最低賃金引上げが実現しそう!中小企業としての対策は? | ソング中小企業診断士事務所

最低賃金引上げが実現しそう!中小企業としての対策は?

最低賃金引上げ、中小企業としての対策は?

最低賃金引上げが決まりそうです。中小企業にとっての対策を考えていきます。

今日のニュースで、2024年度の最低賃金について、中央最低賃金審議会の小委員会が全国加重平均で時給1050円台半ばとする方向で最終調整中、という情報が入りました。最低賃金が時給ベースで約50円ほどあがりそうです。中小企業診断士として、思うところをお伝えします。
※追記:値上げが正式に決定し、最低賃金が全国平均で時給1054円となりました。

経営側にとっては脅威となる

長引く日本経済の低迷に加え、終わりの見えない物価上昇により実質賃金が上がらない状態が続いています。そんな中、いち日本国民として考えれば賃上げのニュースは喜ばしいことですし、より働きやすい世の中に少しでも近づいていくことが期待されます。

一方で、経営者側にとってみれば最低賃金引上げは「脅威」となります。50円、と聞くとわずかな金額のようですが、経営する立場から考えると間違いなく脅威です。以下、簡単な例でご説明いたします。

仮に現在、最低賃金ギリギリで従業員を雇っている企業があるとします。最低賃金が時給ベースで約50円ほどあがるということは、単純計算で一人当たりの年間労働時間が約1,600時間とすれば(出展:OECDがまとめた「2021年_年間労働時間(2022年7月20日データ更新)」の調査結果)、年間で約80,000円の増加。従業員30人とすれば実に2,400,000円の増加です。この数字は毎月の給与のみ、かつ残業時間等も考慮しないでこの金額ですから、売上高が年間1億円であるとすればその影響は売上高人件費率で2~3%にも及び、しかもその金額が今後ずっと続くわけですから、経営に与える影響は少なくありません。

春闘などの賃上げ要求も同じで、固定費である人件費のベースアップは経営者にとっては頭の痛い問題でもあります。だからこそ大企業のように資金に余裕がない中小企業では、なかなか定期的な賃上げをしたくてもできない、ということになるのだと考えます。

日本企業の99.7%は中小企業

ニュースで話題になる企業はほとんどが大企業ですが、日本の企業は実に99.7%が中小企業です。1社あたりの平均従業員数が違いますから労働人口で考えればそこまで圧倒的に中小企業の比率が高くないとはいえ、中小企業が日本経済にとって非常に重要な役割を果たしていることには変わりありません。

一方で働く人が幸せになってこそ、労働生産性(労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したか)も上がることが期待されます。給与は少しでも高いほうがいいのは当然ですし、そのほうが労働生産性は上がるかもしれませんが、だからといって「じゃあ給与を上げよう」とはいかない現実があります。

先日も、大手自動車メーカーの下請け企業が値下げ圧力を、長期間甘んじて受け入れるしかない状態であった、ということがニュースになっていましたが、往々にして立場の弱い中小企業では価格転嫁が進まず、企業規模による賃上げ格差が生じています。そもそも賃上げをしたくても、その余裕が中小企業にはないのです。

これは日本経済の構造的な問題ですから、根本的解決に向けては国をあげて少しずつ改善していくしかないのかもしれません。では、いち中小企業としてはどのような対策ができるのでしょうか。

働きやすい職場、やりがいのある仕事

賃上げももちろん大切ですし、そもそも法律で最低賃金が上がれば対応せざるを得ません。今後もその動きは続いていくことと思われます。ますます経営は苦しくなって淘汰される企業が増えていくことでしょう。

そんな中、経営側としてできることは、時間をかけて少しずつでも、従業員が働きやすい職場に、やりがいのある仕事だと感じられるようなそんな環境作りを進めていくことが、長い目で見て経営に良い影響をもたらすのではないでしょうか。

「内発的動機づけ」と呼ばれるこういった考え方は、給与などの待遇面の改善よりも本質的な意味で効果があると言われます。働く人が自分たちの企業に誇りを持ち、仕事を通じた自己実現ができるように努力すること、関係者や顧客のためになりたいと思えること。きれいごとのようですが、労働における人間の高次的な欲求として大切だとされていることです。かなりざっくり言ってしまうと、人間とは「お金のみのために働く生き物ではない」ということです。

その、内発的動機づけを実現するために必要なことは、第一にコミュニケーションです。しっかり現場の声に耳を傾け、対話の場をもうけ、従業員ひとりひとりの想いを大切にすること。経営者の想いも伝えていくこと。企業は結局、人間が動かすものですから、人間同士の想いを大切にしていくことが、事業の長期的な成長へとつながります。

私自身も、会社員時代に人間関係で大変悩み、辛い経験をしました。その際の思いを下記の記事にて綴っております。私が中小企業診断士を志そうと思った理由でもあります。是非ご覧ください。

中小企業診断士を志した理由
私がなぜ中小企業診断士になりたいと考えるようになったのか、その理由をお話させてください。動画でご覧になる方はこちら過去の経験私は2008年より音楽制作事業を立ち上げ、現在も継続しています。独立する前の9年間は会社員として、神奈川県内の製造業...

今回の最低賃金のニュースで思うことを書いてみました。

私が経営コンサルティングをさせていただく際には、組織運営や人事評価といった部分でお伝えしていきたいことも同様です。コミュニケーションを大切に、従業員ひとりひとりを大切にしていくことが、企業の評判も向上させ、長く愛される存在となっていけるのではないでしょうか。そんな企業では働く人はもちろん、経営者の方も、ご家族や関係者、顧客の方も、幸せな人が増えることでしょう。そうなれば事業の好循環に入り、さらなる発展が期待できます。そんな幸せな、笑顔の人たちを、経営コンサルティングを通じて増やしていきたい、そんな風に考えております。

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