第15回|閉店間際の書店で →「選択の迷いと決断の瞬間」【日常発見の窓口から】 | ソング中小企業診断士事務所

第15回|閉店間際の書店で →「選択の迷いと決断の瞬間」【日常発見の窓口から】

第15回|閉店間際の書店で →「選択の迷いと決断の瞬間」【日常発見の窓口から】

動画で見る日常発見の窓口からの記事説明

※この動画は「日常発見の窓口から」全記事に共通して掲載しています。

中小企業診断士としての日常のひとコマから、経営者としての“感情”や“判断”に潜むクセを考えるこのシリーズ。
今回は、閉店間際の書店での出来事です。わずか数分のあいだに「買う」「買わない」を決めるあの瞬間。
限られた時間の中で人が下す“選択”には、経営判断にも通じる心理の揺らぎが見えてきます。

4つの体系で読む、井村の経営思想と実践
記事・ツール・コラム・思想─すべては一つの設計思想から生まれています。
現場・構造・感性・仕組み。4つの視点で「経営を届ける」全体像を体系化しました。

実践・口

経営相談の窓口から
失敗事例の切り口から
会計数値の糸口から

現場の声を起点に、課題の本質を捉える入口。
今日から動ける“実務の手がかり”を届けます。

時事・構造

診断ノート
経営プログレッション
 

経営を形づくる構造と背景を読み解きます。
次の一手につながる視点を育てる連載です。

思想・感性

日常発見の窓口から
迎える経営論
響く経営論

見えない価値や関係性の温度に光を当てます。
感性と論理が交差する“気づきの場”です。

実装・仕組み

わかるシート
つなぐシート
みえるシート

現場で“動く形”に落とし込むための仕組み群。
理解・共有・対話を支える3つの現場シートです。

閉店アナウンスと、たった数分の迷い

「まもなく閉店です」

書店のスピーカーから流れるアナウンスを聞いたとき、私は一冊の本を手にしていました。
ずっと気になっていたテーマだけれど、今日は買う予定じゃなかった。
ページをめくる指先が止まらないまま、時計を見ると21時55分。
あと5分――どうする?

買うべきか、やめるべきか。
たった数分の間に、心の中では思考が驚くほど速く回転します。
こういうとき、人は「損したくない」という心理に支配されるのだと改めて感じました。

決断を迫られると、理屈より感情が動く

経営の現場でも、時間に追われるときほど“理屈ではなく感情”が判断を動かします。
締切前の見積提出、年度末の設備投資、採用の最終面接。
「今、決めなければ」というプレッシャーが高まるほど、人は“納得”よりも“安心”を優先しがちです。

つまり、「決めた」という事実そのものに安心したくなる。
書店で本を買ってしまう心理も、経営判断で一歩を踏み出す心理も、根っこは同じなのかもしれません。

迷いの正体は、「選択の余地」にある

私は結局、その本を買いました。
なぜなら「閉店です」と言われた瞬間、選択肢が“今しかない”に変わったからです。
不思議なもので、選択の余地があるうちは迷うのに、締切が見えると迷いは一気に収束します。

経営でも同じです。
選択肢が多すぎると動けない。
でも「今、決めなければ」と感じた瞬間、人は動く。
だからこそ、経営者自身が“選択の締切”を意識的に設けることが、実は重要なのです。

選ばないことも、決断の一つ

店を出たあと、私は買った本をカバンにしまいながら考えました。
「もし時間があったら、今日は買わなかったかもしれない」
そう思うと、決断というのは“環境が背中を押す”ことも多いのだと実感します。

経営の決断も同じで、完璧な情報や確信を待っていては一生動けない。
限られた時間や状況の中で“いま最善の一手”を打つことこそが、決断の本質なのだと思います。

最後の問いかけ

あなたは、どんなときに「迷い」を乗り越え、決断に踏み出せますか?
そして、その瞬間をどうやって見極めていますか?

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