断士・井村淳也

山田社長、本日は御社の現状、新規事業への課題、そして組織に関するお悩みについて、詳しくお聞かせいただき、ありがとうございました。

本日の対話を通じて、御社が新規事業を効果的に推進する上で、既存の機能別組織ではリソース不足や連携の課題があり、新規事業に特化した組織体制や仕組みが必要であるという共通認識を持つことができました。

解決策としては、いきなり大規模な組織改編を行うのではなく、まずは「新規事業推進チームの発足」「プロジェクト制の導入」といった、既存組織を活かしつつ新規事業に特化した体制を構築することをご提案しました。 そして、その仕組みが機能するように、リソース確保、新規事業に合わせた評価制度の見直し、部門間の連携強化、社員の意識改革といった側面からのアプローチも同時に行うことの重要性をお話しさせていただきました。

特に、社員の皆様の「内発的動機づけ」を高め、会社の将来や新規事業を「自分事」として捉えてもらうための働きかけが、組織全体で新規事業に取り組む上で非常に重要になります。 会社のビジョンを共有したり、社員の意見に耳を傾けたり、新しい挑戦の機会を提供したりする、といった地道な取り組みが、必ず組織の活性化に繋がります。

そして、これらの取り組みは、実行に移し、定期的な評価と改善を繰り返すことが不可欠です。 新規事業には不確実性が伴いますが、小さく始めて、市場や顧客の声を聞きながら、柔軟に軌道修正していくことが成功の鍵となります。

悩んでいる人

井村さん、本日は本当にありがとうございました。 漠然と悩んでいた組織の課題が明確になり、具体的な解決策や、どこから着手すれば良いのか、という道筋が見えてきました。 いきなり組織を大きく変えるのではなく、まずは新規事業チームの発足から始めるという提案は、弊社のような規模でも現実的だと感じました。

中小企業診断士・井村淳也

それは良かったです。 まずは小さな一歩から踏み出すことが大切です。 そして、その一歩を踏み出すたびに、私が伴走者として、全力でサポートさせていただきます。 計画の策定から、実行、評価、改善まで、共に考え、悩み、乗り越えていきましょう。

悩んでいる人

心強いお言葉、ありがとうございます。 社員の意識改革についても、今日の井村さんのお話を参考に、早速、社員との対話の機会を増やし、会社のビジョンや新規事業への想いを共有することから始めてみようと思います。

中小企業診断士・井村淳也

素晴らしいご決断です。 社員の皆様が、新規事業を「やらされ仕事」ではなく、「自分たちの未来を切り拓く挑戦」だと感じられるようになれば、必ずや大きな推進力となるはずです。

悩んでいる人

はい。 会社の将来のために、そして社員のみんなためにも、新規事業を成功させたいという思いが強くなりました。

中小企業診断士・井村淳也

山田社長のその強い思いこそが、会社の変化を牽引する最も重要な原動力です。 新規事業の成功を通じて、御社の新たな成長を実現し、社員の皆様がより一層働きがいを感じられる、そんな明るい未来を共に創り上げていきましょう。

悩んでいる人

ありがとうございます。 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

中小企業診断士・井村淳也

こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。 何かございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

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議論よりも対話、理論よりも現場、正しさよりも納得感。
これは、私が支援において常に基盤においているスタンスです。

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