「売上があるから大丈夫」と思っていませんか?負債1151億の巨額倒産に学ぶ資金繰りの罠【診断ノート】 | ソング中小企業診断士事務所

「売上があるから大丈夫」と思っていませんか?負債1151億の巨額倒産に学ぶ資金繰りの罠【診断ノート】

「売上があるから大丈夫」と思っていませんか?負債1151億の巨額倒産に学ぶ資金繰りの罠【診断ノート】

動画で見る診断ノートの記事説明

※この動画は「診断ノート」全記事に共通して掲載しています。

飲食店などを中心にクレジットカードの決済代行サービスを行っていた大阪の「全東信」が破産手続きの開始決定を受け、負債総額は1151億円余りに上ると報じられました。

一見すると、これは決済代行会社の巨額倒産、あるいはキャッシュレス決済業界の競争激化に関するニュースに見えるかもしれません。

しかし中小企業診断士としてこのニュースを見ると、そこには多くの経営者が見落としがちな、非常に大切なテーマが隠れているように感じます。それは、「売上があっても、会社は倒産する」という現実です。

経営者の方とお話ししていると、売上や利益には強い関心を持っていても、現金の流れ、つまり資金繰りについては後回しになっているケースがあります。けれど、会社を実際に止めてしまうのは、必ずしも赤字ではありません。支払うべき日に、支払う現金がないこと。これが、どれだけ売上がある会社であっても、経営を一気に止めてしまうことがあります。

今回は、全東信の破産ニュースをきっかけに、利益と現金の違い、誤解しやすい資金繰りの盲点、そして中小企業が日々の経営で見るべき数字について考えてみたいと思います。

この記事を読むことで得られること

  • 売上や利益があっても会社が倒れることがある理由が整理できます
  • 利益と現金の違いを、資金繰りの視点から捉え直すことができます
  • 中小企業が日々の経営で見るべき数字と、資金繰り表の必要性がわかります

まず結論:会社を成長させるのは利益ですが、会社を生き残らせるのは、支払うべき日に手元にある現金です。

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診断ノート
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全東信の破産が意味するもの

今回破産手続きの開始決定を受けた全東信は、飲食店などを中心に、クレジットカードの決済代行サービスを行っていた会社です。報道によれば、同社はクレジットカードの利用があった際、カード会社から店舗への入金を待つのではなく、通常よりも早く店側へ入金するサービスを展開していました。つまり、単に決済を処理するだけではなく、店舗側の資金繰りを支える役割も担っていたということです。

決済代行会社として成長した全東信

全東信は、飲食店など約20万店と取引していたとされています。クレジットカード決済を代行し、店舗に対して早期入金を行うことで、日々の売上金を早く手元に届ける。その利便性によって、多くの加盟店を増やしてきました。

飲食店にとって、売上金がいつ入ってくるかは非常に重要です。仕入れ、人件費、家賃、光熱費など、日々の支払いは待ってくれません。カード決済の入金が遅れるよりも、多少の手数料を払ってでも早く現金化できることに価値を感じる店舗は多かったはずです。その意味で全東信のサービスは、単なる決済サービスではなく、飲食店の資金繰りを支える仕組みでもありました。

スマホ決済普及による環境変化

しかし、経営環境は大きく変わっていきました。スマートフォン決済の普及により、決済手段は一気に多様化しました。PayPayなどのQRコード決済をはじめ、店舗側が選べる決済サービスは増え、競争環境は厳しさを増していきます。

競合が増えれば、当然ながら手数料の引き下げ圧力が強まります。利用する店舗側から見れば、少しでも手数料が安いサービスを選びたいと考えるのは自然なことです。その結果、決済代行会社にとっては、加盟店を維持するために手数料を下げざるを得ない状況が生まれます。

売上規模が大きくても、手数料率が下がれば利益率は低下します。さらに、早期入金を行うためには先に資金を用意する必要があるため、資金調達や資金繰りの負担も大きくなります。ここに、今回のニュースを単なる競争激化では終わらせられない難しさがあります。

負債1151億円という数字

今回報じられた負債総額は、1151億円余りです。もちろん、この金額の大きさは非常に大きなインパクトがあります。ただ、今回注目すべきなのは、単に「巨額の負債を抱えた会社が倒れた」という点だけではありません。

より重要なのは、飲食店など多くの事業者の日々の決済や入金に関わっていた会社が、突然機能しなくなったということです。決済代行サービスが止まると、店舗には売上金が入ってこない可能性が生じます。つまり今回の破産は、一社の経営破綻であると同時に、飲食店の資金繰りを支えていた社会インフラ的な仕組みが止まった出来事でもあります。

だからこそ、このニュースは「大きな会社が倒産した」という話だけでなく、私たち中小企業にとっても、資金繰りと取引先リスクを考えるきっかけになるのです。

決済代行会社は何で利益を生むのか

クレジットカード決済は、店舗でお客様がカードを使った瞬間に、すぐ現金が店舗の口座に入るわけではありません。実際には、カード会社や決済会社などを通じて処理が行われ、一定の時間差を経て、店舗に入金されます。

お金を早く届ける、時間を買うビジネス

通常の流れでは、売上は発生していても、そのお金がすぐに店舗の手元に入るとは限りません。そこで全東信は、カード会社からの入金を待つ前に、店舗へ先にお金を支払うサービスを行っていました。店舗側から見ると売上金を通常より早く受け取ることができ、全東信側から見ると、先に店舗へ支払い、後からカード会社などから回収する。この「時間差」を引き受けることで、店舗から手数料を得ていたわけです。

この仕組みを別の言い方で表現すると、全東信は「お金そのもの」を売っていたのではなく、お金が手元に入るまでの時間を短縮する価値を提供していたといえます。店舗側にとっては、売上金が早く入ることで、仕入れ代金や従業員の給料、家賃などの支払いにすぐ回せるため、手元資金に余裕を持たせることができました。早期入金サービスは、店舗にとって資金繰りを楽にするための手段でもあったのです。

資金力が競争力になる業界

ただし、このビジネスには大きな前提があります。それは、店舗へ先に支払うための資金を、決済代行会社側が用意し続けなければならないということです。

加盟店が増えれば増えるほど、取り扱う決済額も大きくなります。取引規模が拡大すれば、見た目の売上や手数料収入も増えていくかもしれません。しかしその一方で、先に立て替える金額も大きくなります。ここに、このビジネスの難しさがあります。

一般的な商売であれば、商品やサービスを提供して代金を受け取るという流れを考えますが、早期入金を伴う決済代行では、先に多額の資金を動かす必要があります。つまり、競争力になるのは単なる加盟店数や取扱高ではなく、「どれだけ安定して資金を調達し、資金を回し続けられるか」という点です。

売上規模が大きい会社ほど安全に見えることがあります。しかし、資金を先に出すビジネスでは、売上の大きさがそのまま資金負担の大きさにもつながります。だからこそ、今回のニュースは「大きくなったからこそ資金繰り管理の重要性が増す」という教訓を示しているように思います。

利益と現金は同じではない(黒字倒産のメカニズム)

今回のニュースから中小企業経営者が学ぶべき最も重要なポイントは、「利益と現金は同じではない」ということです。経営者であれば売上や利益を気にするのは当然ですが、実際の経営現場では、「利益が出ているから安心」とは言い切れません。なぜなら、会社が生き残れるかどうかを最終的に決めるのは、利益ではなく現金だからです。

多くの人は「赤字になったら倒産する」と考えますが、実際には利益が出ていても、手元の現金がショートして倒産する会社が存在します。これがいわゆる「黒字倒産」です。なぜこのようなズレが起きるのか、その構造をテーブルにまとめました。

経営要素 利益(損益計算書の世界) 現金(資金繰りの世界)
発生のタイミング 商品・サービスを引き渡した時点で、「売上(利益)」が確定する。 請求書を発行しても、実際の「入金(現金)」は1〜2ヶ月先になることが多い。
会社における役割 「会社の成績表」
長期的・持続的に会社を成長させるために必要な数字。
「会社の酸素」
日々の給料や仕入れを支払い、今日明日を生き残るために必要なもの。
不足した場合のリスク 一時的な赤字であれば、手元に現金がある限り会社は倒れない。 どれだけ黒字でも、支払日に口座残高が1円でも不足すれば即座に経営が止まる。

会社が日々支払っている従業員の給料、事務所の家賃、仕入れ代金、税金や社会保険料などは、すべて現金で支払われています。そして当然ながら、利益そのものを支払いに使うことはできません。極端な話をすれば、利益が1000万円出ていても、口座残高が10万円しかなければ給料は払えません。反対に、利益が少なくても十分な現金が手元にあれば、会社は事業を継続できます。会社を成長させるのは利益ですが、会社を生き残らせるのは現金なのです。

「売上はあるのに、なぜかお金が残らない」

そう感じているなら、それは利益の問題ではなく、現金の流れの問題かもしれません。

価値の伝え方を整理してみる

中小企業でも同じことが起きている

ここまで見ると、全東信の事例は決済代行会社という特殊な業界の話に感じられるかもしれません。しかし、利益と現金のズレは、中小企業の現場でももっと身近な形で起きています。

売上増加で苦しくなる会社

一見すると意外かもしれませんが、売上が増えたことで資金繰りが苦しくなる会社があります。たとえば、受注が増えれば、当然ながらそれに対応するための準備が必要になります。

  • 人を増やす(人件費の前払い)
  • 材料を多く仕入れる(仕入れ代金の支払い)
  • 外注費が増える
  • 設備や備品を追加する

売上が増えること自体は、とても良いことです。しかし、その売上金が入金される前に、人件費や仕入れ代金などの支払いが先に発生することがあります。つまり、売上は増えているのに、手元の現金は先に減っていくのです。この状態を放置すると、「忙しいのにお金が残らない」「売上は伸びているのに資金繰りが苦しい」という状況に陥ります。成長している会社ほど、実は資金繰りの管理が重要になります。

利益が出ていても安心できない

経営管理というと、月次試算表を見ることを思い浮かべる方も多いと思います。もちろん、月次試算表は非常に重要です。売上、原価、経費、利益の流れを確認することで、会社の収益構造を把握することができるからです。

ただし、月次試算表だけでは十分ではありません。なぜなら、試算表は主に「利益」を見る資料であり、「いつ、いくら現金が入って、いつ、いくら出ていくのか」までは見えにくいからです。そこで必要になるのが、資金繰り表です。資金繰り表を見ることで、今月末、来月末、数か月後に現金が足りるのかを確認できます。利益が出ているかどうかだけではなく、支払いに耐えられるだけの現金があるかどうか。この視点を持つことで、経営判断の精度は大きく変わります。

現場ではよく見る課題

診断士として経営者の方とお話ししていると、「利益は出ているはずなのに、通帳残高が増えない」という声を本当によくお聞きします。これは決して珍しい悩みではありません。

売上はある、利益も出ているはず、けれどなぜかお金が残らない。その背景には、入金と支払いのタイミングのズレ、借入金の返済、税金や社会保険料の支払い、在庫の増加、設備投資など、さまざまな要因があります。経営者が日々感じている「なぜかお金が残らない」という違和感は、現金の流れを見える化すれば、その理由を構造としてきれいに整理できます。だからこそ中小企業にとっても、現金の動きを見える化することが大切なのです。

売上や利益だけを見て、資金繰りを後回しにしていませんか

この記事を読んで、「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」と感じた方も多いのではないでしょうか。問題は、それが“感覚的な不安”ではなく、現金の流れとして整理されないまま続いてしまうことです。

資金繰りと現金の流れについて相談してみる

下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。相談内容は、まだまとまっていなくて大丈夫です。たとえば、こんな一文で十分です。

  • 「売上はあるのに、なぜか通帳残高が増えない」
  • 「利益は出ているはずなのに、資金繰りがいつも不安」
  • 「資金繰り表を作りたいが、どこから整理すればいいかわからない」
“利益が出ていること”と“現金が残っていること”は、同じではありません。まずは、お金の流れを見える化するところから始めましょう。

「資金繰りと現金の流れ」専用フォーム


    内容確認後、24時間以内に井村本人からメールで返信いたします。

    ※営業電話はいたしません。まずは状況の整理からご一緒します。
    ソング中小企業診断士事務所
    井村淳也が直接お話を伺います。

    診断士視点|経営者が本当に見るべき数字

    では、経営者は日々どの数字を見ればよいのでしょうか。もちろん、業種や会社の状況によって見るべき数字は変わりますが、基本として押さえておきたい「チェックすべき順番と視点」があります。それが、売上、利益、現金の3つです。

    確認順位 見るべき数字 診断士からの視点・チェックポイント
    第1ステップ 1. 売上 「事業の勢いを見る数字」
    お客様に選ばれた結果であり経営の入口。顧客数や客単価、受注件数に変化がないかを追います。
    第2ステップ 2. 利益 「事業の継続性を見る数字」
    売上からいくら残っているか。粗利は十分か、値引きや手数料で利益率が下がっていないかを確認します。
    最重要ステップ 3. 現金 「企業の存続を決める数字」
    支払日に口座残高が足りるか。給料、仕入れ、税金、借入金返済に耐えられるかを「資金繰り表」で確認します。

    経営は、売上だけでも、利益だけでも判断できません。最終的には、現金残高と資金繰りが企業存続を決めます。だからこそ、経営者は「売上が上がっているか」「利益が出ているか」と同時に、「この先、現金が足りるのか」を見ていく必要があります。

    この視点を持つために必要になるのが、資金繰り表です。資金繰り表は、難しい経理資料ではありません。「いつ、いくらお金が入って、いくら出ていくのか」を整理するための表です。

    私が経営支援の現場で大切にしているのも、まさにこの「見える化」です。経営者の頭の中にある売上の見込みや支払いの予定、税金の不安などを数字として表に整理すれば、何が問題で、いつ資金が苦しくなり、どこに手を打つべきかが見えてきます。経営者の感覚を数字で支えることで、判断しやすくするものだと思っています。この順番で経営を確認していくことが、資金繰りに振り回されないための第一歩になるのです。

    まとめ|会社を止めるのは赤字ではない

    今回の全東信の破産は、単純に「決済業界の競争が激しくなったから倒産した」という話だけではありません。そこには、すべての経営者が知っておくべき重要な教訓があります。それは、「利益と現金は違う」という経営の基本原則です。

    売上が伸びている、利益も出ている、それでも会社が倒れることはあります。なぜなら、会社は利益だけでは動かないからです。従業員への給料、仕入れ代金、家賃、税金、借入金の返済は、すべて現金で支払わなければなりません。どれだけ立派な決算書であっても、支払うべき日に現金がなければ経営は止まってしまいます。

    だからこそ経営者は、売上や利益を見るだけでなく、その先にある現金の流れにも目を向ける必要があります。今月の利益はいくらか、来月の資金は足りるのか、半年後の支払いに耐えられるのか。こうした視点を持つことで、初めて経営の全体像が見えてきます。

    売上があるから安心、利益が出ているから大丈夫、そう考えたくなる気持ちは自然です。しかし、本当に見るべきなのは、その先にある現金の流れです。会社を成長させるのは利益ですが、会社を生き残らせるのは現金です。今回のニュースをきっかけに、自社の資金繰りについて改めて見直してみてはいかがでしょうか。

    ここまで読んで、「うちも一度、現金の流れを見を見直した方がいいかもしれない」と感じた方へ。まだ相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは、売上・利益・現金の流れを一緒に整理するところから始められます。

    資金繰りと現金の流れを整理してみる

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