しかし、5S活動は単なる清掃や片付けではなく、企業体質を改善し、社員の意識と行動を変える経営の基盤づくりでもあります。
本記事では、5S導入をきっかけに社内の空気が変わり、経営の流れまで変化した製造業の事例を紹介します。


設定:経営者が、5Sの効果が出ていないことをはじめ、自社の経営が順調とは言えず、何か改善策はないかと悩んでいた。コンサルタントに相談を持ちかけた場面から始まる。
相談者のプロフィールと課題の背景
地方都市で製造業を営む経営者から、ソング中小企業診断士事務所に問い合わせをいただきました。
現場の整理整頓が行き届かず、作業効率の低下や品質面でのトラブルが散見される状況に課題を感じていました。
同時に、社内の士気も上がらず「このままでは持続的な成長が見込めない」という不安を抱えていたため、改善の第一歩として5S活動の導入を検討されていました。

最近、会社の業績が伸び悩んでいて…何か良い改善策はないでしょうか?井村さん、お力をお貸しください!

社長、本日はご相談いただきありがとうございます。まず、現状について詳しくお聞かせいただけますか?どのような点が課題だと感じていらっしゃいますか?

実は、社内で5S活動を取り入れようとしているのですが、なかなかうまくいかないんです。社員も重要性を理解していないようで、形だけになってしまって…

社長は5S活動にお悩みなのですね。5Sは、基本的な活動ではありますが、その重要性を理解し、正しく実践しなければ効果は出ません。念のため、まず5Sの基本概念と目的について確認しましょう。5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字を取った言葉で、職場環境を改善するための活動です。 目的は、業務効率の向上、品質向上、安全性の確保、そしてモチベーションアップなど、多岐に渡ります。

確かに、目的は理解しているつもりですが…なかなか実行に移せないのが現状です。社員の中にも、何となく学校の掃除感覚でとらえている人もいて、やらされている感が強いというか。

仰る通り、主体性を持って取り組まないとなかなか効果が見えてこないのも5Sの特徴です。中小企業にとって5Sが難しい理由として、人的資源やスペースの不足、問題意識の欠如、社員の新陳代謝が少ないことなどが挙げられます。 しかし、だからこそ、5Sを正しく導入すれば、大きな効果を生み出すこともできるのです。

具体的には、どのようにすれば良いでしょうか?

まず、5S活動に取り組む目的を明確化し、社員全員で共有することが重要です。 目標が曖昧なままでは、社員のモチベーションも上がりません。次に、現状の業務を可視化し、5Sの各要素「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」について、それぞれルールを決めましょう。 この際、重要なのは、単に職場を綺麗にすることが目的ではなく、あくまでも業務効率や品質向上などを目指すという点です。

なるほど…確かに、今まで目的が曖昧なまま、ただ綺麗にすることだけを考えていたかもしれません。

例えば、製造業の場合、工具や部品の置き場所を明確化し、誰でもすぐに取り出せるようにすることで、探す時間を削減できます。 また、整理整頓された職場は、お客様からの信頼にも繋がります。

お客様からの信頼…確かにそうですね!工場見学に来られたお客様に、工場が乱雑な状態では、良い印象は与えられません。

その通りです。5S活動は、単なる職場環境の改善活動ではなく、経営管理手法の一つと言えるでしょう。そして社長、5S活動を進める上で、もう一つ重要なポイントがあります。それは、定期的な評価とフィードバックです。5S活動がどの程度進んでいるか、どのような効果が出ているかを定期的に評価し、社員にフィードバックを行うことで、モチベーションを維持しやすくなります。

評価とフィードバックですか。具体的にはどのように行えば良いでしょうか?

例えば、月に一度、5S活動の進捗状況を確認するミーティングを開催し、各部署の取り組み状況を共有します。その際、優れた取り組みを行った部署や社員を表彰することで、他の社員のモチベーションも向上します。また、改善点があれば具体的なアドバイスを行い、次回のミーティングまでに改善を図るようにします。

なるほど、定期的な評価とフィードバックを行うことで、5S活動が形骸化するのを防ぐことができるのですね。

その通りです。また、5S活動を進める上で、社員の意見やアイデアを積極的に取り入れることも重要です。現場の社員が感じている問題点や改善案を取り入れることで、より実効性のある5S活動が実現します。

社員の意見を取り入れる…確かに、現場の声を反映させることで、より効果的な改善ができそうです。

そうです。5S活動は、トップダウンだけでなく、ボトムアップのアプローチも重要です。社員全員が主体的に取り組むことで、組織全体の改善が進みます。

わかりました。定期的な評価とフィードバック、そして社員の意見を取り入れることを意識して、5S活動を進めていきます。

素晴らしいです。社長のリーダーシップの下、5S活動が成功することを期待しています。さらに、5S活動を進める上で、社員教育も欠かせません。5Sの基本を理解し、実践するための研修を定期的に行うことで、社員全員が同じ方向を向いて取り組むことができます。

社員教育ですか。具体的にはどのような研修を行えば良いでしょうか?

例えば、5Sの基本概念や目的を説明する座学の研修に加えて、実際に現場での実践を通じて学ぶOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)も効果的です。現場での実践を通じて、具体的な改善点を見つけ出し、即座に改善を行うことで、5S活動の効果を実感しやすくなります。

確かに、理論だけでなく実践を通じて学ぶことで、社員もより理解しやすくなりますね。

その通りです。また、5S活動を進める上で、リーダーシップも重要です。各部署に5Sリーダーを任命し、リーダーが中心となって活動を推進することで、組織全体の取り組みがスムーズに進みます。

5Sリーダーを任命するのですね。リーダーにはどのような役割を期待すれば良いでしょうか?

リーダーには、5S活動の進捗管理や、社員への指導・サポートを行う役割を期待します。また、リーダー自身が模範となることで、他の社員も積極的に取り組むようになります。リーダーの選定には、5S活動に対する理解と意欲が高い社員を選ぶことが重要です。

なるほど、リーダーの役割は非常に重要ですね。適任者を見つけて、しっかりとサポートしていきます。

さらに、5S活動を進める上で、外部の専門家の意見を取り入れることも有効です。定期的にコンサルタントを招き、客観的な視点からのアドバイスを受けることで、より効果的な改善が期待できます。

外部の専門家の意見を取り入れるのですね。確かに、内部だけでは見落としがちな点もあるかもしれません。

その通りです。外部の視点を取り入れることで、新たな発見や改善点が見つかることが多いです。また、5S活動を進める上で、社員のモチベーションを維持するための工夫も重要です。例えば、5S活動の成果を定期的に評価し、優れた取り組みを行った社員を表彰することで、他の社員のモチベーションも向上します。

社員のモチベーションを維持するための工夫も必要ですね。表彰制度を導入してみます。

素晴らしいです!従業員のモチベーション向上のためには、給与等の報酬よりもむしろ「自分の仕事は会社に貢献している」と実感できることが重要とされていますので、表彰制度は大変効果的ではないでしょうか。また、5S活動を進める上で、継続的な改善を図るためのPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を取り入れることも重要です。計画を立てて実行し、その結果を評価し、改善点を見つけて次の計画に反映させることで、5S活動が継続的に進化していきます。


PDCAサイクルを取り入れることで、5S活動が継続的に改善されるのですね。

その通りです。5S活動は一度実施して終わりではなく、継続的に改善を図ることが重要です。御社が5S活動を通じて、ますます発展することを期待しています。

ありがとうございます。井村さんのおかげで、5S活動の重要性と具体的な進め方がよくわかりました。これからもご指導よろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします。御社がますます発展することを願っています。
後日

井村さん、ご報告があります!井村さんのアドバイス通り5S活動を見直した結果、工場内の作業効率が格段に向上しました!社員からも「仕事がしやすくなった」という声が上がっています。また、社員のモチベーションが明らかに向上したのがわかります。お客様や関係取引先が工場を視察する機会もあるのですが、自分たちの綺麗な職場を見てもらえることが嬉しく、誇りに感じている社員も増えているようです。最初は面倒くさそうに取り組んでいた人も変わり始め、私もそういう社員の姿を見ると、本当に嬉しくて…

それは素晴らしいですね!5S活動の成果が出ているようで、私も大変嬉しく思います。

はい。私も正直、井村さんにご相談する前は「たかが5S」と本気で取り組んでいなかったように思うのですが、使い古されているようなイメージのあった5Sでもこれだけの効果があることに驚いています。本当にありがとうございました!

仰る通り、5Sは歴史が古く活動内容も一見地味に感じられるため、今更やってもと感じられる方も少なくありませんが、徹底して取り組むことで大きな効果が期待できるものです。実際、誰もが知るような大企業では当たり前のように導入されている活動でもあります。社長、5Sは継続が重要です。今後も継続的な改善を図り、更なる成長を目指していきましょう!私も、社長の明るい未来に向けて、共に伴走させていただきます。
ご自身の状況と重なる部分があると感じた方へ。
議論よりも対話、理論よりも現場、正しさよりも納得感。
これは、私が支援において常に基盤においているスタンスです。
多くの診断士が“数字と理屈”を武器に議論を展開しがちな中、私はまず現場へ出ることを選びます。
職場の空気を感じ、スタッフの声を聴き、そこから生まれる対話と納得を重ねていくことで、
ストラテジーは「本当に働くもの」へと変わっていきます。
この姿勢は、あなたの職場やチームの笑顔を増やす“本質的な支援”へとつながると信じています。
興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度、現場での「対話」の機会を設けてみませんか?
下のフォームからお気軽にご連絡ください。
この事例を含む、24の実際の相談事例をまとめた無料PDFを配布中です。
「他の経営者はどんな悩みを抱えていたのか?」「どのような突破口があったのか?」
具体的な支援事例から、経営改善のヒントを見つけてみてください。