
動画で見る診断ノートの記事説明
※この動画は「診断ノート」全記事に共通して掲載しています。
全国各地で書店を展開する15社が、物流の効率化や仕入れ方法の見直しなどを進める共同声明を発表しました。背景には、書店数の減少があります。全国の書店数は初めて1万店を下回り、事業環境の厳しさが続いています。
このニュースは、一見すると「本が売れなくなった」「書店が減っている」という話に見えます。しかし、経営の視点で見ると、注目すべき点は別にあります。今回、書店各社が取り組もうとしているのは、単なる販売促進ではありません。返品率を下げる、物流を効率化する、出版社から直接仕入れる比率を高める。つまり、売上を増やす前に、利益が残る構造へ変えようとしているのです。
売上が伸びないとき、多くの企業は集客や販売促進に目を向けます。もちろんそれも重要ですが、そもそも利益が残りにくい構造になっていれば、売上を増やしても経営は安定しません。今回の書店業界の動きは、売上ではなく構造を見直す経営の重要性を示しているように思います。
この記事を読むことで得られること
- 書店業界の共同声明から、売上減少だけでは見えない経営課題が整理できます
- 返品率・物流・仕入れ構造が、利益にどのような影響を与えるのかがわかります
- 中小企業が売上を追う前に確認すべき「利益が残る構造」の視点が得られます
まず結論:経営を安定させるために必要なのは、売上を増やすことだけではなく、利益が残る仕組みそのものを見直すことです。
書店業界で何が起きているのか(事実整理)
まずは今回のニュースについて、事実関係を整理してみます。全国各地で書店を展開する15社は、収益改善に向けた共同声明を発表しました。背景には、書店を取り巻く厳しい事業環境があります。「日本出版インフラセンター」によると、全国の書店数は2026年3月末時点で9900店余りとなり、初めて1万店を下回りました。
こうした状況を受けて、各社は業界内の慣習や流通の仕組みを見直そうとしています。具体的には、返品率の改善、物流の効率化、出版社からの直接仕入れ拡大などを進める方針です。返品率については、現在およそ3割とされる水準を2割程度まで引き下げる目標を掲げています。
また、書店同士で本を融通し合う仕組みを活用しながら、返品そのものを減らそうとしています。さらに、取次と呼ばれる卸売会社を経由せず、出版社から直接仕入れる比率を高めることで利益改善を目指しています。つまり今回の取り組みは、「売上拡大→利益改善」ではなく、「返品率改善・物流改善・仕入れ改善→利益改善」という発想に立っています。まずは、この点を事実として押さえておきたいと思います。
なぜ書店は苦しいのか|売上だけでは説明できない環境変化
では、なぜ書店業界はこれほど厳しい状況に置かれているのでしょうか。その理由は一つではありません。複数の環境変化が重なり合っています。
まず挙げられるのが、人口減少です。読者となる人口そのものが減少すれば、市場規模にも影響が出ます。特に地方では人口減少が進み、書店の利用者数にも影響を与えています。
次に、読書時間の減少です。スマートフォンや動画配信サービス、SNSなど、可処分時間を奪い合う競争は年々激しくなっています。かつて本を読んでいた時間が、SNS、動画視聴、ゲーム、ネットニュースへ移っている側面もあります。
さらに、ECの普及も大きな変化です。今では本を購入するために店舗へ行かなくても、スマートフォンから数分で注文できます。価格差がなくても、在庫検索ができる、配送される、ポイントが付くといった利便性が利用者を引きつけています。
そして近年は、コスト上昇も無視できません。物流費、人件費、電気代、賃料など、さまざまなコストが上昇しています。しかし本は公共性も高く、価格転嫁が簡単な商品とは言えません。つまり書店業界は、「市場縮小→競争激化→コスト上昇」という複数の課題に同時に向き合っている状況なのです。だからこそ今回の取り組みは、単純な集客施策ではなく、経営構造そのものを見直そうとする動きとして注目できます。
なぜ売上ではなく構造改革なのか|返品率・物流・取次が示す利益構造
今回の共同声明で注目したいのは、書店各社が単純な売上拡大ではなく、構造改革に踏み込もうとしている点です。売上が減っているなら、普通は「もっと売る」「もっと集客する」と考えがちですし、もちろんそれも必要です。しかし、そもそも利益が残りにくい構造であれば、売上を増やしても経営は安定しません。
今回の取り組みでは、返品率の改善、物流の効率化、取次を介さない直接仕入れが重要なテーマになっています。返品率が高ければ、売れなかった本を戻すための物流や管理コストが発生します。物流が非効率であれば、運送費の上昇がそのまま収益を圧迫します。また、仕入れの構造によっては、書店側に残る利益が限られます。
つまり問題は、本が売れるかどうかだけではありません。売れたときに、どれだけ利益が残る構造になっているかが問われています。今回の書店業界の動きは、売上不足への対策というより、利益構造そのものを見逆す取り組みだと言えます。
👉 ここで重要なのは、売上を増やす前に、利益が残る流れを整えることです。
「売上を増やせば何とかなる」と考えていても、実際には利益が残る流れが整っていないことがあります。
返品率3割が示すもの|問題は「売れない本」ではなく流通構造かもしれない
今回のニュースの中で、特に興味深い数字があります。それが、返品率およそ3割です。書店業界では、出版社から送られてきた本を販売し、売れ残った本は返品できる仕組みが一般的です。この仕組みは、多様な本を店頭に並べられる、出版社が新刊を広く流通させられる、読者が幅広い本と出会えるというメリットを持っています。
一方で、返品率が高くなると別の問題が生まれます。「本を送る→売れ残る→返品する→再び運ぶ」という流れが発生するからです。つまり、返品率3割という数字は、単純に「3割の本が売れなかった」という意味だけではありません。そこには、物流コスト、在庫管理コスト、人件費、保管コストといった負担も含まれています。
そのため今回、書店各社が目標としているのは、売上を急激に増やすことではなく、返品率を3割から2割へ下げることです。この発想は非常に興味深いものです。なぜなら、問題を「売れない本」ではなく「流通構造」として捉えているからです。もちろん、本が売れることは重要ですが、仮に売上が大きく変わらなくても、返品や物流のムダを減らすことができれば、利益改善につながる可能性があります。
👉 返品率3割という数字が示しているのは、販売力の問題だけではなく、構造そのものの課題なのかもしれません。
診断士視点:利益は売上だけで決まらない
ここが今回の記事の核です。経営相談の現場でも、「売上を上げたい」という相談は非常に多くあります。そして実際に、売上を増やすことは重要です。しかし、利益が出ない原因をすべて売上不足だと考えてしまうと、本当の課題を見落とすことがあります。
利益は、「売上 − コスト」で決まります。つまり、売上だけではなく、どのような構造で利益が作られているかを見る必要があります。例えば、返品が多い、物流コストが高い、在庫が過剰にある、仕入れ構造が非効率である、固定費が重いという状態では、売上が増えても思ったほど利益は残りません。
逆に、ムダなコストを減らす、在庫回転を改善する、物流を効率化する、利益率を改善することができれば、売上が大きく変わらなくても利益は改善します。今回の書店業界の取り組みは、まさにこの発想です。売上を伸ばす前に、返品率、物流、仕入れ構造を見直そうとしています。
これは書店業界だけの話ではありません。多くの中小企業でも、「売上不足→もっと売らなければ」となりがちです。しかし本当に必要なのは、👉 利益が残る構造になっているかを確認することかもしれません。利益は売上だけで決まるのではありません。どのような仕組みで利益が残るのか。そこに目を向けることが、経営改善の第一歩になるのです。
利益が残りにくい構造を、そのままにしていませんか
この記事を読んで、「うちも売上の問題だけではないかもしれない」と感じた方も多いのではないでしょうか。問題は、売上不足ではなく、利益がどこで失われているのかが整理されないまま進んでしまうことです。
利益が残りにくい構造について相談してみる
下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。
相談内容は、まだまとまっていなくて大丈夫です。たとえば、こんな一文で十分です。
- 「売上はあるのに、なぜか利益が残らない」
- 「在庫・物流・固定費など、どこから見直せばいいか整理したい」
- 「集客の前に、今の利益構造を一度見てほしい」
「利益が残りにくい構造」専用フォーム
※営業電話はいたしません。まずは状況の整理からご一緒します。
ソング中小企業診断士事務所
井村淳也が直接お話を伺います。
中小企業への示唆|売上を追う前に構造を見る
今回の書店業界の動きは、多くの中小企業にとっても参考になる視点を含んでいます。売上が伸び悩むと、広告を増やす、営業を強化する、値引きを行う、新規顧客を増やすといった施策を考えることが少なくありません。もちろん、それらも必要な場合がありますが、その前に確認したいことがあります。
それは、「今の売上で、利益が残る構造になっているか」という点です。例えば、在庫が多すぎないか、利益率の低い商品ばかり売っていないか、物流や配送にムダがないか、固定費が重くなっていないか、値引きが常態化していないか、といった視点です。売上を10%増やしても、利益がほとんど増えないことがあります。一方で、構造を少し改善するだけで、利益が大きく変わることもあります。
今回の書店業界も、「もっと本を売ろう→まず返品や物流を見直しよう」という順番で考えています。これは非常に経営的な発想です。なぜなら、利益は売上だけではなく、仕組みや流れによっても決まるからです。だからこそ中小企業も、「売上を追う→利益を見る」だけではなく、「利益が残る構造か→その上で売上を伸ばす」という順番で考えることが重要になります。
👉 売上を追う前に、まず構造を見る。今回の書店業界の取り組みは、その大切さを教えてくれているように思います。
まとめ|生き残る企業は売上だけでなく構造を変える
今回の書店業界の共同声明は、単なる業界ニュースではありません。そこから見えてくるのは、売上ではなく構造に目を向ける経営です。書店各社が取り組もうとしているのは、返品率の改善、物流の効率化、仕入れ構造の見直しです。つまり、「もっと売る」よりも「利益が残る仕組みを作る」ことを重視しています。
もちろん売上は重要ですが、利益が残りにくい構造のまま売上だけを追い続ければ、忙しくなっても経営は楽になりません。だからこそ、生き残る企業は売上だけを見ません。利益がどのように生まれ、どこで失われているのか。その構造に目を向けます。そして必要であれば、売り方ではなく、仕組みそのものを変えようとします。今回の書店業界の挑戦は、そんな経営の本質を示しているように思います。
最後に問いを置きます。あなたの会社は、売上不足に悩んでいますか。それとも、👉 利益が出にくい構造を抱えていませんか。
ここまで読んで、「売上ではなく構造の問題かもしれない」と感じた方へ。まだ依頼するか決めていない段階でも大丈夫です。まずは、利益がどこで残りにくくなっているのかを整理する時間としてご利用ください。

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