中小企業診断士としての日常のひとコマから、経営の本質をそっとすくい取るこのシリーズ。
第一回は、何気なく入ったスターバックスで感じた違和感から、「ブランドとは何か」「設計とは何か」を考えます。
スタバで聞こえてきた、ある会話
先日、とある午後。少し時間が空いたので、ふらりとスターバックスに立ち寄って、パソコンを広げました。
スタバで仕事するの、昔から憧れてたんですよねぇ。なんというか、できる人!って感じが出せる気がして。
だからスタバで仕事してると、なんとなくそれだけで気分が上がっちゃったりします。もちろん大切なのは中身なんですけどね、はい。
そんなふうに気分よくキーボードを叩いていたときのこと。隣の席から、こんな声が聞こえてきました。
「いや〜最近、売上が落ちててさ……。値段のせいかなぁ?やっぱり商品変えるべきかね」
どうやら、小規模ながら自営業をされている方のようでした。相手は女性で、おそらく顧客かビジネスパートナーでしょうか。
「それって、価格というよりも“どう見せるか”じゃないですか?」という返しがあり、僕の中でなにかがピンときました。
商品の問題じゃない。「届け方」の問題かも
もちろん、隣の方々のビジネスの詳細なんてわかりません。でも話の端々から、「モノやサービス自体は悪くなさそうだな」と感じたんです。
それでも「売れない」「値段が高いと言われる」という。
僕自身、以前音楽制作の仕事で似たような経験がありました。
ソングメーカーはすべての依頼、フルオーダーメイドなので、僕が好きなように作った曲は商品にはなりません。
なので、自分で独自に作った曲をYOUTUBEに載せたりして、紹介することがあります。

結構、自分では「いい曲できた!」と自信もって紹介しても、反応が薄い…なんてことはザラにありました。
でもあるとき、「誰に届けたいのか」「どういう言葉で説明すれば、その価値が伝わるのか」を考え抜いたところ、明らかに依頼の質と量が変わったんです。
そう、問題は“中身”ではなく“届け方”だった。
経営の本質は「届け方設計」にある
コンサルティングの現場でもよくある話です。
すばらしい商品、丁寧なサービス、情熱を込めた事業。でも、それが「きちんと届いていない」ケースは山ほどあります。
たとえば――
- 「◯◯でお困りの方に」と書かれていないので、誰のためのサービスかわからない
- パッと見の印象がチープで、価格と品質のギャップに疑問を持たれる
- 強みを本人がわかっておらず、平凡に見える
こうした問題は、ほぼすべて「届け方の設計」で変えられます。
たとえば言葉のチョイス。たとえば色味や導線。たとえば「本当に来てほしい顧客像」を明確にすること。
スタバで再確認した、自分の役割
スタバで隣の話を聞いて、僕はふと、自分がこの仕事をしている意味を思い出しました。
中小企業診断士。経営コンサルタント。いろんな呼び方はありますが、僕がやっているのは「価値を再設計して、社会との接点をつくる仕事」なんだと思います。
たとえるなら、「光ってるのに曇ったガラスケースに入っている宝石を、ちゃんと磨いて、透明なガラスの上に置く」ようなこと。
つまり、“中身を変えずに成果を変える”仕事。
だからこそ、「価値はあるのに伝わらない」と悩む人に出会うと、居ても立ってもいられなくなるんです。
まとめ:日常の中にヒントはある
スタバの午後。何気ないひとときの中に、僕は経営の本質を再確認しました。
人の悩みも、経営の課題も、日常のすぐ隣にある。だからこそ僕は、日常の“違和感”や“気づき”に敏感でいたいと思っています。
コンサルティングという仕事も、もしかするとそういう「ちょっとしたこと」に気づき、引き出し、整えることの連続なのかもしれません。
そんなわけで、仕事を終えて帰るときも誇らしげにノートパソコンを閉じ、ちょっといい気持のまま帰路についた、そんな日でした。
あなたへの問いかけ。
あなたは最近、“届け方”で損をしているもの、ありませんか?
コメント