
動画で見る失敗事例の切り口からの記事説明
※この動画は「失敗事例の切り口から」全記事に共通して掲載しています。
「評価制度を整えれば、人は定着する」──そう信じて制度を導入した美容サロン。しかし、結果は思い描いたものとは違っていました。数字で公平さを示したはずが、スタッフ間の不満が噴き出し、チームワークが崩れていったのです。本記事では、制度づくりが目的化してしまった現場のリアルをもとに、「人が動く仕組み」をどう設計すべきかを考えます。


設定:都内で3店舗を展開する美容サロンを経営する佐伯さん。
「頑張っている人が報われる会社にしたい」と外部コンサルの助言を受けて評価制度を導入したものの、現場は混乱。スタッフ同士の対立が起き、雰囲気が悪化してしまいました。
制度自体は立派に整っている。けれど、なぜかうまく回らない。
──そんな悩みを抱え、井村に相談の連絡を入れたのが、今回の始まりでした。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。
登場人物と企業背景
井村さん、うちはスタッフの定着がずっと課題で……。頑張ってる子もいれば、すぐ辞めてしまう子もいて。どうすれば公平に評価できるのか、ずっと悩んでたんです。
なるほど。それで評価制度を導入されたんですね。
はい。外部のコンサルさんにお願いして、“数値で見える化”する仕組みを作ったんです。売上や指名数、リピート率などをスコア化して、月ごとにランクを決めて……。
まさに“がんばりが報われる仕組み”を目指したわけですね。
そうなんです。数字なら誰もが納得するだろうと思って。でも、実際は逆でした。結果を出してる子ほど他のスタッフを見下すようになったり、雰囲気がピリピリして……。
なるほど……制度としては理屈が通っていても、“運用”で現場の気持ちが置き去りになっていた可能性がありますね。
ええ……。まさにその通りです。最初は“これで変わる”と思ってたのに、むしろ悪化してしまって。私自身も、この制度をどう扱えばいいのか分からなくなってきました。
評価制度って、“公平に見える”ことが目的になりがちなんですが、実際には“納得して動ける”ことのほうが大事なんですよね。
なるほど……。公平より、納得……。たしかに、言われてみればそうかもしれません。
数字で“公平さ”を示したはずが、スタッフの不満が噴出
導入して2か月ほどで、スタッフの間に溝ができました。『評価が偏っている』『努力しても報われない』と不満が出始めて……。私としては、数字が全てを説明してくれると思ってたんです。
評価の“見える化”が逆に現場の不信を生んでしまったんですね。実は、多くのサロンで同じ現象が起きています。数字だけを見て公平さを示そうとすると、“想い”や“過程”が抜け落ちるんです。
たしかに、売上が低くてもお客様対応が丁寧だったり、チームを支えてくれるスタッフもいる。でも数字では表せないんですよね。そういう部分を評価しづらくて……。
“数字で測れない貢献”こそ、組織を支える要素なんです。評価制度で一番大切なのは、“どう頑張ったか”を伝え合える場を仕組みとして持つことなんです。
なるほど……。制度自体はあっても、それを“運用する場”がなかったということですね。
そうです。制度を入れることがゴールになってしまうと、仕組みが現場に“届かない”んです。スタッフが“自分たちのための制度”と思えるようになるには、“対話”の仕組みが不可欠です。
思い返すと、評価を発表する時も私が一方的に数字を読み上げるだけでした。スタッフから質問があっても、『規定に基づいてるから』と突き放してしまっていたかもしれません。
その時、スタッフの“納得の余地”がなくなっていたんでしょうね。数字はツールであって、答えではありません。“数字の意味を一緒に考える時間”を持てると、評価制度は生きてきます。
……たしかに。うちに足りなかったのは“話し合う仕組み”かもしれません。
本来目指していた「数字と感謝が両立する組織」の姿
私が本当にやりたかったのは、“数字が上がる組織”じゃなくて、“みんなが誇りを持って働ける組織”なんです。数字はその結果として上がればいいと思っていました。
まさに本質ですね。数字は“評価”のためではなく、“感謝を伝えるための言葉”として使えると、現場の空気が変わります。
感謝を伝えるための言葉、ですか?
はい。たとえば『〇〇さん、今月リピート率が上がってますね。お客様が信頼してる証拠ですよ』という形で、数字を“結果の証”として伝えるんです。そうすれば、数字が“褒めるツール”になる。
なるほど……。これまでの私は、“数字を見せて指導する”側だったかもしれません。頑張ってる子を数字でほめるなんて、考えたこともありませんでした。
でも、スタッフにとってはその一言で“見てもらえてる”と感じられます。制度よりも、そうした瞬間の積み重ねが定着率を高めるんです。
制度でモチベーションを上げようとするより、日常の関わり方を設計することが大事なんですね。
そうなんです。評価制度を支えるのは“運用の習慣化”です。だから私の事務所では、制度づくりと同時に“日常の対話シート”や“可視化ツール”をセットで設計します。数字と想いをつなぐ仕組みですね。
まさにうちに足りなかったところです。制度の“型”ばかり気にして、日常の“つながり”を作れていなかった。
制度を作るのは短い時間でも可能ですが、育てるのは日常の長い時間の積み重ねです。その部分を仕組みで支えるのが、私たちの仕事なんです。
ソング中小企業診断士事務所ならこう支援する──制度を“現場に届く仕組み”に変える
佐伯さん、制度自体は立派にできていると思います。問題は“届き方”なんです。制度を入れた瞬間に成果が出るわけではなく、日常の中で“どう使うか”を育てていく仕組みが必要です。
届き方、ですか……。制度って、作ったら終わりだと思ってました。
実は、制度は“導入がスタートライン”なんです。たとえば私の事務所では、次のような支援を組み合わせて“現場に届く制度”に作り替えています。
ソング中小企業診断士事務所の支援アプローチ
- 現場ヒアリングで“数字の裏のストーリー”を掘り起こす → どの数字にスタッフが共感し、どの数字にストレスを感じているかを可視化。 → 「何を評価したいか」ではなく、「どんな行動を増やしたいか」から評価項目を設計。
- Googleスプレッドシートなどの“わかる・みえる仕組み”を設計 → スタッフが自分の成長を“自分で見える化”できるシートを設ける。 → 結果だけでなく、日々の行動や改善の記録を残せるように。
- 毎月の“共有ミーティング設計”で、制度を対話に変える → 数字を見て終わりではなく、「何がうまくいったか」「次にどう活かすか」を話し合う時間を設ける。 → 評価が“チェック”ではなく“振り返りと称賛”の場になる。
- 経営者の“伝え方”サポート → スタッフへのフィードバック文例や会話の切り出し方を一緒に考える。 → 「注意する」ではなく「伝わる」言葉を選ぶ練習を行う。
こうしてみると、制度って数字より“空気”をつくる仕組みなんですね。
そうなんです。制度は“伝え方の設計図”でもあるんです。数字で信頼を築き、言葉で想いを届ける。 この2つがかみ合ったとき、ようやく“評価が組織を強くする”んです。
うちももう一度、制度を“運用していく文化”から見直したいと思います。
そこから始めれば十分です。制度は失敗しても立て直せます。 むしろ、経験した今の方が“届く制度”を作る準備が整っていると思いますよ。
制度が“息づく”組織へ──数字の先にある「人の力」を信じて
井村さんの話を聞いて、やっと“制度の正解”がわかりました。数字をそろえることよりも、数字を“語り合える組織”にすることが目的だったんですね。
そうなんです。制度は“管理”のためのものではなく、“成長の言葉”に変えるためのツールなんです。佐伯さんのように人を信じる経営者が、数字を優しく使えるようになったら、現場は確実に変わります。
次は、数字を使って“褒める会議”をやってみようと思います。結果が出ていないスタッフにも、“過程を見ている”と伝えられるように。
それはすばらしい一歩ですね。制度が組織に根づく瞬間って、“評価される”から“認め合う”に変わるときなんです。数字も、仕組みも、結局は人の気持ちを動かすためのものですから。
この制度、もう一度“育てて”いこうと思います。あの時の失敗があったから、ようやく本当に必要なことが見えてきました。
失敗を経験した経営者ほど、制度を“人に届ける力”を持っています。大丈夫、必ず組織は息を吹き返します。
数字で見えるものの奥に、人の想いがある。
「仕組み」と「感情」の間に橋をかける――それが、ソング中小企業診断士事務所が目指す“現場に届く経営支援”です。
制度は完成した瞬間が終わりではなく、そこから“育つ”もの。
次の一歩を、共にデザインしていきましょう。
似たような失敗、あるいは今まさに直面している課題に、思い当たることはありませんか?
失敗を責めず、まず受け止め、構造を読み解く。
私の支援は、いつもここから始まります。
数字や理論の前に、現場の声を丁寧に聴き、意思決定の背景や組織の空気感を捉えながら、
「なぜこうなったのか」「今できる最適解は何か」を一緒に探っていきます。
失敗は誰にでも起きます。
重要なのは、そこからどう立て直すか。
私は、そのプロセスに寄り添う支援にこだわっています。
もし今、同じような課題に向き合っているなら、
一度、率直な対話の時間を持ってみませんか?
下のフォームから、お気軽にご連絡ください。
