中小企業診断士としての日常のひとコマから、経営者としての“感情”や“判断”に潜むクセを考えるこのシリーズ。今回は、外出先でスマホのバッテリーが20%を切った瞬間に感じた“焦り”を手がかりに、経営における「余裕」と「不安」の正体を見つめ直します。
バッテリーの数字に心が動く
外出中、ふとスマホの画面を見て、目に飛び込んできた「バッテリー残量 19%」。
その瞬間、胸の奥にふわっと広がる焦燥感。
まずい、そろそろ充電しないと。
この後も使う予定があるのに。
モバイルバッテリー、持ってたっけ?
スマホの機能には何も問題がない。
なのに、「電池が減ってきた」という事実だけで、人の心はこんなにも不安になる。
この現象、私たち経営者にも心当たりがあるのではないでしょうか。
残高・在庫・時間——減ると人は焦る
数字が減っていくと、人は“今すぐ”動きたくなります。
- 銀行残高が目減りしてきたとき
- 商品在庫が急に減りはじめたとき
- スケジュールの空きがなくなってきたとき
こうした場面で冷静さを保つのは、案外むずかしい。
むしろ焦って、「今すぐ何か手を打たなきゃ」と衝動的に動いてしまうことも多いのです。
その結果……
- 販売価格を焦って下げてしまう
- 合わない案件を無理に受けてしまう
- 十分に検討せず意思決定してしまう
など、本来なら避けられたはずの判断ミスにつながることさえあります。
「余裕」は外から与えられるものではない
スマホのバッテリー残量が20%でも、モバイルバッテリーを持っていたり、充電できる場所を把握していたりすると、人は焦りません。
「次の一手を持っている」状態が、余裕を生むのです。
これと同じで、経営の現場でも“余裕のある判断”ができるのは、「状況が完璧だから」ではありません。
むしろ、
- 多少資金繰りが苦しくても、調達先の目処がある
- 案件が少なくても、打ち手のリストを常に持っている
- トラブルが起きても、誰かに相談できる環境がある
このように、“動ける選択肢”をあらかじめ用意しておくことが、「心理的な余白」につながるのです。
「余裕がある経営者」は、冷静なフリをしていない
ここで注意したいのが、“余裕があるように見せる”ことと、“実際に余裕がある”ことの違いです。
「焦っていませんよ」という顔をするのは簡単です。
でも、心の中では不安がぐるぐるしていて、判断も揺れている。
本当に余裕がある人は、焦っている自分を否定しません。
今、ちょっと焦ってるな
でも、落ち着いて考えよう
焦っても、判断の精度を落とさない
こうした自覚と態度が、**“感情に流されない経営”**を支えてくれるのです。
だから私は、充電ケーブルを常に持ち歩く
私のバッグには、必ず充電ケーブルとモバイルバッテリーが入っています。
理由はシンプル。
「バッテリー残量で判断を誤りたくないから」です。
外出先でも、落ち着いて行動したい。
小さな選択を誤らず、大きな判断に集中したい。
この“物理的な備え”は、日々の経営にも通じる小さな習慣です。
【問いかけ】
今、あなたの経営の「バッテリー残量」はどのくらいですか?
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