中小企業でもキャッシュフロー計算書は作ったほうがいいのか? | ソング中小企業診断士事務所

中小企業でもキャッシュフロー計算書は作ったほうがいいのか?

キャッシュフロー計算書は作ったほうがいいのか

キャッシュフロー計算書の重要性についてご説明いたします。

結論:作ったほうがいい

いきなり結論ですが、作ったほうがいいと考えております。

定番の財務諸表である貸借対照表は主に期末や月末時点での企業の財務状況を、損益計算書は主に1期間や1月間の収支状況を、それぞれ表しているものですが、これらの財務諸表だけでは「お金の流れを正確に把握しきれない」というのがその理由です。

もちろん貸借対照表には「現金及び預金」という勘定科目がありますので、全体として増えたのか減ったのか、ある時点の残高は、といった見方はできます。しかし、キャッシュフロー計算書のように、どういった理由で増えているのか、減っているのか、営業・投資・財務のどの活動を通じて増減があるのか、がわかりません。

また損益計算書上でどれだけ利益を出していたとしても、売り上げが好調だったとしても、お金の流れが滞ってしまえばどんな企業でも倒産します。いわゆる黒字倒産と呼ばれる状況です。

「どうして利益が出ているのに倒産するのか?そんなことがあり得るのか?」
と思われるかもしれません。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

黒字倒産(またはニアミス)の例

極端な例ですが、以下のような場合。
製造業で手持ちの現預金が1億円、売上が毎月1億円、仕入れが5千万円あったとします。簡略化のためそれ以外の費用収益はなしとします。損益計算書的に見れば、売上1億-仕入れ5千万で利益が5千万円となります。それが12カ月間なので、1期間の売上は12億円、仕入れは6億円なので、利益は6億円になります。

以下は簡略化した表です。ギリギリ持ちこたえる場合の例です。わかりやすくするため、上半期のみとしました。
黒字倒産ニアミス例

5月がかなりギリギリではありますが、何とか6月以降は安定します。

現金取引であれば毎月1億円のキャッシュインフロー(現金の入金)があり、5千万円ずつ現預金が増えていくはずですが、一般的に売掛取引や手形取引が多いため、今月売れたものの入金は来月、再来月となることが多くなります。一方で仕入れについても買掛取引、手形取引が主ですので一見売買は同じ条件のように見えますが、製造業の場合は先に原材料を仕入れて作り、製品になってようやく出荷・売上計上。となる流れが多いため、支払いサイクルが売買で同じだったとしても先に仕入れる必要がある分、キャッシュアウトフロー(現金の支払)は先に発生します。

そうなるともし原材料の仕入れが2カ月以上早く起こる、言い換えれば原材料仕入れから売上まで2カ月以上かかる場合、売上の入金を待たずに資金がショートしてしまいます。

以下は支払いと入金の時期に差が大きい場合です。
黒字倒産例1

入金が1月、遅れるだけで、6月に現預金が底をつきます。借入返済があればアウトです。

以下は製造業のようにまず仕入れ代金の支払いが発生する場合です。
黒字倒産例2

製造業のように材料仕入れ代金等の支払いがかなり早い場合でも、5月に現預金ゼロになります。

これは非常に簡略化していますので「それは当たり前だろう、そんな間抜けなことをするはずがない」と思われるかもしれませんが、実際の業務においてはこれ以外にも多くの費用が発生しますし、固定費である人件費も当然あります。借入金の返済も絶対に遅れることができません。そういった非常に複雑なお金の動きがある中で、意外と正確にお金の流れを把握できていないという経営者の方も少なくありません。

言ってみれば「なんとなく回ってしまっている」という状況です。実際にはここまで極端に危ない橋を渡ることはなくとも、意図せず資金が減ってしまいあわてて融資を取り付けて何とかしのいだ…といったケースは少なくないのではないでしょうか。

管理不能な状況の積み重ね

上記の場合、結果的になんとか資金は調達でき、借入金返済も、給料支払いもできたとします。一見なんとかなっていますが、問題なのは、経営するうえで管理しきれない状況がいくつも生まれてしまっていることです。

例えば急ぎで行った融資。おそらくは慌てて金融機関に頼み込み、何とか融資を通してもらったという状況が多いでしょうから、利率面等の条件が不利な内容であることも想定されます。また借入金も膨らみ、財務数値も悪化しているはずです。仮に今期は何とかなったとしても、来期以降の経営計画にも大きな影響を与えます。支払利息も増え、必ずどこかにしわ寄せが来るでしょう。

金融機関では売り上げの伸びを評価してくれての貸付だったかも知れません。経営者としても売上を一番重視していることが多いと思われます。ですがキャッシュフローの動きこそ注意して見なければ、わずかな事業の環境変化により一気に経営が傾くという可能性も十分に考えられます。

昨今では、コロナ禍でその恐ろしさを目の当たりにされたという経営者の方も少なくないのではないでしょうか。私自身も2020年~2021年に売り上げが大きく落ち込み、創業以来最大の危機を迎え、不意の経営環境変化の恐ろしさを痛感しました。自分でコントロールできず、予測不可能なことが実際に起こるんだと感じました。

また最近、中小企業でもBCP(事業継続計画)を作成することの重要性を耳にする機会があるかと存じますが、自然災害などの緊急事態に限らず、まずビジネスの日常的なやりくりの中でも、このような状況=財務上の緊急事態に陥ることがあるという意識を持つことが重要だと考えます。

作成義務はあるのか

さて、キャッシュフロー計算書は上場企業であれば作成する義務がありますが、中小企業の場合は株式公開自体をしていないケースが多く、したがって作成義務はないわけですが、作らなくていいとなるとどうしてもキャッシュフロー計算書に対するなじみが薄くなり、ますますキャッシュフローに意識がいかなくなる事態が予測されます。

「日々の業務に追われる中で、作成義務のない決算書まで作れというのか」と思われるかもしれません。ですが、私は中小企業診断士としてぜひとも、多くの経営者の方に事業のキャッシュフロー計算書を見ていただきたいと思っております。

私も2008年に事業を立ち上げ、運営してきて強く感じることとして、やはり経営にはキャッシュが極めて重要だということです。経営者の方にとっては、そんなこと今更言われなくても…という話かもしれませんが、肌感覚でキャッシュの重要性は嫌というほどわかっていても、客観的な数字としてとらえていないことで経営判断を誤る可能性もあります。

だからこそ、是非貴社でもキャッシュフロー計算書を作っていただきたいと考えております。

まずは、お気軽にお試しください!

ソング中小企業診断士事務所では、サービスのご依頼を検討してくださっているお客様に対して「お試しパッケージ」をご用意しております。

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経営コンサルティングはなかなか、その必要性を感じにくいものかもしれません。また、よく知らない第三者に対して大切な事業経営のサポートを依頼する、というのはハードルが高いものだと考えております。だからこそ、安心してご依頼を検討いただけるように、ソング中小企業診断士事務所ではお試しパッケージをご用意しました。その中でキャッシュフロー計算書の作成も対応しております。ぜひ一度貴社のキャッシュの動きを見させていただき、今後の経営判断の材料としていただければ嬉しく思います。

またご説明させていただく際には、できる限りわかりやすい言葉で、丁寧に表現させていただくことを心がけております。ご不明点は遠慮なく聞いていただいて、貴社にとって何か一つでもお役に立てる機会とできれば幸いです。

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