
動画で見る日常発見の窓口からの記事説明
※この動画は「日常発見の窓口から」全記事に共通して掲載しています。
中小企業診断士としての日常のひとコマから、経営者としての“感情”や“判断”に潜むクセを考えるこのシリーズ。
今回は、朝の通勤途中で感じた「信号が長い」という小さな焦りを通じて、“待つ力”について考えてみます。
わずか数十秒の停止の中にこそ、人の心の揺れと、経営の本質が隠れている気がします。
信号が長く感じた朝
その朝は、いつもより五分ほど家を出るのが遅れました。
急ぐほどではないけれど、少しでも早く現場に着きたい。
そんな気持ちで車を走らせていたとき、いつもの交差点で赤信号に変わりました。
止まった瞬間、「ああ、今日は長く感じそうだな」と思いました。
時計を見ると、まだ間に合う時間なのに、なぜか心が落ち着きません。
前の車のブレーキランプが赤く光るたびに、まるで「まだ動けないよ」と告げられているような気がして、無意識のうちにハンドルを握る手に力が入っていました。
ふと、隣の歩道を見ると、小学生たちがランドセルを揺らしながら、笑い声をあげています。
彼らにとっては、この信号もただの通過点。
焦るでもなく、立ち止まるでもなく、自然体で立っている。
同じ時間を過ごしているのに、感じ方はこんなにも違うのかと、少し不思議に思いました。
焦りが教えてくれること
この小さな体験から、経営の現場を思い出しました。
結果を急ぐあまり、わずかな遅れや停滞に過敏に反応してしまう場面。
数字が伸びない、反応がない、思ったほど成果が出ない──。
そんなとき、人は「次の手」を探そうとしがちです。
けれど、焦りが生まれるのは、外の状況が悪いからではなく、
自分の中の“理想のペース”と現実とのズレに気づく瞬間なのだと思います。
信号が変わらないことに苛立つのは、信号にではなく、「止まることを許せない自分」に対してなのかもしれません。
経営でも同じです。
新しい施策を始めたばかりのとき、すぐに結果を求めるのではなく、
“静かな時間”の中に起こっている変化を感じ取ることが大切です。
芽が出るまでには時間がかかる。
待つ間に焦って掘り返せば、せっかくの根が育ちません。
「待てない自分」とどう向き合うかが、経営者としての成熟を決めるのだと感じます。
待つ力は、整える力
信号が青になるまでの間、深呼吸をして空を見上げてみました。
雲ひとつない青空の下、街路樹の葉が朝の光に揺れています。
ほんの数秒のことでしたが、気持ちが少し落ち着きました。
焦りは、目の前の信号だけを見ているから生まれるのかもしれません。
視野を上げて空を見れば、時間の流れも変わって感じられます。
経営もまた、止まっているように見える時間ほど、次の一手を整える貴重なチャンスです。
数字を見直す、現場の声を聞く、スタッフと一言会話を交わす──。
それだけでも、動けない時間が“意味のある時間”に変わります。
「待つ力」とは、ただ耐える力ではなく、自分と向き合い、周囲を整える力。
焦りの中で、静けさを取り戻せる人が、結局はいちばん遠くまで走っていくのだと思います。
再び青になったとき
やがて信号が青に変わりました。
先ほどまでのざわつきが嘘のように消え、ハンドルを軽く握り直してアクセルを踏みます。
走り出すと、街の景色が少し違って見えました。
「止まる時間」があったからこそ、動き出す喜びを感じられる。
そのリズムが、人生にも経営にも必要なのかもしれません。
信号が長いと感じたのは、あの朝の自分の心が急いでいたから。
もしあのとき、少し余裕を持って家を出ていれば、同じ赤信号を“穏やかな時間”と感じたのかもしれません。
人の心とは、そんなに単純で、そんなに繊細です。
最後の問いかけ
あなたは、思い通りに進まないとき、どんなふうに自分を整えていますか?

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