設定:経営者が、事業の将来について不安を感じ、競争力強化を実現したいと考えていたものの、具体的な方法がわからず悩み、中小企業診断士に解決策を相談する。
井村さん、今日はお時間いただきありがとうございます。実は、以前から会社の競争力強化が必要だと感じて色々取り組んできたのですが、なかなか結果に結びつかず…何か良い打開策はないかと悩んでいるんです。
社長、こちらこそ本日はご相談いただきありがとうございます。競争力強化は多くの企業にとって重要な課題ですよね。お話によると、過去にも取り組んでこられたとのことですが、具体的にどのようなことをされ、どのような結果になったのかをお聞かせいただけますでしょうか?
はい、例えば2、3年前に、思い切って最新鋭の製造機器を導入したんです。他社に先駆けて最新技術を取り入れれば、きっと競争力も上がるだろうと考えたのですが…。
設備投資による効率化ですね。具体的にはどのような機器を導入されたのですか?
最新の自動化ラインや高精度の加工機械などです。でも、実際に導入してみると、思ったように生産性が上がらなかったんです。従業員も新しい機器の操作に慣れるまで時間がかかってしまい、結局、以前とあまり変わらない状況になってしまって…。
教えていただきありがとうございます。最新鋭の機器を導入しただけでは、必ずしも競争力強化に直結するとは限らないということですね。従業員のトレーニングや運用の最適化も重要な要素です。
はい…。それと、その後、価格競争に巻き込まれてしまい、利益を圧迫されてしまったこともありました。
価格競争は、確かに多くの企業が頭を悩ませるところです。具体的にはどのような状況だったのでしょうか?
競合他社が大幅な値下げを行ったため、当社もそれに対抗せざるを得なくなりました。そこで、思い切って値下げに踏み切ったのですが、今度は利益が減ってしまって…。結局、価格を元に戻さざるを得なくなってしまい、お客様にもご迷惑をおかけしてしまいました。
社長は、競争力強化のために様々な努力をされてきたのですね。仰る通り価格競争に巻き込まれると、利益率が低下し、持続可能な成長が難しくなります。
はい…。でも、なかなかうまくいかなくて…。井村さん、どうすれば会社の競争力を強化できるのでしょうか?
まず、競争力強化策を考える上で重要なのは、【自社の強みを理解すること】と 【他社との差別化を明確にすること】です。
自社の強み…ですか?
はい。御社ならではの強みは何か、どんな点でお客様に評価されているのか、改めて分析することが重要です。
うちは、お客様との距離が近いことや、小回りの利く対応を評価いただいていることが多いように思います。
それは大きな強みですね!その強みを活かしながら、他社にはない差別化を図っていくことが重要です。例えば、競合他社の分析をして、お客様のニーズをデータベース化し、どんな商品やサービスを求めているのかを分析してみてはいかがでしょうか? 御社のように、お客様との距離が近いことは、顧客ニーズを収集しやすいという点で大きなメリットになります。
なるほど…。お客様のニーズをしっかりと把握することが重要なのですね。具体的に、どのようにお客様のニーズを吸い上げれば良いのでしょうか?
大きく分けてオンライン・オフラインの両輪で考えると整理しやすくなります。まずオンラインですが、基本的には双方向のコミュニケーションを図れる仕組み作りを行えるように考えます。例えば自社ホームページに掲示板を設置する、SNS運用を始める又は強化する、YouTube動画を作成しコメント機能を活かす、といったところが定番の施策です。オフラインはお客様との距離が近いことを特に活かして、営業活動に力を入れるために接客スキルの向上を図ること、営業人員を増強することなどが考えられます。お客様との何気ない会話の中にヒントがあったり、場合によってはクレームの中にヒントが隠されていることもあります。
なるほど、オンオフに分けて考えていくのですね。確かに、そのような切り口で整理していけば取り組みやすいですね。クレームについても前向きにとらえることが重要なのですね。
はい。その上で、価格戦略の見直しも重要です。安易な値引きではなく、御社の商品やサービスの価値に見合った適正な価格を設定する必要があります。
確かに…。今までは、どうしても価格で勝負してしまうところがありました。そうすることで利益が減ってしまうのではないか、という懸念もありましたが、なかなか価格以外の有効打が見出せなくて…
仰る通り、価格だけであればどうしても体力のある大企業には勝てません。また中小企業同士の競争であれば、お互いに消耗戦となってしまいます。御社の強みを生かし、他社が容易に模倣できないような独自性や複雑性を追求していくことが重要です。
井村さんのアドバイス、よくわかりました。お客様との距離の近さを活かしながら、顧客ニーズをしっかりと把握し、他社との差別化を明確にしていきたいと思います。
もちろんです!そして、もう一つ、ブランド価値を高めることも検討してみて下さい。
ブランド価値、ですか?
はい。御社の商品やサービス、そして会社そのものの価値を、お客様にしっかりと伝え、共感を得ることができれば、強いブランドを築き上げることができます。
なるほど…。ブランド価値を高めることができれば、価格競争に巻き込まれることも減りそうですね。
その通りです。ブランド価値が高まれば、価格だけでなく、品質やサービスの面でもお客様に選ばれる理由が増えます。
具体的にはどのようにしてブランド価値を高めれば良いのでしょうか?うちは小さな会社ですし、商品もそれほど知名度が高くないのでブランドといったものとは無縁かと思っていましたが…
社長、ブランドは必ずしも大企業・有名商品に限ったことではありません。中小企業の商品・サービスであってもブランド価値を高めることは十分に可能ですし、差別化のために重要な取り組みとなります。具体的には例えば、顧客満足度の向上を目指す取り組みや、社会貢献活動を通じて企業の信頼性を高めることが考えられます。また、社員の教育や研修を充実させることで、サービスの質を向上させることも重要です。
なるほど…。社員の教育や研修も重要なのですね。
はい。社員が自信を持って仕事に取り組むことで、顧客に対するサービスの質も向上し、結果的にブランド価値の向上につながります。
具体的にはどのような教育や研修が効果的でしょうか?
例えば、顧客対応のスキルアップ研修や、製品知識を深めるための専門研修などが考えられます。また、リーダーシップ研修を通じて、社員一人ひとりが主体的に動けるようになることも重要です。
なるほど…。リーダーシップ研修も取り入れてみたいと思います。
それは良い考えですね。リーダーシップが強化されることで、組織全体の士気も向上し、結果的に競争力の強化につながります。その際、必要に応じて権限委譲を進めていくことも効果的です。社員のモチベーション向上のためには、給与等の報酬面よりも仕事に対する姿勢への評価ややりがい・達成感を感じられるかどうか、といった社員の思いがより重要とされているためです。
わかりました!頂いたアドバイスを参考に進めてみたいと思います。
後日
井村さん、先日いただいたアドバイスを元に、顧客ニーズのデータベース化やブランド価値向上に取り組んだ結果、少しずつですが効果が出始めてきました!
それは素晴らしいですね!具体的にはどのような効果が出てきたのでしょうか?
お客様との対話を通して、本当に必要とされている商品やサービスが見えてきましたし、社員の意識も少しずつですが変わってきたように感じます。
素晴らしいですね!御社は、着実に競争力を高めていると言えるでしょう。何より、社長ご自身の思いが社員の皆様に伝わったのだと思います!企業の主体はやはり、いつでも「人」です。社内のコミュニケーション活性化をこれからも進めていただくことで、より御社の競争力は高まっていくことと存じます。
ありがとうございます!これからも、井村さんのアドバイスを参考にしながら、お客様に愛される会社を目指して、競争力強化に励んでいきたいと思います!
こちらこそ、素晴らしい御社の発展に関わらせていただけること大変嬉しく思っております。ありがとうございます。私も今後、御社と共に伴奏して経営改善を図れるようサポートさせていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします!