第5回|バッテリーが20%を切った日 →「余裕と焦りの経営感情」(日常発見の窓口から) | ソング中小企業診断士事務所

第5回|バッテリーが20%を切った日 →「余裕と焦りの経営感情」(日常発見の窓口から)

第5回|バッテリーが20%を切った日 →「余裕と焦りの経営感情」(日常発見の窓口から)

中小企業診断士としての日常のひとコマから、経営者としての“感情”や“判断”に潜むクセを考えるこのシリーズ。今回は、外出先でスマホのバッテリーが20%を切った瞬間に感じた“焦り”を手がかりに、経営における「余裕」と「不安」の正体を見つめ直します。

バッテリーの数字に心が動く

外出中、ふとスマホの画面を見て、目に飛び込んできた「バッテリー残量 19%」。

その瞬間、胸の奥にふわっと広がる焦燥感。

まずい、そろそろ充電しないと。
この後も使う予定があるのに。
モバイルバッテリー、持ってたっけ?

スマホの機能には何も問題がない。
なのに、「電池が減ってきた」という事実だけで、人の心はこんなにも不安になる。

この現象、私たち経営者にも心当たりがあるのではないでしょうか。

残高・在庫・時間——減ると人は焦る

数字が減っていくと、人は“今すぐ”動きたくなります。

  • 銀行残高が目減りしてきたとき
  • 商品在庫が急に減りはじめたとき
  • スケジュールの空きがなくなってきたとき

こうした場面で冷静さを保つのは、案外むずかしい。

むしろ焦って、「今すぐ何か手を打たなきゃ」と衝動的に動いてしまうことも多いのです。

その結果……

  • 販売価格を焦って下げてしまう
  • 合わない案件を無理に受けてしまう
  • 十分に検討せず意思決定してしまう

など、本来なら避けられたはずの判断ミスにつながることさえあります。

「余裕」は外から与えられるものではない

スマホのバッテリー残量が20%でも、モバイルバッテリーを持っていたり、充電できる場所を把握していたりすると、人は焦りません。

「次の一手を持っている」状態が、余裕を生むのです。

これと同じで、経営の現場でも“余裕のある判断”ができるのは、「状況が完璧だから」ではありません。

むしろ、

  • 多少資金繰りが苦しくても、調達先の目処がある
  • 案件が少なくても、打ち手のリストを常に持っている
  • トラブルが起きても、誰かに相談できる環境がある

このように、“動ける選択肢”をあらかじめ用意しておくことが、「心理的な余白」につながるのです。

「余裕がある経営者」は、冷静なフリをしていない

ここで注意したいのが、“余裕があるように見せる”ことと、“実際に余裕がある”ことの違いです。

「焦っていませんよ」という顔をするのは簡単です。
でも、心の中では不安がぐるぐるしていて、判断も揺れている。

本当に余裕がある人は、焦っている自分を否定しません。

今、ちょっと焦ってるな

でも、落ち着いて考えよう

焦っても、判断の精度を落とさない

こうした自覚と態度が、**“感情に流されない経営”**を支えてくれるのです。

だから私は、充電ケーブルを常に持ち歩く

私のバッグには、必ず充電ケーブルとモバイルバッテリーが入っています。

理由はシンプル。
「バッテリー残量で判断を誤りたくないから」です。

外出先でも、落ち着いて行動したい。
小さな選択を誤らず、大きな判断に集中したい。

この“物理的な備え”は、日々の経営にも通じる小さな習慣です。

【問いかけ】
今、あなたの経営の「バッテリー残量」はどのくらいですか?

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